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企業情報「メッセージ」代表取締役社長:橋本 英二

2022年度の業績振り返り

 2022年度は、すべての基盤となる強い収益力の確立に向けて、大きく前進した年となりました。一方で、世界の鉄鋼業が極めて厳しい時代に突入したことが明確になった年でもありました。世界的に鉄鋼生産が低迷するなかにあって、鉄鉱石や原料炭が高止まりする、原料と製品のディカップリングが起きています。まさに過去にない厳しい環境下での生き残りという、新たな大競争の時代に入ったといえます。
 2022年度を振り返りますと、新型コロナの収束が見えないなか、ウクライナ戦争が勃発しエネルギー・資源価格が一段と上昇し、インフレ時代への転換となりました。日本においては、急速な円安もあり、インフレがより加速する事態となりました。また、自動車産業を中心に、半導体不足による生産障害の影響の拡大もありました。加えて、世界鉄鋼需要の過半を占める中国経済の失速があり、鉄鋼需要は内外共に大きく低迷し、当社の単独粗鋼生産も2021年度の3,850万トン強から、3,450万トン弱へと、急激な減少を余儀なくされました。
 こうした厳しい環境下にあって、集中生産、注文構成高度化、設備新鋭化、紐付分野のマージン改善等による収益構造対策の継続により、損益分岐点の抜本的な改善と収益の最大化に取り組みました。この結果、粗鋼生産量が低水準にあるなかでも、実力ベースの連結事業利益および連結当期純利益ともに過去最高を記録した2021年度を上回り、2期連続で過去最高を更新することができました。
 これは、当社として、外部環境によらず安定的に実力ベース連結事業利益6,000億円以上を確保するとこれまで申しあげてきた事業基盤の構築が完了したことであると評価しています。

外部環境認識

 2023年度の世界の鉄鋼需要については、現状からの好転が見込めない状況下にあります。中国は、不動産分野の低迷が継続し内需の回復も見通せておらず、欧米においても、先行きの不透明感が払拭できていません。また、製品価格が低迷するなか、原料価格は依然として高水準で推移すると想定され、海外一般市況分野におけるスプレッド(原料と鋼材の市況価格差)の改善は見込めない状況にあります。国内鉄鋼需要は、人口減少に伴い今後も漸減が見込まれ、世界各地域での自国産化の進展により日本からの鋼材輸出の困難化が予想され、中国の需給動向による原料・製品市況のボラティリティ増大等、更なるリスクも想定されます。
 一方で、インドを含むアジアを中心にした世界の鉄鋼需要の増加や、高級鋼の需要拡大、カーボンニュートラル技術確立による優位性の構築等の成長が見込まれており、このような機会を的確に捕捉していきます。

中長期経営計画の進捗

 厳しい環境が続くなか、構造改革の効果発揮と新たな対策の追加により、実力ベース連結事業利益8,000億円以上を達成し、グローバル粗鋼1億トン・連結事業利益1兆円の実現に向けて、2023年度は新たなステージに進む年にしたいと思っています。

  • 国内製鉄事業の再構築

     国内製鉄事業の再構築として、商品と設備の選択による生産体制のスリム化・効率化、競争力優位な設備への生産集約を進めてきました。2022年度も、関西製鉄所和歌山地区の第3鋳造機の一部設備、瀬戸内製鉄所阪神地区(堺)の第1溶融亜鉛・アルミめっきライン、東日本製鉄所鹿島地区の第1酸洗ライン等を休止する等、競争力のあるラインへ生産の集約を行いました。

     また、今後ますます需要が高まることが見込まれる高級鋼を戦略商品と位置付け、超ハイテン鋼板等の高級薄板生産を目的とした名古屋製鉄所次世代型熱延ラインや、電気自動車のモーターや変圧器の鉄心に使用される電磁鋼板生産を目的とした瀬戸内製鉄所広畑地区・阪神地区(堺)・九州製鉄所八幡地区での電磁鋼板ライン等、生産能力と品質を高めるための設備投資を積極的に計画・実施しています。
     このような設備対策に加え、紐付き価格交渉方式の見直し・適正化を図ることによる「紐付マージンの改善」も実現しており、これらの抜本的な収益構造対策の継続による収益の最大化に取り組んだことで、低生産下でも安定的に高収益を計上できる基盤を実現しました。
     加えて、高水準の設備投資を支える設備エンジニアリング体制の強化を目的に、日鉄エンジニアリング(株)の製鉄プラント事業の一部を当社へ移管する等、グループ内経営資源の最適配置にも取り組んでいます。

