海の森づくり
~鉄のチカラでブルーカーボン生態系を育む

ブルーカーボンとは

ブルーカーボンとは、海藻や海草などによって海で吸収・貯留される炭素のことで、CO2の新たな吸収源として、気候変動対策のみならず、吸収量の取引(カーボンクレジット)による経済効果も期待されるなど、注目が集まっています。

ブルーカーボンのメカニズム

植物は光合成によって大気中のCO2を吸収し、炭素を蓄えます。アマモなどの海草、コンブなどの海藻もCO2を吸収する植物であり、海中でCO2を吸収し、枯死後に海底に堆積して炭素を貯留します。

ブルーカーボンのメカニズム

日本製鉄のブルーカーボンへの取組み

鉄鋼スラグを利用した海藻藻場の再生「海の森づくり」

当社は、製鉄プロセスの副産物である鉄鋼スラグ利用の有用性と安全性について科学的な解明を進めてきました。その技術を発展させて、気候変動対策として脚光を浴びつつあるブルーカーボンの基礎研究を本格的に開始しています。

ブルーカーボン360°VR動画

鉄鋼スラグを活用した藻場再生「海の森プロジェクト」を360度VRで体感できる動画です。

鉄鋼スラグの海域利用技術

当社は、「ビバリー®シリーズ」「鉄鋼スラグ水和固化体」「カルシア改質土」などの鉄鋼スラグを活用した海洋利用技術の開発を通して、藻場によるCO2吸収の促進を一層推進し、ブルーカーボンに寄与していきます。

鉄鋼スラグを原料として成分管理などを施した浚渫土砂用製品であるカルシア改質材と軟弱な浚渫土砂を混合したもの。

鉄鋼スラグの海域利用技術

海域向け鉄鋼スラグ施肥材による海藻藻場の再生「海の森づくり」を全国44カ所で実施

海藻類が失われ海底が不毛となる磯焼け現象の一因とされる鉄分の供給不足解消のため、当社は東京大学との共同研究を通じて鉄分供給資材「ビバリー®ユニット」を開発し、失われた海の藻場再生に取り組んでいます。
この技術は森林土壌中で「鉄イオン」と「腐植酸」が結合して生まれる腐植酸鉄を、鉄鋼スラグと廃木材由来の腐植物質を利用して人工的に生成・供給するものです。
ビバリー®ユニットは、全国漁業協同組合連合会制定の鉄鋼スラグ製品安全確認認証制度で安全性に関する認証を受けています。

海域向け鉄鋼スラグ施肥材「ビバリー®ユニット」
鉄鋼スラグ製品を使った海域環境の改善への取り組み

袋詰めの鉄分補給ユニット埋設半年後、ユニット埋設部から沖合い30mほどの海域にコンブが豊かに生育し、2年目、3年目もその効果が継続することが確認できました。(北海道増毛町)

鉄鋼スラグ製品による「海の森づくり」の科学的検証

技術開発本部REセンター(千葉県富津市)の海域環境シミュレーター(シーラボ)では、鉄鋼スラグを活用したブルーカーボン生態系のCO2吸収量算定やカルシア改質土におけるアマモ成長評価実験など、藻場造成の有用性を科学的に実証しています。

シーラボ全景

シーラボ全景

実験水槽とアマモ

実験水槽

手前が干潟ゾーン、奥側が浅場ゾーン。
円内は、水槽上部に人工照明を配置して成長評価実験を行ったアマモ。

検証結果(藻場面積の回復およびCO2吸収効果)

ドローンで増毛上空から海を撮影すると、海藻が黒く写り込みます。その画像上に20メートル間隔のメッシュを置いて、1つのメッシュの中にどれだけ海藻が写り込んでいるかを調べ、まず藻場面積を測定しました。
その結果、15年の0・6ヘクタールから22年には3・3ヘクタールと5・5倍に拡大していることが確認できました。
この藻場面積に対して吸収係数をかけ合わせることで、直近5年間の18~22年に吸収・固定化されたCO2量が49・5t-CO2にのぼることが明らかになりました。
今回の増毛でのCO2吸収量算定の成果を受けて、海の森づくりに取り組んでいるそのほかの海域についてもCO2吸収量を算定し、公表してきたいと考えています。

小杉知佳

技術開発本部先端技術研究所
環境基盤研究部 小杉 知佳 課長

検証現場(北海道増毛町)での藻場面積の推移

検証現場(北海道増毛町)での藻場面積の推移

ブルーカーボンを活用したクレジット制度(Jブルークレジット®)による認証

当社は、増毛漁業協同組合(北海道増毛町)と共同でJブルークレジット®に申請し、2018〜22年の5年間に吸収・固定化されたCO2量(ブルーカーボン)として、49・5t-CO2の認証を経てクレジットの発行を受けました。これは北海道のコンブ藻場で初めての認証であり、漁業協同組合と民間企業との共同申請も初めての事例となります。

Jブルークレジット発行証書

当社のブルーカーボンへの取組みに関するより詳しい情報はこちら

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