新日鐵住金株式会社の発足にあたって(社員向けトップメッセージ:会長兼CEO 宗岡 正二)

2012/10/01
新日鐵住金株式会社
会長兼CEO 宗岡 正二

新日鐵住金株式会社の発足にあたって
(社員向けトップメッセージ:会長兼CEO 宗岡 正二)


  新日鐵住金株式会社の発足にあたり、一言ご挨拶を申し上げます。
まずはじめに、昨年2月3日に統合の検討開始を発表して以降、ご賛同いただきました需要家の皆様、またご承認いただきました関係省庁や株主の皆様、そして本日に至るまで、Best for the New Companyの精神のもと、統合の実現に向けて全力で取り組んでくれた皆さんに心から感謝したいと思います。

  皆さんのそうしたご尽力もあり、今日こうして新会社は船出をすることができたわけではありますが、我々を取り巻く経営環境は想定以上のスピートで、急速に厳しさを増しており、残念ながら、統合によってバラ色の未来が約束されているような状況では全くありません。

  世界経済全体が、欧州の債務危機の長期化や、中国をはじめとする新興国経済の成長鈍化等により、不透明感を増しておりますし、また、日本経済も円高やエネルギーの供給不安等の6重苦が一向に解消されず、誠に厳しい状況が続いております。

  日本鉄鋼業も、円高やエネルギー供給不安等によって、製造業の海外移転の動きが加速する一方で、供給面では、東アジアを中心とした競合他社の能力拡張により、大幅な需給ギャップが顕在化し、鋼材市況の低迷に直面しています。その結果、世界の鉄鋼業のみならず、日本の鉄鋼業界も非常に厳しい収益状況に追い込まれているのであります。

  更に、こうした経済の停滞や鉄鋼市場の需給環境の悪化、そして市況の低迷等については、短期間で解消されるとは期待し難く、かなりの期間継続することを覚悟せざるを得ない状況にあります。

  本日は、新会社発足の初日ではありますが、足元の大変厳しい経営環境の認識を、皆さん全員と共有することからスタートしたいと思います。

  そのうえで、今回の統合を機に、これから申し上げる4つの施策をスピーディーかつ、着実に実行することによって、スケール、コスト、テクノロジー、カスタマーサービス、更には、強固な財務基盤等、あらゆる面でレベルアップした「総合力世界ナンバーワンの鉄鋼メーカー」として、我々は必ずやこの厳しい国際競争に勝ち残っていけると、私は確信をしております。

  第一に取り組むべき施策は「コスト競争力の強化」であります。統合後3年を目処に、年率1,500億円以上の統合効果を実現することは勿論のこと、生産設備の更なる効率的運用や統廃合を含む抜本的なコスト競争力強化に取り組み、グローバル競争を勝ち抜けるコスト競争力の実現に全力を尽くしていかねばなりません。

  第二は「技術先進性の発揮」であります。技術力は物づくり企業の競争力の源泉であり、これまで培ってきた両社の製造技術力・商品開発力・研究開発力を融合し、世界最高水準の技術力を更に一段と高いレベルへ引き上げていかねばなりません。製造現場のものづくりの実力については、これまでの製造実力向上、製造基盤整備活動に加え、ベストプラクティスの導入等、両社の知恵と知見を融合し、一層高いレベルの実現を図ります。また、商品開発面では、営業部門と一体となって、お客様のニーズを先取りした提案を他社に先んじて行えるように、スピードを上げた取り組みを推し進めて参ります。

  第三は「鉄鋼事業のグローバル展開」であります。世界の鉄鋼需要は一時的な調整局面があるにせよ、中長期的には中国を含む東アジア・インド、中南米、そして中東といった新興国を中心に底堅い伸びが期待されています。そのような成長地域を視野に入れ、自動車・環境・資源エネルギー等の成長分野や、当社が強みを有している交通産機品分野等を中心に、グローバルな製造・加工拠点の拡充に取り組んで参ります。

  第四は「製鉄以外の分野での事業基盤の強化」であります。エンジニアリング・化学・新素材・システムソリューションの各事業分野で、成長分野での事業拡大と財務体質の強化の実現に、自律的かつ全力で取り組んで参ります。その上で、鉄事業を含めた事業間シナジーの向上による、グループ全体の企業価値向上を目指して参ります。

  我々は、今日この日から、今申し上げた4つの施策を経営方針の中核に据えて、成すべきことはすべて、スピード感を持って着実に成し遂げていかねばなりません。そういう意味では、皆さんもよく認識している通り、統合は今日がゴールなのではなく、今日がまさにスタートなのであります。

  そして、そのためには、新日鐵住金グループの全員が、一人一人の持ち場で全力を尽くすことは勿論のこと、全員が手と手を携えて一致協力して物事にあたることが重要であります。昨日までは別々の会社だったわけですが、今日からは同じ会社の仲間であります。

  まずは、歴史と伝統ある両社がこれまでに培ってきたものを、よく理解し合うことからはじめて、更に、自らの考え方、やり方に拘ることなく、真摯にお互いの良いところを見出して、貪欲に吸収すると共に、「議論に上下無し」の精神で明朗闊達な職場を構築していって欲しいと思います。

  こうした努力の積み重ねによって、志を同じくする仲間として、新日鐵住金という新しい会社の企業文化と歴史を作っていく役割を、皆さん一人ひとりに担っていって頂きたいと思います。私自身も、友野社長兼COOと手を携えて、先頭にたって努力して参る所存です。

  最後に、当社グループの企業理念について一言申し上げます。企業理念は基本理念と5つの経営理念から構成されています。

  基本理念は、「新日鐵住金グループは、常に世界最高の技術とものづくりの力を追求し、優れた製品・サービスの提供を通じて、社会の発展に貢献します。」であります。

  5つの経営理念について詳細にはお話しいたしませんが、その第1には、「信用・信頼を大切にする」ことを掲げています。信用・信頼は事業継続の大前提でありますので、法令やルールを遵守する、というコンプライアンスの徹底はもとより、約束をきちんと守るといった基本的なことを一つひとつ愚直に積み重ねることによって、信用と信頼を高めていって頂きたい。

  企業理念全体を一人ひとりがよく理解し、日々の業務にあたってもらいたいと思います。

  今日この日から、皆さん全員と力をあわせて、当社を文字どおり「総合力世界ナンバーワンの鉄鋼メーカー」すなわち「グローバルマーケットにおいて、圧倒的な存在感のある鉄鋼メーカー」にしていくのだ、という強い決意を申し上げ、私からのご挨拶といたします。


以 上


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