  • 海外事業

     海外事業については、不採算事業からの撤退をほぼ完了させ、付加価値の高い一貫製鉄事業に注力する等「選択と集中」を図ることにより、収益力向上・拡大を目指してきました。
     当社は、インドやASEAN等規模および成長率が世界的に見ても大きいアジアを中心に事業を展開しており、マーケットの規模や成長を当社の利益成長につなげ得るポジションにあります。
     このような環境のもと、「需要の伸びが確実に期待できる地域」、「当社の技術力・商品力を活かせる分野」で、需要地での一貫生産体制を拡大し、現地需要を確実に捕捉することで、日本製鉄グループとして、「グローバル粗鋼1億トン体制」を目指しています。
     具体的には、インドのArcelorMittal Nippon Steel India Limitedにおいて、高炉2基新設をはじめとする一貫能力増強投資および港湾・電力等のインフラ会社・重要資産買収の決定や、下工程拠点の買収、新たな一貫製鉄所建設に向けた検討開始等、積極的な施策を展開してきました。在庫評価差等の一過性の影響等により、2022年度は対前年度減益となったものの、今後も主要な海外市場における一貫生産体制の拡大による収益力向上を目指していきます。

  • カーボンニュートラル

      脱炭素化の取り組みについても具体的に進めています。当社は、2030年までにCO2総排出量を対2013年比30%削減し、2050年にカーボンニュートラルを目指す「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」を公表していますが、これは、日本政府の目標に合致し、海外競合他社を凌駕する高いレベルの目標です。
     当社は、「社会全体のCO2排出量削減に寄与する高機能鋼材とソリューションの提供」および「鉄鋼製造プロセスの脱炭素化によるカーボンニュートラルスチールの提供」という2つのルートで取り組みを進めています。
     前者につきましては、高効率モーターや変圧器に欠かせない電磁鋼板、自動車の軽量化に貢献する超ハイテン鋼板の能力増強を決定し、既に着工しています。このうち、エコカー駆動モーター向けの無方向性電磁鋼板の能力・品質向上投資にはグリーンボンドによる資金調達を行うことを決定し、2023年3月に発行しました。
     後者につきましては、既に大型電炉での高級鋼製造、高炉での水素還元、水素による還元鉄製造という3つの超革新的技術の開発に取り組んでいます。足元では、九州製鉄所八幡地区および瀬戸内製鉄所広畑地区を候補地とした高炉プロセスから電炉プロセスへの転換について本格検討を開始することや、超革新技術である高炉水素還元を、実機高炉で実証していくことを公表しており、研究開発と設備実装に向けた取り組みを加速しています。
     また、これらの取り組みを通じて、当社が提供する「社会全体のCO2排出量削減に貢献する製品・ソリューション技術」を総称するブランドとしてNSCarbolex®を立ち上げました。早期に安定的な供給体制を構築することでお客様における脱炭素化、社会の様々な場面におけるCO2排出量の削減に貢献していきます。
     なお、前述のように、鉄鋼業におけるCO2削減には生産プロセス自体を大きく変革することが必要であり、革新的なプロセス技術の開発・実機化が必要です。一方、実機化には巨額の設備投資や操業コストの大幅な上昇が見込まれます。また、CO2削減のみを目的とした生産プロセスの転換であるため、商品としての機能・品質等は変わりません。
     こうしたなか、政府の削減目標を実現し、日本の経済成長に資するべく、CO2削減を目的とする実機化投資を実行するためには、欧米や中国並みの政府の抜本的・総合的な支援策によって、投資判断の予見性を高められることが必須です。我々はその前提で、経済合理性を得られる施策の具体化に挑戦していきたいと考えています。

