スズを添加した新耐食鋼の開発について
- 塩分に強い高張力厚鋼板 -

2011/05/20

  • 住友金属工業株式会社

 当社は、海辺や凍結防止剤が散布されるなどの高塩分環境での耐食性に優れた、スズ添加・新耐食高張力鋼を開発しました。この新耐食鋼を用いた橋梁は、塗替えまでの期間延長、塗替え作業軽減などの効果が期待されます。

1. 開発の背景
   
   鋼製の橋梁はさびを防ぐため塗装されるのが一般的です。高塩分環境では塗装キズ部や部材の鋭角部などからさびが広がりやすいため、定期的な塗替え補修が必要です。塗替えまでの期間延長や塗替え作業の軽減ができれば橋梁の維持管理コストを低減できます。
     
2. 開発鋼について
   
   当社は、高塩分環境での塗膜部の鋼材腐食のメカニズムを解明しました。それに基づき、鋼に微量のスズを添加すると高塩分環境での耐食性が著しく高まることを2002年に見いだしました。そして、塗替作業の際のさび除去が不充分な場合もスズ添加で耐食効果があることを明らかにし、強度や溶接性などの橋梁用鋼材基本性能(※)を従来鋼同等以上に満たし、同時に高い耐食性のある、今回のスズ添加・新耐食鋼を開発しました。
新耐食鋼のこの機能により、塗替えまでの期間の延長と塗替え作業の軽減が期待できます。
     
3. 今後の展開
     
   新耐食鋼は塗装無しでも高い耐食性があるので、無塗装橋梁で使うことも検討しています。
当社は、新耐食鋼で期待できる塗替え補修までの期間の延長や塗替え作業を簡素化についてさらに検討を進め、鋼製橋梁のライフサイクルコストの低減と、公共投資額の節減に貢献します。
   
  JIS規格および道路橋示方書(道路法と関係政令に基づき定められた、橋や高架の道路に要求される構造強度などの技術基準)に示された性能です。


<参考>新耐食鋼のさび進行抑制効果
   
 
 
40サイクル
80サイクル
120サイクル
従来鋼

(Sn添加)

新耐食鋼

図 さび進行抑制効果(加速試験における外観変化)の例
   
  塗装試験片(汎用エキポシ樹脂塗料180μm)に人工的にキズを付与し(クロスカット)、試験後、塗膜の剥離状況を確認するため、剥離塗膜を除去した状況
     
  ※加速試験: SAE J2334/飛来塩分が多い大気環境を模擬する加速試験。
  (参考文献)長野博夫、山下正人、内田仁:環境材料科学 P74 共立出版(2004.5).
 

80サイクルで汎用鋼が0.8~1mm程度腐食減肉する環境であり、80サイクルが宮古島海岸約2年の暴露に相当する厳しい環境



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