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企業情報「メッセージ」代表取締役社長:橋本 英二

Message from the President

社長の橋本英二です。

当社は、将来にわたって日本の産業競争力を支える「総合力世界No.1の鉄鋼メーカー」を目指して成長し続けることを念頭に、本年3月に新たな中長期経営計画を公表しました。これまでの収益力回復への取り組みにより、本計画達成への土台は整いました。

本計画を着実に実行することで、強靭な国内マザーミルと海外現地ミルを合わせたグローバル粗鋼1億トン体制を構築します。

また、超革新技術の開発等によるCO2排出削減に挑戦し、脱炭素社会に向けた取り組みにおいて欧米・中国・韓国との開発競争に打ち勝ち、引き続き世界の鉄鋼業をリードするとともに、環境と成長の好循環を図り、企業価値の向上を目指します。

これまでの収益力回復への取り組み

2019年4月の社長就任以来、収益力の回復を第一優先課題として、ハード・ソフト両面から取り組んできました。なかでも、本体国内製鉄事業の赤字構造からの脱却が最大の課題であり、立て直しには抜本的な収益構造の変革、すなわち大規模な構造改革が避けられないとの強い危機感の下、二つの現場、すなわち製造拠点と営業ラインとの直接対話を繰り返し、具体策を策定し、検討結果を2020年2月に「構造改革第一弾」として発表しました。商品と設備の選択と集中を徹底し、競争優位な設備に投資等を集中することで固定費の大幅削減を実行することとしました。

2020年度の当初計画(2020年2月策定)においては、固定費の大幅削減と変動費改善により、上期からの黒字転換を確実なものとしていました。しかしながら、上期は、新型コロナウイルス感染拡大による経済活動の崩壊により大幅な赤字となり、半年遅れの下期での黒字転換となりました(図1)。上期は、鉄鋼需要の急減により大きな赤字とはなりましたが、構造改革による生産設備集約の方向性を決めていたことから、迅速な対応によるコストミニマムの操業にいち早く移行することができたと評価しています(図2)。
図1 本体製鉄事業損益
在庫評価差除き単独営業損益

図1 本体製鉄事業損益

図2 コロナ影響による需要急減・回復への迅速な対応

図2 コロナ影響による需要急減・回復への迅速な対応

海外事業においても選択と集中を徹底してきました。当社が継続する合理性のなくなった事業からは撤退し、確実に需要の伸びる市場あるいは当社の技術・商品を活かせる分野に集中することで、海外事業収益の基盤強化に取り組んできました。具体的には、インドの一貫製鉄所エッサールスチール買収をはじめ、米国のAM/NSカルバートにおける電炉新設の決定や、ブラジルのシームレス鋼管合弁事業であるVSBの売却、ブリキ事業の選択と集中等を進め、2020年度下期の海外事業は、過去最高の利益を計上し、大きな収益の柱とすることができました(図3)。

こうした国内・海外製鉄事業での収益改善の取り組みの結果、厳しい環境で数量が大幅に減少する状況でありましたが、連結事業利益は2020年度通期で1,100億円を確保しました。

2021年度については、2014年度に計上した2012年経営統合以来の最高益を大きく上回る連結事業利益6,000億円を見込んでいます(図4)。2021年度は、新型コロナウイルス感染拡大による鉄鋼需要減少からの回復を見込んでいますが、過去最高の利益を計上した2014年度と比べると外部環境は悪化したままです。厳しい環境下ではありますが、収益力の回復を確固たるものとし、最高益の大幅更新を実現していく所存です。その原動力は、自らの構造対策の推進によるコスト改善と、海外事業の収益安定化です。また、課題である紐付き価格*の改善については、製品の安定供給力の担保、お客様の求める高品質な製品の開発や投資のためにも、主原料・市況原料等コストアップ影響のサプライチェーンにおける応分の負担や、当社の提供する製品・ソリューション価値の観点から、継続して是正を要請していきます。