  • デジタルトランスフォーメーション

     デジタルトランスフォーメーション戦略については、生産計画、営業、製造・保全、品質管理、エンジニアリング、研究、調達、財務等、一連の鉄鋼ビジネスプロセス全体を対象とし、データとデジタル技術を駆使した業務・生産プロセス改革を進めています。5年間で1,000億円以上を投入し、鉄鋼業におけるデジタル先進企業を目指しています。具体的な取り組みとしては、無線IoTセンサ活用プラットフォームである「NS-IoT」の適用を拡大することで、多拠点のデータを集約し、更なる高度な分析・監視の実現を目指しています。東日本製鉄所君津地区および鹿島地区においては、設備の早期異常検知を目的とした実運用を2022年4月より開始しており、今後も一層の適用拡大に向け、北日本製鉄所室蘭地区・名古屋製鉄所・関西製鉄所和歌山地区・九州製鉄所八幡地区および大分地区での2023年度稼働開始を目指し、計画を前倒しする投資を決定しました。
     保有する技術・知見(リアル世界における競争力)とデジタル技術の融合を通して、「ものづくりのスマート化」 「フレキシブルかつ最適な供給体制の強化」「 ビジネスインテリジェンスの構築」を実現していきます。

厚みを持った事業構造への進化

 足元では原料から製造、流通に至る一貫した事業構造の構築・強化を図ることで、サプライチェーン全体での競争力の更なる強化やカーボンニュートラルの実現に向けて、よりレジリエントな事業構造とするための取り組みも進めています。

 原料事業では、原料市況の高止まりや豪ドル安(対米ドル)等の良好な販売環境に支えられ2022年度も高収益が継続しましたが、今後更に、カーボンニュートラル鉄鋼製造プロセスにおいても必要不可欠な高品位原料の安定調達、原料コスト変動による事業利益変動の緩和、更には今後の脱炭素化で必要となる新たな資源確保の観点から、厚みを持った「事業」への進化を図っていきます。
 また、持分法適用関連会社であった日鉄物産(株)の子会社化・非公開会社化により、鉄鋼製造サプライチェーンの下流にあたる流通分野へ事業領域を拡大しました。鉄鋼取引に関わる業務を自らが一貫して担う力を高めるとともに、製造から流通、加工まで一貫での最適化・効率化や新たな付加価値の創造等によるサプライチェーン全体での競争力強化を図っていきます。

サステナビリティ課題への取り組み

 当社は、日本製鉄グループ企業理念において「常に世界最高の技術とものづくりの力を追求し、優れた製品・サービスの提供を通じて、社会の発展に貢献」する旨を定めており、サステナビリティ課題への対応が当社グループの存立・成長を支える基盤であると認識しています。
 このような認識のもと、安全衛生、環境(気候変動対策を含む)、防災、品質、ダイバーシティ&インクルージョンや人材育成等サステナビリティ課題におけるマテリアリティ(重要課題)を定め、取り組みを推進しています。
 当社がカーボンニュートラルをはじめとした新たな課題に対応し、持続的な成長を図っていくためには、多様な人材の確保と活躍の推進がますます重要となっています。幅広い世代からの好感度・認知度を高めるための広報施策の展開や積極的な採用施策、従業員の報酬水準の引き上げ、エンゲージメント向上等、具体的な施策を一つずつ実行していきます。

おわりに

 当社グループは、今後も最先端の技術力・商品力を追求し、世界の鉄鋼業をリードするとともに、社会の持続的な成長(SDGs)の達成に貢献していきます。
 新たな大競争に打ち勝ち、カーボンニュートラルで世界をリードし、企業価値ベースでの総合力世界No.1を目指して、私自らが先頭に立ち全力を尽くしていく覚悟です。グローバル粗鋼1億トン・連結事業利益1兆円を実現していく具体的なプランを策定し、新たな事業構造を構築し、更なる高みへ挑戦していきます。今後とも当社グループの将来にご期待頂きたいと思います。

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