新日鐵住金 日本塑性加工学会より「学会大賞」を受賞
2013/06/26
新日鐵住金株式会社
新日鐵住金 日本塑性加工学会より「学会大賞」を受賞
新日鐵住金株式会社(代表取締役会長兼CEO:宗岡正二 以下、「当社」)は、平成25年度日本塑性加工学会賞において、最高賞である「学会大賞」を受賞しました。
本賞は、塑性加工の分野における顕著な業績として評価される学術的研究、独創性のある技術などを讃える賞です。受賞した技術の概要は以下のとおりです。
熱延ハイテン高品質高効率製造技術の開発
- 1.開発の背景
CO2削減等に資する鋼材重量の軽量化に向けて、高張力鋼板(ハイテン)の需要は増大しております。こうした強度と加工性を備えたハイテンを製造するにあたっては、金属組織の制御が必要であり、熱間圧延後の冷却工程において、従前よりも鋼板の温度降下履歴を緻密に管理することが求められていました。
また、ハイテンの圧延比率の増加に伴い、高効率かつ低コストで製造するためには、軟鋼とハイテンを同じタイミングで造り分けるスケジュールフリー圧延技術が必要となっていました。加えて、ハイテンは圧延荷重が高いため、鋼板尾端部の蛇行が大きく成り易く、通板トラブルが発生し易いという課題がありました。 - 2.開発の内容
高品質圧延技術に関しては、仕上ミル前の粗バーヒータ加熱から、仕上スタンド間冷却を経て、仕上圧延後のランアウトテーブル(ROT)冷却に至るまで精緻な温度制御を行うための一貫温度制御を開発致しました。特にROT冷却においては、冷却工程での注水環境下においても鋼板温度を高精度に測温できる独自開発の温度計(以下、冷却帯内鋼板温度計)を用いて鋼板の巻取時の温度(以下、巻取温度)をフィードフォワード制御する技術を開発致しました。加えて、鋼板の金属組織を制御するために、冷却帯内鋼板温度計測値を用いて、鋼板の冷却過程における急冷停止温度、中間空冷時間および巻取温度を同時に制御する冷却履歴制御を開発致しました。
高効率圧延技術に関しては、3次元FEM解析を用いて圧延変形特性を解明し、ハイテンの圧延にも対応した高精度オンライン圧延モデルを開発し、スケジュールフリー仕上圧延技術を開発致しました。
また、圧延荷重の高いハイテンでは圧延の非対称性による圧延中の鋼板の蛇行に起因した通板トラブルが発生していることから、圧延スタンド間で鋼板の蛇行挙動を確実に測定できる熱間蛇行計を独自開発し、計測した蛇行挙動をもとに下流側圧延スタンドの鋼板の蛇行挙動を将来にわたって予測し、蛇行量を最小化する最適制御手法を用いた蛇行防止技術を開発致しました。
更に、生産量最大化のため、仕上圧延のアイドルタイムが最小になるように加熱炉抽出やライン進行を制御するミルペーシング技術を開発致しました。 - 3.開発の成果
冷却帯内鋼板温度計を用いた巻取温度のフィードフォワード制御により、予測が困難なハイテンの巻取温度の不良(温度外れ)を大幅に抑制できるようになりました。また、開発温度計を用いた冷却履歴制御により、金属組織を緻密に制御した高機能ハイテンの製造が可能となりました。
また、高精度オンライン圧延モデルを用いた板プロフィル制御および板幅制御の改善に加え、開発モデルと熱間平坦度計を用いた平坦度制御の改善により、軟鋼と同等の寸法精度と平坦度でハイテンを製造することが可能となり、スケジュールフリー圧延を実現致しました。ハイテンと軟鋼の交互圧延をミルペーシング技術によって時間管理することで高寸法精度と高効率を両立した製造が可能となりました。
更に、蛇行制御の開発により、通板トラブルでの損失を回避することができるようになりました。
今回の熱延ハイテン高品質高効率製造技術は、高品質ハイテンの安価・安定供給を支える製造基盤であり、同製品の供給を通じて自動車の燃費・衝突安全性の向上という社会的要求に応えております。
(図1:熱延ハイテンの高品質高効率製造を可能にした熱延製造技術)
(写真1:授賞式の様子)
左より、
技術開発本部 プロセス研究所 制御研究開発部
上席主幹研究員 鷲北 芳郎
技術開発本部 プロセス研究所 制御研究開発部
上席主幹研究員 中川 繁政
技術開発本部 プロセス研究所
圧延研究開発部長 佐々木 保
鹿島製鐵所 薄板部 熱延技術室長 焼田 幸彦
技術開発本部 プロセス研究所
一貫プロセス研究開発部
主幹研究員 福島 傑浩
(お問い合わせ先)総務部広報センター TEL:03-6867-2146