* お客様の注文内容に応じて鋼材を生産し、販売を行う際の価格。

図3 海外事業の利益貢献額

図3 海外事業の利益貢献額

図4 連結事業損益(旧日鉄日新製鋼含む。)

図4 連結事業損益(旧日鉄日新製鋼含む。)

これからの製鉄事業の環境変化と中長期経営計画

中長期的な製鉄事業の環境変化

世界の鉄鋼需要については、インドも含めたアジア地域を中心に確実な成長が見込まれます(図5)。また、カーボンニュートラルに向けた新規ニーズを含め高級鋼の需要は大幅な拡大が見込まれます。一方で、国内の鉄鋼需要については、人口減少や需要家の海外現地生産拡大等に伴い、引き続き減少していくことが想定されます。また、製造業における地産地消・自国産化の傾向が、新型コロナウイルスの影響で加速し、グローバルにつながっていた市場の分断が進展すると考えられます。更に、世界の鉄鋼生産量の6割を占める中国での需要の頭打ち等により、海外市場における競争が一層激化することが想定されます。

世界的に気候変動への問題意識が高まるなか、カーボンニュートラルの実現は官民を挙げた総力戦となり、他国に先駆けたカーボンニュートラルの技術確立が、今後の鉄鋼業界における競争力、収益力、ブランド力を決める鍵となると考えています。

図5 鉄鋼需要見通し
世界鉄鋼需要(億t/年)
世界鉄鋼需要(億t/年)
鋼材需要予測(百万t/年)
鋼材需要予測(百万t/年)
日本製鉄グループ中長期経営計画

当社は、このような事業環境変化を踏まえ、将来にわたって日本の産業競争力を支える「総合力世界No.1の鉄鋼メーカー」を目指して成長し続けることを念頭に、2021年3月に新たな中長期経営計画を公表しました。この計画は4つの柱からなっています。

  • 国内製鉄事業の再構築とグループ経営の強化

    中心施策である国内製鉄事業の再構築については、更なる事業環境悪化時においても利益を確保できる盤石の収益構造を構築すべく、2020年2月に公表した内容から、更に踏み込んだものであり、過去に類を見ない大規模な構造改革となっています。高炉の数は15基から10基となり、粗鋼生産能力は約20%に相当する1,000万トンを削減します。20%以上の要員合理化により労働生産性も向上させます。既に公表した他の施策と合わせた構造改革によるコスト削減効果は1,500億円程度を見込んでいます。大変厳しい計画となっていますが、製造現場と営業ラインとの直接対話をベースに練り上げた計画であり、2025年度までに完遂できると確信しています。
    この一連の施策は、決して単なる縮小均衡ではありません。老朽設備の更新やカーボンニュートラル社会が要求する高級鋼を供給していくための戦略投資等に対して今後も多額の資金投入が必要であり、固定費総額のこれ以上の圧縮は困難です。従って、収益を確保するために注文構成の高度化を進めていきます。国内生産の数量は縮小しますが、売上高や収益は拡大し、労働生産性も大幅に向上します。
    戦略投資の一例をご紹介します。電池で重くなる電気自動車は、従来以上に軽量化に資する素材を必要としますし、駆動モーター用の高級電磁鋼板のニーズは飛躍的に増えます。省電力にも当社の優れた電磁鋼板がなくてはなりません。当社は、名古屋製鉄所に最先端の超ハイテン鋼板を安定的、経済的に量産する次世代型熱延ラインを新たに設置することを決定し、また、瀬戸内製鉄所広畑地区と九州製鉄所八幡地区において電磁鋼板の更なる能力・品質向上対策に取り組むことを決定しました。カーボンニュートラルやデジタルトランスフォーメーションといった、後戻りすることのない新たな、確実なニーズに応えていくことで、注文構成を高度化し、数量に依存しない収益構造を構築していきます。

