S-TEN®
近年、環境問題が大きく取り上げられるようになり、高層煙突、エアープレヒーター、集塵器、排煙脱硫装置をはじめとする排煙処理設備の建造数が大幅に伸びてきました。一方、工業用燃料の主体が、従来の石炭から重油に代わったことから、これら排煙処理装置(ことにエアープレヒーター、煙道、煙突)の硫黄酸化物による低温部腐食が大きな問題となっています。この低温部腐食は、硫酸露点腐食と呼ばれる高温、高濃度硫酸による腐食で、一般の大気腐食等とは異なり普通鋼はもちろん、ステンレス鋼でも激しく腐食されます。また、ダイオキシン対策の最近のめざましい技術革新の結果、以前よりも排ガス温度が低下するケースが増えてきました。従来は、硫酸露点腐食だけしか生じなかった施設でも、ダイオキシン対策改修工事後、排気ガスの低温化にともない、塩酸露点腐食が生じることもあります。これらを解決すべく硫酸露点腐食や塩酸露点腐食に強い溶接構造用として開発されたのがS-TEN鋼です。S-TEN1は耐硫酸露点腐食、耐塩酸露点腐食、S-TEN2は耐硫酸露点腐食に対して有効です。

特長

日本製鉄オリジナルの耐硫酸・塩酸露点腐食鋼です。
- 石炭火力ボイラーや廃棄物焼却施設等の排煙設備における硫酸・塩酸露点腐食に対して優れた性能を発揮します。[火力発電・ごみ焼却施設でNo.1の使用実績を有しています(当社調べ)。]
- 平成19年市村産業賞 功績賞を受賞いたしました。
強度・施工性・溶接性は、普通鋼と同等です。
ステンレス鋼に比べ経済的です。
熱延鋼板・冷延鋼板・鋼管・溶接材料まで、幅広いメニューを取り揃えています。
- 熱延鋼板(厚板)は、JISG3106SM400A(S-TEN1)、SM490A(S-TEN2)に適合します。
鋼材問屋に常時在庫していますので、容易に入手可能です。
適用例
| 対象 | 使用実例 | 使用上の注意事項 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 適用箇所 | 鋼種 | 概略板厚(mm) | |||
| S-TEN 1 | S-TEN 2 | ||||
| 乾式集塵機 | ケーシング、ダクト、集塵板 | ○ | ○ | 1.2~8 | ケーシング、ダクトは保温状態に応じて、ガス温度より20~70̊C低温になります。集塵板の温度はガス温度と同じと推定されます。ダストが堆積した場合、吸収されたH2SO4が吸湿し、予想以上に腐食するケースがあるため、ダストの堆積を防止する必要があります。 |
| 湿式集塵機 | ケーシング、ダクト、集塵板 | ○ | ○ | 3.2~12 | 洗浄水が常時壁面上を流れる状態の場合、腐食量は大きくなります。また、この状態で洗浄水が、低pHとなる場合には、腐食量が急激に増加するので、S-TENの使用は避ける必要があります。 |
| 減温塔 | ケーシング、ダクト | ○ | ○ | 4.5~9 | ケーシング、ダクトは保温状態に応じて、ガス温度より20~70̊C低温になります。ノズル孔の劣化でミスト液滴が大きくなり、蒸発せず管体に届くと予想以上に腐食するケースがあるため、スプレーノズルの劣化管理を行う必要があります。 |
| 灰掃き出し羽根 | - | ○ | 12~20 | 減温塔底に堆積する灰を掃き出す羽根材としてS-TEN2が最適です。S-TEN鋼で、灰中塩化物による応力腐食割れを回避できます。 | |
| 空気予熱器 | ユングストローム型バスケットケース、エレメント | ○ | ○ | 0.6~6 | 壁面温度が上下を繰り返すため、低温から高温までの露点腐食の繰り返しとなります。S-TENの効果が発揮される用途です。 |
| チューブ型パイプ | ○ | - | 0.6~3.5 | 常時露点状態となる場合が多く、S-TENの効果が大きい装置で、S-TEN1鋼管が最適です。 | |
| 煙道 | ダクト、エキスパンション | ○ | ○ | 4.5~9 | S-TEN鋼の無塗装仕様または耐酸塗装仕様が適しています。ガス温度が露点以下となる場合、煙道下部にドレインが溜まり予想以上に大きな腐食を生じる場合があります。ドレイン抜きを十分行うことや、外部保温により鋼板温度の低下を防止する等の対策が推奨されます。 |
| 煙突 | 内筒 | ○ | - | 6~12 | |
| 排煙脱硫装置 | 排気筒、アフターバーナー用ダクト | ○ | ○ | 3.2~6 | ガスクーラー、吸収塔等、装置本体の直前直後のダクトは、硫酸ミストの飛来により低pHの液が壁面に付着する可能性があるので、十分ドレインの状態を調査する必要があります。 |
| 塩酸酸洗槽 | 槽本体 | ○ | - | 9~20 | めっき処理の塩酸酸洗槽への使用に適しています。使用中耐傷性に優れ、廃棄処理も一般鋼材として取り扱えます。 |
S-TEN鋼使用上の注意

- 1S-TEN鋼は、低合金耐食鋼です。露点腐食による腐食が抑制されますが、さびの発生はあり、腐食の進行もありますので、ご留意ください。
- 2S-TEN鋼は、図1.6にありますように、硫酸露点腐食に対して他鋼種に比べ抑制効果がありますが、この場合の60̊Cや70̊Cの例のように、腐食の絶対量が他の温度域より大きくなる領域があります。
- 3S-TEN鋼は、図1.10に示しますように、気液平衡状態で生じる腐食よりも、高温・低濃度の硫酸に対して腐食が大きくなることがありますので、注意が必要です。
- 4表1.8にpH2~4の非常に薄い硫酸濃度での耐食性の試験結果を示します。このような弱酸性あるいは中性の液の腐食に対しては、ステンレス鋼が最も優れており、腐食量は少ないです。pH3以上では普通鋼とS-TEN鋼で大きな差がありません。
弱酸性領域(pH2~4)における耐食性試験結果
| 鋼種 | 腐食速度(mg/cm2/hr) | 試験条件 | ||
|---|---|---|---|---|
| pH2 | pH3 | pH4 | ||
| S-TEN 1 | 1.6 | 2.0 | 0.36 | 試験温度:30̊C 試験片と溶液の相対速度:1.8m/sec 試験時間:72hr |
| S-TEN 2 | 2.8 | 2.2 | 0.38 | |
| SS 400 | 8.2 | 2.5 | 0.36 | |
| SUS 304 | < 0.001 | < 0.001 | < 0.001 | |
| SUS 316 | < 0.001 | < 0.001 | < 0.001 | |
| SUS 410 | 0.51 | < 0.001 | < 0.001 | |
| SUS 430 | 0.001 | < 0.001 | < 0.001 | |
実機適用例

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