「高炉長寿命化技術の開発」に対して第57回「大河内記念生産賞」を受賞

2011/03/04

  • 住友金属工業株式会社

 当社は、本日、「高炉長寿命化技術の開発」について、財団法人大河内記念会より第57回「大河内記念生産賞」を受賞しました。従来ブラックボックスになっていた高炉の内部状況を独自開発のシミュレーション技術で定量的に把握し、それをもとにした操業・補修技術で、和歌山製鉄所 第4高炉連続稼働日数世界記録(27年4カ月:10,001日)を達成したことを評価いただきました。
今回の受賞で、当社主力製品のシームレスパイプ製造に関わる全ての工程(高炉・製鋼・製品ミル・製品)で、大河内賞を受賞したことになります。

1.開発の背景
高炉は製鉄所のシンボルともいえる重要な設備です。設備寿命に達した高炉を再稼働するための改修には長期の修理期間(2~4カ月)と多額の費用(約300億円)を必要とします。このため、高炉寿命の延長は重要課題です。
和歌山製鉄所第4高炉に火入れした1982年当時、高炉寿命は5~10年で、第4高炉の当初の計画寿命は7年でした。

2.開発の概要
当社は、1970年代前半から、当時ブラックボックスといわれていた高炉の炉内状況把握に取り組み、1991年以降、第4高炉の寿命を20年以上とするための数々の技術を開発しました。

  (1)高炉シミュレーション技術の開発
   高炉は高さ約100mの巨大な反応装置です。上部から鉄鉱石とコークスが装入され炉内を徐々に下降する一方、炉下部側面から約1,200℃の熱風が吹き込まれ上昇します。
その間、炉内では燃焼、還元といった化学反応や、熱伝導、溶解、流動といった物理現象が複雑に関係しながらバランスして溶銑が製造され、炉底から流れ出ます。
当社は、これらを定量的に解明するために3次元的に時々刻々と変化する炉内の温度、原料の反応・動き、溶銑・ガスの流動について、各々の数学的理論を組み合わせて実操業を精度よくあらわすシミュレーションモデルを世界に先駆けて開発しました。
   
  (2)ステーブ取り替え技術の開発
   高炉の炉体は3層構造になっています。外側から鉄皮、その内側にステーブ(鋳物製の炉体冷却装置)、さらにその内側に耐熱煉瓦という構造です。従来はステーブが損傷するとこれを補修することができず、高炉を吹き止めて改修するしかありませんでした。
定期修理時にステーブを交換する技術を開発したことで、ステーブの寿命は高炉の寿命ではなくなりました。
   
  (3)炉底煉瓦浸食抑制技術の開発
   高炉底部の煉瓦は、高温(約1,500℃)の溶銑やスラグで、時とともに徐々に浸食されます。これを取り替えるには吹き止め改修しか方法がありません。
溶銑やスラグの炉底での流れ方をコントロールするため、溶銑の流動性、炉内での原料の荷重バランスなどを調整して、炉底の耐熱煉瓦の浸食を抑制する技術を開発しました。

3.開発技術の成果
2009年7月に和歌山製鉄所 第4高炉は連続稼働日数世界記録を達成し、改修費用を削減しました。現在稼働中の和歌山製鉄所 第5高炉も、国内現役の高炉の中で最長寿命です。開発技術はその後の新設・改修高炉(鹿島製鉄所 第1・第3高炉、和歌山製鉄所 第1高炉)にも適用しています。
ステーブ取り替え技術については、国内外の鉄鋼他社にも技術供与し、他社高炉の寿命延長にも寄与しています。

以 上


<参 考>
1.大河内賞について
財団法人大河内記念会は、故大河内正敏博士の学界、産業界に残された功績を記念して、1954年(昭和29年)に設立され、その後今日まで、博士の遺志となった「生産のための科学技術の振興」を目的として、大河内賞による表彰事業等を実施しています。大河内賞は、毎年、各方面からの推薦に基づき、わが国の生産工学、生産技術の研究開発、および高度生産方式の実施等に関する顕著な功績を表彰するものです。

2.贈賞式について

  (1)日   時: 2011年3月4日(金)14:30~
  (2)場   所: 日本工業倶楽部会館 
  (3)主な出席者: 代表取締役社長  友野 宏
    常務執行役員   小坂 隆

(図) 当社 シームレスパイプ製造プロセスの大河内賞受賞
 

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