新日鐵住金 文部科学大臣表彰をダブル受賞

2013/04/08

新日鐵住金株式会社

新日鐵住金 文部科学大臣表彰をダブル受賞

 新日鐵住金株式会社(代表取締役会長兼CEO:宗岡正二 以下、「当社」)は、平成25年度文部科学大臣表彰において、「科学技術賞(開発部門)」を2件受賞しました。
 本賞は、科学技術に関する開発、理解増進等において顕著な成果を収めたものの功績を讃える賞です。当社は7年連続での受賞となります。
 受賞した技術の概要は以下のとおりです。

1.建材向け高耐食Zn-Al-Mg-Siめっき鋼板(スーパーダイマ®)の開発
 (1)受賞者
  君津製鐵所 品質管理部  主幹   本田 和彦
  君津製鐵所 品質管理部  上席主幹 森本 康秀
  広畑製鐵所 生産技術部  室長   新頭 英俊
  君津製鐵所 設備部    室長   末宗 義広
  薄板事業部 薄板企画部  主幹   小野澤 元

 (2)開発の背景
 土木建築用の鋼材として、鋼材の腐食を抑え寿命を向上させる目的で「溶融亜鉛めっき鋼板」が長年にわたり使用されていますが、同鋼板には、部材を加工するための切断過程で切断面に露出する素地鉄が腐食するという問題があり、切断面の防食が可能な溶融亜鉛めっき鋼板の開発が求められていました。

 (3)開発の内容
 今回の開発は、めっき層の腐食メカニズムと腐食生成物を明らかにし、めっき層および腐食生成物のミクロ構造を制御するというアプローチに基づいて、従来の亜鉛めっき成分への合金添加の最適化により、世界で初めて切断端面の防食性能を有する亜鉛めっき鋼板(スーパーダイマ®)を開発致しました。
 スーパーダイマ®は、表面に亜鉛を主成分に、約11%のアルミニウム(Al)、約3%のマグネシウム(Mg)、微量のシリコン(Si)からなる合金めっきを施し、従来商品(溶融亜鉛めっき鋼板)と比較して優れた耐食性を保有する高耐食性めっき鋼板です。

 (4)高耐食Zn-Al-Mg-Siめっき鋼板(スーパーダイマ®)の特徴・効果
  1)切断面への防食機能の付与
 犠牲防食*により溶出しためっき層は緻密で保護性のある腐食生成物を形成し、その腐食生成物が切断面を覆うことにより長期にわたって素地鉄の腐食を防止できます。
*めっき層に、万一、キズが発生し、素地の鉄が露出したとしても、キズの周囲のめっき層が「鉄より先に溶け出して」電気化学的に保護するため、鉄を腐食させない作用のこと。
 
  2)鋼材の長寿命化
 めっき層のミクロ構造を制御することで、耐食性が従来の溶融亜鉛めっき鋼板の4倍に向上し、鋼材の長寿命化が図られました。 
    
  3)鋼材の薄手軽量化
 従来は、溶融亜鉛めっき鋼板を切断後または加工した後に端面に溶融亜鉛めっきを施す(いわゆる「後めっき」)ことが行われていましたが、厚めっき処理が必須となることから亜鉛が溶融する温度(450度)まで昇温するため、鋼材の熱変形が避けられず、鋼材の板厚を増す必要がありました。スーパーダイマ®は切断面への防食性が付与されており、後めっき処理が不要であるため、鋼材の熱変形を考慮する必要が無く、板厚のゲージダウンが可能であり、設計の最適化等、お客様でのコストダウンに寄与しております。
   
 スーパーダイマ®は、2000年の発売開始より、後めっき・後塗装代替やステンレス・アルミ代替として、これまでにプレハブ向けの住宅資材、各種フォーミング製品、防音壁等の土木建築用途を中心に電機・自動車向け用途も含めて幅広く使用されてきました。特に近年では、太陽光発電設備用架台向けの採用が拡大しております。
 また、高耐食性めっき鋼板の使用ニーズが高まりつつある現状を踏まえ、日本工業規格(以下、「JIS規格」)の新規制定に向け準備を行い、2012年11月にJIS規格として「溶融亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金めっき鋼板及び鋼帯 G3323」の公示に至りました。当社が開発したスーパーダイマ®は、G3323に適合する商品です。


写真:太陽光発電設備用架台に使用されたスーパーダイマ®


2.熱延ミル冷却帯内鋼板温度計による高精度冷却制御技術の開発
 (1)受賞者
  技術開発本部 プロセス研究所 上席主幹研究員 中川 繁政
  技術開発本部 プロセス研究所 主幹研究員   本田 達朗
  技術開発本部 プロセス研究所 主幹研究員   橘  久好
  技術開発本部 プロセス研究所 主幹研究員   植松 千尋
  技術総括部          主幹      武衛 康彦

 (2)開発の背景
 CO2削減等に資する鋼材重量の軽量化に向けて、高張力鋼板の需要は増大しております。こうした強度と加工性を備えた高張力鋼板を製造するにあたっては、金属組織の制御が必要であり、熱間圧延後の冷却工程において、従前よりも鋼板の温度降下履歴を緻密に管理することが求められていた。

 (3)開発の内容
 冷却工程での注水環境下においても鋼板温度を高精度に測温できる革新的な計測技術を開発致しました。また、開発した温度計を用いて鋼板の巻取時の温度(以下、巻取温度)をフィードフォワード制御する技術を開発致しました。加えて、鋼板の金属組織を制御するために、冷却帯内鋼板温度計測値を用いて、鋼板の冷却過程における急冷停止温度、中間空冷時間および巻取温度を同時に制御する冷却履歴制御を開発致しました。

 (4)熱延ミル冷却帯内鋼板温度計による高精度冷却制御技術の特徴・効果
  1)冷却工程での注水環境下における世界初の鋼板温度計測技術
 注水環境下において、高速搬送されている鋼板からの熱放射を検出するため、使用する波長や波長を検出する角度等の最適な測定方法を開発致しました。

  2)冷却制御技術
 今回開発した温度計を活用した冷却帯内測温値を用いて、鋼板の巻取温度を予測し、目標温度との差から温度計以降の冷却水量をフィードフォワード制御する巻取温度の制御技術を開発致しました。
 また、高張力鋼板の品質安定化に向けては、当該鋼板の金属組織の安定化も必要不可欠であり、冷却工程における鋼板の温度降下履歴を緻密に管理するべく、金属組織構成を決定する要素となる急冷停止温度、中間冷却時間、巻取温度を制御する技術を開発致しました。    


 開発した温度計を用いた巻取温度のフィードフォワード制御および冷却履歴制御の実用化により、金属組織を緻密に制御した付加価値の高い熱延鋼板の製造が可能となったことや、高張力鋼板の品質安定化も通して、鋼材の軽量化、当該鋼材を使用する最終製品(例:自動車等)の軽量化等によるCO2の削減が図られました。

図1:開発温度計の概要


図2:開発温度計を活用した冷却履歴制御


(お問い合わせ先)総務部広報センター TEL:03-6867-2146

以 上




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