コロンビアパビリオンに日本製鉄グループのテクノロジーが採用されました!

大阪・関西万博コロンビアパビリオンの構造躯体に当社GXスチール「NSCarbolex®Neutral(エヌエスカーボレックス ニュートラル)」を使用した「NS スーパーフレーム工法®」、内装材に高意匠性電気めっき鋼板「FeLuce®(フェルーチェ)」と「高意匠ブリキ」が採用されました。コロンビアパビリオンに込められた思いと当社テクノロジーを、建設の軌跡を追いながら紹介します。

高さ4.5 メートル、長さ28.2 メートル、幅18.2 メートルのシンプルなボックスの大空間が、さまざまな展示計画への対応を可能にした

Feluce®壁+高意匠ブリキのオブジェが上質な空間をつくり出している
短工期、ローコスト、リサイクル可能でサステナブルな建築を実現できました

大阪・関西万博開幕まであと1年を控えて
2024年3月、(株)MORF建築設計事務所の砂原カリムさんから、NSハイパーツ(株)の守沖敦さんに電話が入った。大阪・関西万博のパビリオン建設は、人手不足や建設資材高騰、入札不調などの影響による工期遅延が顕在化していたころだった。
「コロンビアパビリオン設計の入札に参加したいと考えていますが、非常に厳しい工期を考えるとNSスーパーフレーム工法でなければできません。ご協力いただけるでしょうか」
カリムさんは1980年レバノンで生まれ、2002年ベイルートの大学を卒業後に初来日。世界的建築家の磯崎新さんのアトリエに入り、建築家としてのキャリアをスタートし、2011年にMORF建築設計事務所を立ち上げた。これまで日本とエジプトの国際協力で設立されたエジプト日本科学技術大学など、グローバルなプロジェクトの建築設計に数多く携わってきた。万博パビリオンの建築設計は、ドバイ万博でのスシロー ドバイ万博店に続き、大阪・関西万博ではオーストリア、スイスの海外パビリオンをすでに手掛けていた。
カリムさんとは守沖さんが当社ドバイ事務所長のときの縁でつながった。その後、守沖さんはNSハイパーツ社長に就任し、2022年からNSスーパーフレーム工法による万博パビリオン設計の可能性について、カリムさんと議論を重ねてきたが、採用には至っていなかった。
カリムさんからの打診に守沖さんは「もちろんです。ご協力します」と自信を持って答えた。NSスーパーフレーム工法は薄板軽量形鋼造で当社グループが一体となって独自に進化させてきた。現在では4階建てまでの集合住宅や高齢者施設、3階建てまでの事務所や研修所、学校・保育園など、さまざまな用途の建築に活用されている。最大の特長である短工期については、東日本大震災の復興公営住宅で如何なく発揮され、着工後わずか5.5カ月で竣工し岩手県釜石市に引き渡した実績を誇っている。
2024年6月、MORF建築設計事務所はNSスーパーフレーム工法を採用した設計で、コロンビアパビリオンの競合コンペを勝ち取った。コロンビアは自らパビリオンを建設するタイプA方式を選択。アルゼンチンやメキシコが参加を辞退したなか、中南米唯一のタイプA参加国となった。
一夜城のようにでき上がった躯体
2024年9月、地上2階建て(展示室部吹き抜け構造)のパビリオン建設工事が始まった。ところが万博協会からの要請で、重機を使用した工事は10月末までに完了しなければならなかった。
「基礎工事を9月中に終えたあと、10月12~13日の2日間で72枚の壁パネルを組み立て、14~23日の10日間で32ユニットの屋根トラスを地上で連結して載せました。わずか12日間で躯体工事を完了したわけですが、一夜城のようにでき上がった躯体を目の当たりにした他の工事関係者は驚いていました。結局、他のパビリオンの工事は間に合わず、重機を用いた工事期間は延長されていました」(守沖さん)
NSスーパーフレーム工法は、主要構造部材の板厚が1.0~2.2ミリと非常に薄いことから躯体がとても軽い。そのため鋼管杭や地盤改良を伴わない浮き基礎工法を採用でき、基礎工事の現場作業を大幅に省力化した。浮き基礎工法は軟弱地盤への対応としても最適だった。さらに工場生産された壁パネルと屋根トラスを施工現場に持ち込み、主にドリルねじで接合組立することによって、高品質と現場での短工期を実現したのだ。
カーボンニュートラル社会の実現に貢献する工法と確信しています

