環境に優しい「プレス成形法による二重管式エキゾーストマニホールドの開発」で、財団法人素形材センター会長賞を受賞

2010/11/12

  • 株式会社住友金属直江津
    トヨタ自動車株式会社
    株式会社三五
    住友金属工業株式会社

 2010年11月12日(金)、株式会社住友金属直江津(以下、住金直江津)、トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ自動車)、株式会社三五(以下、三五)および住友金属工業株式会社(以下、住友金属)の4社は、『プレス成形法による二重管式エキゾーストマニホールドの開発』で、財団法人素形材センターから、第26回素形材産業技術賞の『財団法人素形材センター会長賞』を共同受賞しました。同賞は、東京都港区の機械振興会館大ホールで開催された「第16回素形材月間記念式典」の授賞式で、4社に授与されました。

1.受賞対象のエキゾーストマニホールド
今回の賞は、エキゾーストマニホールドと呼ばれる自動車の排気管部材に使われる新素材と、そのプレス加工技術を開発して、排気ガスの清浄化と部材の軽量化を実現したことに対して授与されました。
エキゾーストマニホールドは、自動車エンジンの複数の気筒から出た排気ガスをまとめ、触媒に送り込む部品です(図1)。管を二重にすることで高温の排気ガスの熱を遮る構造で、その内管が今回の開発品です(図2)。

 

図1:エキゾーストマニホールド搭載位置

 

(左)右記内包する

エキゾースト

マニホールド外観

(右)エキゾースト

マニホールド内管

(肉厚0.6mm)

  図2:開発品

2.開発の背景
気筒から出た排気ガスは、含まれる有害物質を無害化するために、触媒を通ります。触媒の無害化機能は、高温になった時のみ発揮されます。従い、エンジン始動時に排気ガスの熱で触媒が早く高温になることが排気ガス清浄化のために重要です。エキゾーストマニホールドを薄肉化すれば、途中で排気ガスから奪う熱を少なく(低熱容量化)して触媒の昇温スピードを上げ、排気ガスを清浄化できます。他方、エキゾーストマニホールドは高温の排気ガスに直接触れて800度以上の高温になります。つまり、エキゾーストマニホールド用の素材は薄肉でも優れた耐熱性をもつことが必要なのです。

3.開発の概要
住金直江津のもつ、耐熱性にすぐれた火力発電所用ステンレス鋼板「NAR-AH-4」は、トヨタ自動車と共同検討の結果、耐久性に問題ないことがわかりました。しかし「NAR-AH-4」は高強度で低延性、つまり延びが少ないため、プレス加工の際に、割れ、シワなどが生じやすく、実用化できませんでした。そこで、住友金属と住金直江津の数値解析技術(CAE)でプレス方向や最適余肉形状を検討、これと三五の技術的知見とを最適融合させ、「NAR-AH-4」でエキゾーストマニホールドをプレスできる加工条件を開発しました。
この結果、トヨタ自動車が設計した「高効率二重管式薄肉エキゾーストマニホールド」は、内管の肉厚を0.8mmから0.6mmにし、25%の低熱容量化と軽量化を達成しました。この結果、従来14%ニッケル含有素材から、11%の「NAR-AH-4」に切り替えたことも併せ、高価なニッケル使用量を約41%削減できました。この新型エキゾーストマニホールドはすでに市販自動車に搭載されはじめています。

4.今後の展開
排気ガスをクリーンにして、車を軽量化する「NAR-AH-4」製の「高効率二重管式薄肉エキゾーストマニホールド」の採用拡大を目指してまいります。

<参考>
1.素形材産業技術賞について

 素形材とは、金属などの素材を熱や力により加工した部品や部材のことです。素形材センターは、素形材についての試験・研究などを通じて、わが国の素形材産業の発展を図る目的で、1984年に設立された財団法人です。
素形材産業技術賞は、同センターが1985年度に創設した表彰制度です。素形材産業の振興のために、技術水準の進歩・向上に著しく貢献するような優秀な素形材産業技術(鋳造、鍛造、金属プレス、金型等)の開発者を表彰しています。

2.授賞式について

  (1) 日 時: 2010年11月12日(金)  14:00~18:00 於「第16回素形材月間記念式典」
  (2) 場 所: 機械振興会館(大ホール)(東京都港区芝公園)
  (3) 受賞者: 株式会社住友金属直江津 カスタマー技術部技術開発室 室長 渋谷 将行
      トヨタ自動車株式会社 第2技術本部第1エンジン技術部 主幹 若松 仁
      株式会社三五 執行役員 岡田 登
      住友金属工業株式会社 自動車技術部 参事 中澤 嘉明
         同       総合技術研究所鋼管研究開発部 グループ長 西山 佳孝
       
     

なお、受賞者のうち

 TMAP-EM(TOYOTA MOTOR ASIA PACIFIC ENGINEERING & MANUFACTURING CO.LTD.)

 技術開発部 マネージャー 五十嵐 昌夫
は現在勤務地海外のため欠席しました。

 
  表彰状を授与される住金直江津 渋谷室長
 
 

左から

住友金属工業株式会社  総合技術研究所鋼管研究開発部 グループ長 西山 佳孝

    同       自動車技術部 参事 中澤 嘉明

株式会社三五 執行役員 岡田 登

トヨタ自動車株式会社 第2技術本部第1エンジン技術部 主幹 若松 仁
株式会社住友金属直江津 カスタマー技術部技術開発室 室長 渋谷 将行

以 上


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