地球温暖化防止のための研究開発

日本製鉄は世界最高水準のエネルギー効率のさらなる向上を目指して、製鉄所の省エネルギーによるCO2の削減に取り組むとともに、抜本的にCO2を削減するための革新的技術開発である「環境調和型製鉄プロセス技術開発プロジェクト」に挑戦しています。

環境調和型製鉄プロセス技術開発(COURSE50)プロジェクト

当社を含む高炉4社と日鉄エンジニアリングは、2008年度から抜本的なCO2削減技術の開発に取り組む「環境調和型製鉄プロセス技術開発(COURSE50)プロジェクト」を推進中です。高炉からのCO2排出削減のために水素増幅されたコークス炉ガスを用いて鉄鉱石を還元する技術と、製鉄所内の未利用排熱を利用した高炉ガスからのCO2分離・回収技術により、製鉄プロセスでのCO2排出を30%低減する技術を開発することを目標としています。

環境調和型製鉄プロセス技術開発(COURSE50)の概要図

環境調和型製鉄プロセス技術開発(COURSE50)の概要図

次世代コークス製造技術(SCOPE21)を導入した名古屋製鉄所の新コークス炉

SCOPE21(名古屋第5コークス炉)

SCOPE21(名古屋第5コークス炉)

2008年5月、世界初となる次世代コークス製造技術「SCOPE21」の成果を最大限に取り入れた実機第1号機である大分製鉄所第5コークス炉が竣工し、現在順調に稼働しています。大分製鉄所での実績を踏まえて、第2号機として2013年6月に名古屋製鉄所の第5コークス炉が竣工しました。

「SCOPE21」は、資源・エネルギー問題への対応力強化などを目的に、経済産業省所轄の国家プロジェクトとして鉄鋼他社やコークス専業メーカー等と共同で開発された技術です。コークス製造時間の短縮、コークスの品質向上など、さまざまな革新的技術が盛り込まれており、低品位原料炭の利用拡大や大幅なCO2削減効果などが期待されています。2013年1月に経団連が公表した鉄連の低炭素社会実行計画における想定では、2020年までに日本のコークス炉の設備更新時にすべて導入した場合、合計で年間90万トン程度のCO2削減を見込んでいます。

詳しくは、環境・CSR特集をご覧ください。

世界最先端の省エネ型CO2回収設備/COURSE50開発技術の製鉄事業外展開実績

革新的技術開発を指向するCOURSE50プロジェクトでは、引き続きCO2回収用の化学吸収液の領域においても開発を推進していきますが、炭酸ガス供給事業等、開発途上ながら経済合理性が成立する鉄事業以外の領域においては、日鉄エンジニアリングが、省エネ型CO2回収設備ESCAP®として実機化を実現しています。

ESCAP®は、製鉄所から出る高炉ガスや火力発電所からの排ガスなど、比較的CO2濃度の低い常圧ガスから純度の高いCO2を分離回収する技術です。従来法と比べ、40%以上の熱エネルギー消費量削減に成功しました。

ESCAP® 商業1号機(室蘭)
高純度のCO2を熱風炉排ガスから化学吸収法により回収する世界初の設備で、省エネを達成しつつ食品用として要求される厳しい品質基準を満たしています。

(1)高性能吸収液

当社と公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)が共同開発した吸収液を使用。反応特性を大幅に改善し、耐久性を向上。

(2)吸収液性能を引き出すプロセスの最適化

吸収液の性能を最大に引き出すため、吸収プロセス・再生プロセスの温度・圧力制御を最適化。

(3)吸収反応熱を変換利用(世界初*2

CO2吸収反応等で発生する低温熱を高温状態に変換し再生熱として利用(東京大学と共同開発)。

*2 特許第5641194号

VOICE

堂野前 等

技術開発本部
先端技術研究所 環境基盤研究部長
堂野前 等

抜本的なCO2低減に向けた研究開発の取組み

当社は上述のCOURSE50に加えて、中長期的なCO2排出量削減に向けた研究開発にも取り組んでいます。CO2の再利用や再生可能エネルギーの利用といった、抜本的なCO2排出低減を目指した研究開発です。例えば、ジメチルカーボネートという樹脂の原料をCO2から合成するプロセスについて、2007年からの東北大学との共同研究により実用化に資する成果を上げています。また太陽光エネルギーを利用して、CO2をCO*3(一酸化炭素)に変換する研究を大阪市立大学人工光合成研究センターと、H2O(水)をH2*3(水素)に変換する研究を産業技術総合研究所と共同で進めています。CO2を多量に排出する当社の責務として、CO2ゼロエミッションに向けた研究開発活動をさらに加速させていきます。

*3 COやH2は燃料や鉄鉱石の還元材となり、石炭を代替すればCO2排出量削減につながる。

CO2を有用物として固定化する技術開発

CO2を炭素資源としてリサイクルするCCUCarbon Capture and Utilization開発が注目されています。当社は東北大学との共同研究を通じ、CO2から炭酸ジメチル(DMC)を製造するプロセスを開発しています。DMCは高性能プラスチックの原料やリチウム電池用の電解液として広く利用されていますが、今回2-シアノピリジンという新規の脱水剤を開発し、低圧低温で高効率の反応が可能となり、CO2の有効利用に成功しました。また従来の製造法で必要だった有毒ガスのホスゲンが不要となり、安全性も向上します。 将来は製鉄所とプラスチック工場の連携を目指したいと考えています。

CO2から炭酸ジメチル(DMC)を合成するプロセスの反応式

CO2低減に資する新しい水素製造プロセスの開発

多くのCCUプロセスではCO2を有用物に固定化するために水素を必要とします。当社は国立研究開発法人産業総合技術研究所との共同研究を通じ、省エネルギーで水を電気分解して水素を製造する人工光合成技術を開発しています。この技術は、太陽光エネルギーにより光触媒が酸素をつくると同時に鉄イオンを3価から2価に変え、その2価鉄イオンの働きで、通常の約2分の1の電力で水素を製造できるのが特徴です。新規の光触媒を開発し、世界トップの効率を確認しています。今後は、光触媒の安定性向上や水電解装置の改良を進め、実証実験へつなげたいと考えています。

太陽光を利用した省エネルギー水素製造プロセス概念図

「海の森づくり」からブルーカーボンへの展開

当社は、海の森づくりに向けた鉄鋼スラグ利用の有用性と安全性について科学的な解明を進めてきました。その技術を発展させて、地球温暖化対策として脚光を浴びつつあるブルーカーボン(海洋生態系による二酸化炭素の吸収・固定)の基礎研究を本格的に開始しました。鉄鋼スラグを活用して浅場・干潟・藻場などを造成し、沿岸海域の環境改善を図ることで、どのくらいの二酸化炭素を固定することができるのか、当社の保有する大型水槽(シーラボ)を用いて、基礎データを集積することから着手しています。

<参考> 当社の技術開発力


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