【日鉄百景】東日本製鉄所 君津地区
「日鉄百景」では、日本製鉄の各製鉄所地域がもつ特徴や、そこで活躍する社員の姿、製鉄所を取り囲む風景などをご紹介しています。
東日本製鉄所 君津地区は、首都圏最大の需要地を支える銑鋼一貫の生産拠点として、1965年に操業開始しました。東京湾に面した広大な敷地に、原料受入から製造、出荷までの工程を集約し、日本のものづくりを足元から支えてきました。その一方で君津地区は今、新たな挑戦にも踏み出しています。カーボンニュートラル社会の実現に向けて、高炉水素還元技術の実機実証を担い、2026年から実証試験開始予定です。
君津地区の強みと特徴、そして未来を切り拓く現場の声を紹介します。
拠点概要
| 所在地 | 千葉県君津市君津1番地(君津市・木更津市に跨る) |
|---|---|
| 創業 | 1965年2月1日 |
| 主要製品 | 薄板(熱延・冷延・表面処理鋼板)/厚板/線材/鋼管 |
| 従業員数 | 直営 約3,500人、協力会社 約11,500人 |
| 敷地面積 | 1,211万㎡(東京ドーム約220個分) |
| 役割・位置付け | 首都圏のものづくりを支え、次世代の製鉄を担う中核拠点 |
君津の操業を支える現場の様子











君津地区の特徴
首都圏の需要を支える
国内最大級の鉄鋼一貫生産拠点

東日本製鉄所君津地区は、高度経済成長期に国内鉄鋼需要が拡大するなか、国内最大の需要地である首都圏における鉄鋼生産拠点として、1962年から約7年もの歳月をかけて海を埋め立てて建設された銑鋼一貫の製鉄所です。敷地面積は1,211万㎡(東京ドーム約220個分、東西約6km×南北約2km)と広大で、都心に置き換えると東京駅~新宿駅間に相当する規模感です。
1965年に冷延工場の操業を開始し、1967年には第1高炉の火入れが行われ銑鋼一貫体制での生産を開始しています。現在は高炉2基を擁し、粗鋼生産能力は年間約800万tと単一地区では国内トップクラスです。薄板・厚板・線材・鋼管と多品種にわたる高品質な製品を安定的に生産・供給するために、製鉄所構内では約15,000人(うち直営約3,500人)の従業員が働いています。
また、東京からアクアラインを渡って約1時間という好立地のため、国内外を問わず行政や需要家、学生、地域住民をはじめとした年間約2万人の方々にご来所頂いています。1995年には当時の天皇陛下、2015年には当時の皇太子殿下にもご視察頂きました。そのため、現在でも第4高炉の外観視察場所は、「お立ち台」と呼ばれています。



高効率な物流・運営体制と、
進化を続ける高付加価値製品の供給

君津地区は大規模船舶が着岸可能な原料・出荷ヤードを備え、原料から出荷まで一貫した高い生産・物流効率を実現しています。製品出荷は、東日本エリアを中心とした国内向けが約半数、輸出が約半数を占めています。また、近隣に位置する鹿島地区を主に、地区間での半製品・資材・人材の融通・共用・交流を積極的に行い、効率的な運営に努めています。
また、各分野での品種間連携も強化しながら、高付加価値品の開発・製造に取り組んでいます。
- 薄板:2021年に稼働開始した6CGL(亜鉛めっきライン)を中心に、自動車向けでは超ハイテン鋼により車体の軽量化に寄与しています。建材電産機向けでは、スーパーダイマ®GB、ビューコート® マットといった高耐食性や意匠性を備えた鋼板により、長寿命化や客先での省工程(塗装レス等)に貢献しています。
- 厚板:建設機械向け耐摩耗鋼(ABREX®)や、今後需要拡大が期待されるLNGタンク向け9%Ni鋼を製造しています。
- 線材:スチールタイヤコードや橋梁向け高強度鋼、ボルト・ナット向けのCH(冷間圧造)鋼を製造しています。特にCH分野では、DLP(Direct in-Line Patenting)を活かしたメタラジー設計により、客先での省工程(焼鈍など)に寄与する鋼材開発を進めています。
- 大径管:地震に強いハイテン基礎杭や、施工現場での省力化・省工程化に寄与するNSエコパイル®、ガチカムジョイント®などを製造しています。


世界初の挑戦!カーボンニュートラルの実現に向けた「COURSE50」実証試験

君津第2高炉では、製鉄所内にある12㎥試験高炉で培ったCOURSE50技術(常温水素吹込み)の実機実証試験を目指して設備導入を進めています。4,500㎥の大型高炉実機を用いたコークス炉ガス、水素ガスを使った水素還元の実証試験は、川口春奈さんのCMでも紹介されている通り、世界的にみても初めての先進的な取組みです。
所内発生量の約半分という大容量のコークス炉ガスを、炉内圧力の高い高炉へ吹き込むため大規模なコンプレッサー設備などを導入します。水素系ガス吹込み設備は欧州で実績のある海外メーカーの技術を一部導入しますが、欧州との商慣習、設計思想に違いがあり、対話を重ねて認識を共有してきました。また、欧州とは高炉の操業条件、法令が異なるため当社設備として最適化すべき仕様もあり、時に対面での議論を尽くして進めているところです。ガスの取り扱いなど援用可能な基準が無い項目については、製鉄以外の先行企業へのヒアリングや、大学との連携を通して基準や安環防仕様を判断しています。
本実証試験は、カーボンニュートラルビジョン2050に掲げる3つの取り組みの1つであり、2026年からの実証試験に向けて関係者一丸となって進めてまいります。
活躍!社員インタビュー
君津の多種多様な鉄づくり。その未来を担う社員たちが胸に刻む「誇り」と「情熱」に迫ります。
前例のない水素操業へ。経験と技術で未来を切り拓く

