鉄って何?
鉄と現代社会
鉄と現代社会とは密接なつながりをもっています。
私たちの身の周りには、デスク、ロッカー、キャビネットなどの事務用品、テレビ、洗濯機、冷蔵庫などの電気製品や台所用品など鉄でできた製品がたくさんあります。町に目を移しても、高層ビル、高速道路、自動車、橋など、私たちの目にふれるところに鉄は多くあります。私たちが着ている衣類も、すべて鉄鋼製品である繊維機械によって作られています。
このように現代ではあらゆる種類の製品がその作られる過程において直接、間接的に鉄とつながりをもっています。
鉄の起源
鉄は青銅とともに最も古くから私たち人類によって用いられた金属です。考古学が明らかにするように、石器時代、青銅時代につづいて人類は鉄器時代を迎え、ようやく今日の文明の基礎を築く第一歩を踏みだすことになりました。
しかし、人類がはじめどのようにして鉄を知ったかについては、じつは確実な答えは得られていません。現在、主に考えられている説は (1)鉄隕石起源説 と (2)自然冶金説 の二つです。鉄隕石というのは隕石の一種です。古代人は空から降ってきた鉄隕石を加熱したり、加工したりして、珍重していたと考えられています。これが鉄隕石起源説です。
これに対して、自然治金説では、地球上のあちこちに産出する鉄鉱石が山火事やたき火などによって偶然に半溶融状になったものを、古代人が打ったり、叩いたりしている間に、徐々に鉄の利用技術を知ったと考えられています。
紀元前5000年頃のものといわれる、古代オリエントのメソポタミア地域の鉄でできた装飾は鉄隕石でつくられたと考えられています。その後、ヒッタイト王国では鉄鉱石から鉄を取り出すことに成功し、さまざまな道具や武器をつくり、繁栄をとげたと言われています。
鉄とは
日常、私たちが「鉄」と呼んでいる金属は、多くの場合「鋼」です。ここでは鉄を狭義の鉄と定義し、鋼と区別します。
- 英語でも鉄はiron(銑鉄)とsteel(鋼)に区別されています。
- 鉄は金属元素のひとつで、原子記号Fe、原子番号26、比重7.86。
- 主に土壌、岩石、鉱物中に、化合物~磁鉄鉱(Fe3O4)、赤鉄鉱(Fe2O3)、褐鉄鉱(Fe2O3・nH2O、黄鉄鉱(FeS2)などとして存在しています。
- 地殻の元素中、鉄は5.0%で4番目に多く存在します。ちなみに、1番は酸素で46.6%、2番はケイ素で27.7%、3番はアルミニウムで8.1%です。
- 鉄は、本来、硬くてもろい性質を持っています。これは炭素(C)の含有量が多いことによります。
鋼(はがね)とは
- 鉄に含まれる炭素分が1.7%より少ないと鋼、1.7%以上だと銑鉄とよんでいます。
- 鋼の性質は、銑鉄の硬くてもろい性質とは対照的に、軟らかくて伸びやすい、もしくはねばりがあり強靭な性質を持っています。
- この性質により鋼は社会の中で大活躍しています。例えば、流線形の自動車ボディのデザインは、鋼の軟らかくて伸びやすい特性を生かしたものです。