技術開発
素材としての可能性を極限まで引き出すこと、
すなわち「鉄を極める」という目標に向け、私たちは挑戦し続けています
薄型テレビは年々薄くなっています。薄くすればするほど多数の電子部品が狭い空間に詰め込まれるため、技術的課題は増えていきます。例えば、電子回路から発生して内部にこもる熱を逃がすこともそのひとつです。このような課題を解決するには、テレビの外箱(筐体と言います)に高機能な素材を使用する必要があります。私たちの製造する鋼板は、このテレビの筺体に使用されています。消費者には見えないところで、当社の技術が活躍しています。
薄型テレビには、液晶・プラズマ・有機ELなどの種類がありますが、テレビの筺体が満たすべき条件は共通です。一番目の条件は、「磁気をシールドすること」です。内部のデバイスから発生する磁気を外部に漏らさず、周辺の機器に影響を及ぼさないこと、および、地磁気をはじめとした外部の磁気をシールドして美しい画面を確保すること(磁気を受けると画面は乱れるのです)が重要です。また、二番目の条件として、「テレビ内部で発生する熱を外に逃がすこと」が挙げられます。これも満たすべき重要な条件です。
薄型テレビの筺体は、テレビの前後面で電気的に一体化していないと、接合部から磁気が漏れたり入り込んでしまいます。したがって、磁気シールド性を満たすためには、本体にネジで接合しただけで本体と電気的に一体化する、つまり表面が電気を良く通すことが必要です。これが「良導電性」です。鉄は表面処理なしならもちろん「良導電性」ですが、これでは錆びてしまいます。お茶の間の主役のテレビが錆びては困るので、表面処理をします。これが問題なのです。錆びる、という現象は鉄がイオン化して電子のやり取りをする、ということと密接に結びついています。ですから錆を防ぐには、普通、「導電性を悪くする」処理を行うのです。つまり、「錆びにくい」と「電気を良く通す」は矛盾した要求なのです。
そこに加わるのが放熱性です。先に述べた通り、テレビが薄くなればなるほど、多数の電子部品が狭い空間に詰め込まれるため、効率的に放熱できなければファンが必要になります。ファンは、回す電気が必要なうえに、回転音という欠点があります。また、薄型化に伴い、液晶テレビの光源にLEDを使うケースが増えていますが、このLEDも過熱しやすいデバイスで、放熱は重要な課題です。
このように薄型テレビの筺体は、「導電性が高く」「放熱性がある」というふたつの課題を一度にこなす素材を必要としているのです。大きなパネルを一枚の鉄板からプレスで製造できるという「加工性が高い」ことも満たした上の話です。
このたくさんの要求を満たすのが当社の「良導電性放熱PCM鋼板」です。表面処理技術の粋を集めた鋼板で、このタイプの鋼板を供給できるのは当社だけです。
※PCM
Pre Coated Metalの略で、鉄鋼メーカーで塗装して販売される表面処理鋼板の総称です。「良導電性放熱PCM鋼板」は当社の技術で塗装まで済ませて、導電性・放熱性などの性能を確保したうえでお客さまに納入しています。