2026年度に予定されている君津第2高炉での水素還元技術実証実験に向けて、製銑CN推進室では、水素還元技術実証実験に向けた設備の検討を進めています。水素は燃焼する条件範囲が広いため、安全・環境・防災リスクの最小化を絶対条件に、異常燃焼しない条件をどう担保するか、どこを監視し、どう運用していくか。当地で長年、高炉操業に携わってきた経験を活かして取り組んでいます。
前例のない取り組みだからこそ、判断の一つひとつには重みがあります。頭越しにOKしたりダメ出しをするのは簡単ですが、それでは進まないことも多い。検討を進める中では、研究、技術、現場、それぞれの立場から意見がぶつかり合い、正直かなり激しい議論もあります。
同様に、操業面でのリスク評価と対応策の検討もしています。水素を用いた操業には、未知の部分が多くあります。従来の操業条件からの変化はもちろん、高炉から発生するガス組成や集塵水の性状に与える影響など、一つひとつの変化を技術開発部門とも連携しながら評価しています。安全・環境・防災リスクの最小化には、事前の検討が極めて重要であり、その責任の重さを強く感じています。
水素還元は「新時代を担う技術」です。技術導入において、変えるべき部分と変えてはいけない部分を見極める。近接している富津の技術開発部門の協力も含め、レベルの高い技術・研究・現場スタッフがそろっている君津だからこそ世界に先駆けて成功させることができると信じています。そして、当社の製鉄技術が世界一であることを証明したいと思います。
お客様に寄り添い、共に課題を乗り越え価値をつくる

私は東日本製鉄所をはじめとする当社が生み出す鋼材や技術を、自動車メーカーの課題解決につなげるソリューション提案を担当しています。毎週お客様のもとに足を運び、開発しようとしている車を実現するために、材料メーカーの立場から一緒に検討し取り組んでいます。
難しいのは、軽量化だけでなく、コストや量産性、安全性など多くの制約を考慮することが必要な点です。材料の細かな点について直接相談を受けることがあります。自分の回答が当社の考えとして伝わる可能性もあるため、責任の重さも感じています。
当社の材料をお客様に使っていただくためには、特性に応じた材料そのものを提案するだけでなく、製品を使いこなすためのソリューション技術を開発し、材料と合わせて提案していくことが欠かせません。提案を進める中で、各国の衝突法規だけでなく車のデザインなど非常に多くの制約の中でクルマづくりが進められていることを実感しました。
仕事において意識しているのは、まず相手の考え方を正確に理解することです。その上で、お客様との対話で得られた課題を営業・開発部門と共有します。解析や検討を重ねながら、材料の使い方や工法の工夫などの具体的な解決策の提案に繋げています。
鉄を効率よく使っていただき、お客様の求めるクルマを実現するのに貢献できる提案ができるようになりたいですね。当社の製品や技術を、お客様にメリットのある形として届けられるのが、この仕事の醍醐味です。これからも、困ったときに真っ先に相談してもらえる、同じゴールを目指すパートナーであり続けたいと思っています。
君津地区百景
鉄鋼スラグを活用した海の森づくり
君津市、千葉県漁業協同組合連合会及び日本製鉄株式会社の三者で共同申請した東日本製鉄所君津地区西護岸の浅場造成プロジェクトが、2023年度および2024年度に引き続きJブルークレジット®の認証を取得し、国土交通省認可の技術研究組合であるジャパンブルーエコノミー技術研究組合が主催する交付式において、クレジットの発行を受けました。2011年から毎年工事を行い、2023年までに計11.6ヘクタール(東京ドーム2.5個分)の海の森を作っています。
地域との共生・地域への貢献
地域との共生を大事にして所運営を行っています。毎年9月に「君津市民ふれあい祭り」が開催され、いやさか君津踊りや製鉄所見学会等に協力・参加しています。製鉄所見学会では1日に約1,300人の方にご来所頂きました。また、地域密着型の広域野球チーム「日本製鉄かずさマジック」の活動支援や地域の海岸における清掃活動等にも取り組んでいます。




君津市漁業資料館
君津市は海苔の養殖が盛んで漁業で栄えた町でした。君津地区のそばには、“君津市漁業資料館”があり、海苔養殖について学ぶことができます。(君津地区は1962年から約6年の歳月をかけて、約1千万㎡の土地を埋め立てて造成されました。)


人見神社展望台
ちば眺望100景に選ばれ、富津市・富士山を一望できます。製鉄所の工場夜景が綺麗です。