  • 海外事業の深化・拡充に向けた、グローバル戦略の推進

    海外事業を更に深化・拡充させることにより、連結収益基盤の拡大と合わせて、グローバル粗鋼1億トン体制を確立し、世界鉄鋼業の拡大のなかでのメジャープレーヤーとしてのポジションを維持することが必要です。中長期的には、アジアを中心に世界の鉄鋼需要は拡大していく一方で、地産地消・自国産化が新型コロナウイルスの影響で加速するなか、今後の主力は、現地の需要全体を捕捉できる一貫製鉄事業であり、より高い付加価値を確保していく本格的な海外事業へとステージを上げていきます。買収したインド一貫製鉄所のアルセロールミッタル ニッポンスチール インディア社(AM/NS India)については、第2製鉄所の新設を含めて能力を拡張し、また、ASEANを中心にアジアにおける一貫製鉄所の買収や資本参加を検討します(図6)。

  • カーボンニュートラルへの挑戦

    カーボンニュートラルへの挑戦は二つの側面があります。一つは、当社の技術や商品の提供により、グリーン社会実現に貢献していくことであり、ビジネスチャンスでもあります。そのための先行投資として、電磁鋼板の能力・品質向上対策、名古屋製鉄所における次世代型熱延ラインの新設投資を決定しました。
    もう一つは、製造工程でのCO2削減を進めていくという、新しい生産プロセス開発への挑戦です。前人未到の領域を含む抜本的な技術開発が必要とされます。極めて大きな挑戦でありますが、大変困難であることは中国を含めた世界のすべての高炉メーカーに共通であり、当社の有する世界一の技術開発力を活かし、他に先駆けて開発の目途をつけることにより、圧倒的な優位性を再構築するチャンスと捉え、経営の最重要課題として積極的に取り組んでいきます。グリーン鋼材をお客様にいち早く提供することにより、お客様との関係性における当社のポジションをより一層強いものにしていくことにもつながっていくことになります。
    当社は、他国に先駆けた超革新技術の開発・実機化により、2030年に2013年比30%のCO2排出削減、2050年のカーボンニュートラルを目指します(図7)。
    また、カーボンニュートラルは鉄鋼業界のチャレンジだけでは実現できません。研究開発や設備実装に対する政府の支援、水素供給インフラの確立、カーボンフリー電源の実現、莫大なコストを社会全体で負担する仕組みの構築等が前提となります。

  • 図6 グローバル粗鋼1億トン体制へ

    図6 グローバル粗鋼1億トン体制へ

    図7 当社のCO2排出削減シナリオ

    図7 当社のCO2排出削減シナリオ

  • デジタルトランスフォーメーション戦略の推進

    当社はこれまで、製造現場や業務の現場で発生する膨大なデータを丁寧に収集・解析して、コスト削減や品質向上に取り組んできており、その蓄積されたデータを有しているのが当社の強みです。世界鉄鋼業におけるデジタル先進企業を目指し、当社が保有する膨大かつ高度なデータとデジタル技術を駆使することにより、生産や業務のプロセスを改革し、経営レベルから現場第一線に至るまでの意思決定の迅速化と課題解決力の向上を図ります。

おわりに

当社グループは、今般策定した経営計画を着実に推進することにより、強靭な国内マザーミルと海外現地ミルを合わせて、グローバル粗鋼1億トン体制を構築するとともに、「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」に果敢に取り組み、環境と成長の両立を図ります。更に、デジタルトランスフォーメーションによる業務・意思決定の効率化、ダイバーシティ&インクルージョンへの積極的な取り組み等を通じ、多様な従業員が誇りとやりがいを持って活躍できる企業を実現します。

当社グループの企業理念には、常に世界最高の技術とものづくりの力を追求し、優れた製品・サービスの提供を通じて社会の発展に貢献する旨を定めています。これは当社グループのESGの考え方そのものであり、企業にとってESG課題に取り組むことは、自らの存立・成長を支える基盤であるとともに、最も重要な課題の一つであると認識しています。当社はESG課題におけるマテリアリティ(重要課題)をKPIに基づいて実行フォローすることで取り組みを確実に推進し、SDGs達成への貢献と企業価値の向上に努めています。

ステークホルダーの皆様のご理解とご支援をこれまでと同様に賜りますよう、お願い申しあげます。

代表取締役社長 橋本 英二

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