猛暑でも快適な空間を実現
コロンビアパビリオンはさまざまな角度の多数の半透明キューブで構成されたファサードデザインが特徴的だ。ICE CUBE と呼ばれる半透明キューブは、ポリカーボネート板でつくられ、色彩をコントロールできるライトアップによって、いろいろな美しい表情を見せる。日中から夜間まで来訪者の目を楽しませてくれる。
「コロンビアを代表するノーベル文学賞作家のガブリエル・ガルシア=マルケスによる『百年の孤独』には、蜃気楼の村・マコンドで、生まれて初めて氷を目にした少年の姿が、マジックリアリズムと呼ばれる文学手法で鮮やかに描かれています。この印象的なシーンをコンセプトにデザインしてほしいと施主のプロコロンビア殿から要望を受け、ファサードを設計しました。大阪の夏は非常に暑い。来場者の皆さんがICE CUBEの氷の館に入って、さらに茹だるように暑かったら台無しです。NSスーパーフレーム工法の優れた断熱性能が活かされています」(カリムさん)
NSスーパーフレーム工法は、当社の高耐食めっき鋼板スーパーダイマ®を枠材とし、構造用面材をドリルねじで接合し、さらに板状の断熱材を組み合わせている。鋼の躯体を断熱材ですっぽりと覆う外張り断熱通気工法を標準採用しており、少ないエアコン稼働量でも、冬暖かく夏涼しい快適な空間を実現できる。コロンビアパビリオンでは屋根トラス上部の断熱材の厚さを90ミリとし、表層に輻射熱を反射するアルミ箔を貼ることで、万全の猛暑対策を講じた。
サステナブルな建築の未来を切り拓く
コロンビアパビリオンは着工から7カ月あまりで無事竣工、万博開幕の4月13日に開館セレモニーが華やかに行われた。美しすぎるパビリオン、エントランス部のコーヒーショップには行列必至など、来場者の評判は上々だ。カリムさんはコロンビアパビリオンの建築設計を振り返って次のように語る。
「物語を編むように創作したファサードデザインと、実務的な合理性と環境への配慮を追求した本体建物。この2つの異なる思想が組み合わさったコロンビアパビリオンは、さまざまな文化が交わる場としての万博の会場にふさわしい、印象に残る存在となりました。万博パビリオンの仮設建築物という特性から、短工期、ローコスト、リサイクル可能でサステナブルな建築を実現できました。
NSスーパーフレーム工法の特徴的な構造はさまざまな環境への適応性があり、万博会場を超えたより恒久的な利用へのシームレスな移行を可能にします。このパビリオンを存続させるための次なる旅路を定める話し合いが始まっています」
一方、守沖さんもNSスーパーフレーム工法のさらなる普及に向けた歩みを続けている。
「今回のコロンビアパビリオンでNSスーパーフレーム工法の認知度を高める絶好の機会となりました。施主や設計コンサル、元請け、株主フレーマーの皆さまに全面的な協力をいただきました。また、外装工事や屋根工事、部材手配なども各社様(※)に大変なお力添えをいただきました。誠にありがとうございました。
NSスーパーフレーム工法は画期的な省エネ性能により、改正建築物省エネ法に対応したZEH–M(ネット・ゼロ・エネルギー・マンション)適合集合住宅やZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)適合事務所を低コストで実現でき、カーボンニュートラル社会の実現に貢献する工法と確信しています。現在、都心部駅近の3~4階建て賃貸マンションへの普及に取り組んでいます。これからも人にも地球にもやさしく安全安心な住まいづくりに貢献していきます」
当社はNSスーパーフレーム工法、FeLuce、高意匠ブリキなど、社会におけるCO2排出量削減に寄与するNSCarbolex Neutralの普及を通じて、サステナブルな建築の未来を切り拓いていく。
- ※施主:プロコロンビア 設計コンサル:(株)MORF建築設計事務所元請け:阪根産業(株) 株主フレーマー:阿比野建設(株)、(株)カケフ住建、(株)興伸製作所、(株)紀洋 外装工事:ニチハ(株)屋根工事:三晃金属工業(株) 部材手配:日鉄物産(株)
コロンビアパビリオンができるまで/2024年9月~2025年4月
2024年



2025年



