溶接鋼構造物の疲労寿命を延伸する鋼板の発明について全国発明表彰「日本経済団体連合会会長発明賞」受賞

2012/06/19

  • 住友金属工業株式会社

 住友金属工業株式会社は、本日、「溶接鋼構造物の疲労寿命を延伸する鋼板の発明」について、公益社団法人発明協会による平成24年度全国発明表彰「日本経済団体連合会会長発明賞」を受賞しました。また、同時に当社代表取締役社長の友野宏が「発明実施功績賞」を受賞しました。

1.発明の概要
今回の発明は、適切な金属組織制御によって、溶接鋼構造物の疲労寿命を延伸できる鋼板に関する技術です。画期的な材料設計により、強度・靭性、溶接性などは従来鋼と同等以上に維持した上で、疲労き裂進展抵抗性を高めることで、従来鋼の2倍以上の疲労寿命を実現しました。さらに、厳密な鋼材の化学成分調整によって、溶接部における疲労強度の向上も達成しています。

2.発明の背景
①疲労き裂進展の抑制
鋼構造物は、長年にわたって繰り返し力を受けると疲労破壊する危険があります。疲労破壊は、最初に微細なき裂(疲労き裂)が発生し、次にそのき裂が広がっていく(進展)という経過をたどる現象です。従来は、鋼構造物の疲労設計は、疲労き裂の発生を防ぐという考え方で、研究開発がすすめられてきました。当社は、2001年、発生した疲労き裂の進展を抑制することで疲労破壊に耐えるという新しい設計思想に基づく厚鋼板FCA(Fatigue Crack Arresterの略)鋼を開発しました。


②溶接部の疲労き裂発生抑制
さらに、溶接部の疲労強度は、鋼板の強度にかかわらず一定であり、鋼板の材料設計で溶接部の疲労強度を上げることはできないと考えられてきました。そのため、溶接部の疲労強度を確保するため、板厚を厚くしたり、補強部材をつけたりで対応してきました。今回受賞した当社が開発した「FCA-W鋼」は、この常識を打ち破り、溶接部での疲労き裂発生をも防ぐ機能のある高張力厚鋼板です。

3.今後の展開
今回の発明に基づく「FCA-W鋼」は、既に橋梁や船に採用され、疲労寿命の延伸と軽量化を同時に達成しています。例えば造船用では、補強部材を使わずに適用部位の寿命を長くすることが可能であり、船体の軽量化による燃費向上に貢献しています。海洋構造物や建設機械など様々な溶接鋼構造物で採用が検討されています。「FCA-W鋼」を採用いただくことで、軽量化による省エネルギーや地球環境保全に役立つだけでなく、安全・安心な社会基盤の維持に寄与します。

 

4.授賞式概要
日時:2012年6月19日(火)15:10~16:10
場所:ホテルオークラ東京 別館2階「オーチャードルーム」

【発明実施功績賞】
住友金属工業株式会社 代表取締役社長 友野 宏

【日本経済団体連合会会長発明賞】
誉田 登  住友金属工業株式会社 総合技術研究所 厚板条鋼研究開発部 主任研究員
藤原 知哉 住友金属工業株式会社 総合技術研究所 厚板条鋼研究開発部 
厚板グループ グループ長
瀬田 一郎 住友金属テクノロジー株式会社 鹿島事業部 技術部 担当部長
有持 和茂 住友金属工業株式会社 総合技術研究所 厚板条鋼研究開発部 
シニア コンサルタント

※全国発明表彰とは・・・ 日本の科学技術の向上と産業の発展に寄与することを目的に、独創性に富む優れた発明を完成した方々、発明の実施化及び指導、奨励、育成に貢献した方々を称える制度。
http://koueki.jiii.or.jp/index.html      

 

以上



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