住友金属の鋼管皮膜処理技術が国際原子力機関より「ISOE技術賞」を受賞
原子力発電所作業員の放射線被ばく低減に貢献

2010/04/08

  • 住友金属工業株式会社

当社は、IAEA (国際原子力機関)とOECD/NEA(経済開発協力機構・原子力機関)が共同事務局として運営しているISOE委員会より、アジア地域のシンポジウムにおいて「TECHNICAL AWARD(技術賞)」を受賞しました。この賞は、原子力発電所で働いている作業員の被ばく量を減らすことに寄与した技術に対して授与される賞です。今回は、この技術を適用した原子力発電用の鋼管(給水加熱器用伝熱管)が世界で最も低い放射線量の原子力発電所の実現に寄与したことなどに対する受賞です。
なお、「ISOE TECHNICAL AWARD(技術賞)」を素材メーカーが受賞するのは初めてです。

1.開発の背景・概要
原子力発電は、 CO2 排出量削減の観点から注目が集まり、世界中で多くの原子力発電所が計画・建設されています。原子力発電が広く利用され、有効に活用されるためには、発電所で働いている作業員の放射線被ばく量の低減は大きなテーマのひとつです。ISOE委員会は、原子力発電所作業員の被ばくレベルを、自然界での被ばくに近いレベルまで引き下げることを目標としています。

原子力発電所で使われるステンレス鋼などの鋼管からは、原子炉の冷却材の水にごく微量のコバルトやクロムなどの金属イオンが溶出します。これら金属イオンは被ばく量を増加させることがあり、発電所メンテナンス作業時の被ばくの原因になる、という問題がありました。
従って、被ばく量の低減のためには、これら金属イオンの溶出を抑制することが必要になります。
当社は、コバルトを極少量に低減した素材を製造するとともに、鋼管の内側表面に、酸化皮膜を形成させ、コバルトやクロムなどの金属イオンの溶出を低減させる皮膜処理技術の開発に取り組み、世界で初めてこれに成功しました。

2.開発の成果
この技術は、世界で最も放射線量の少ない沸騰水型軽水炉(BWR)の原子力発電所で採用されており、原子力発電所作業員の被ばく量の減少に貢献しております。

3.今後の方針
当社は、今回受賞したBWR用の鋼管に加え、加圧水型軽水炉(PWR)の蒸気発生器用伝熱管(SG管)についても、本技術を適用して作業員の被ばく量を減少させることを目指してまいります。

以 上

<参 考>
1. IAEA
1953年米国アイゼンハワー大統領の国連総会演説を契機に、1957年原子力科学技術の平和的な利用と軍事目的への転用防止のために発足した国際機関です。
現在の主な事業は、次の通りです。
(1)原子力科学技術の平和利用の促進
(2)原子力設備、放射性物質や廃棄物のような有害な放射線被ばくから人体と環境を守るための施策
(3)世界各国と保障措置協定を結び、核兵器の拡散を阻止すること

2. OECD/NEA(経済開発協力機構/原子力機関)
OECDの専門機関として、加盟国が、原子力エネルギーと、安全で環境的にやさしく、かつ経済的に平和利用するために必要な科学的、技術的及び法的な基盤を維持・発展させることを支援するために、1958年に発足した組織です。主たる業務は、原子力安全と規制、原子力開発、放射性廃棄物、放射線防護や原子力科学に対する支援です。各国の規制方針の調整や、科学的・技術的な情報交換の促進を行っております。
現在OECD加盟国のほとんどである28カ国が加盟しております。

3. ISOE委員会
ISOE(職業被ばく情報システム:Information System on Occupational Exposure)委員会は、IAEA及びOECD/NEAが、原子力発電所に従事する作業員の放射線被ばく量を低減するために、各国の職業被ばく情報を交換、蓄積、解析することを目的として1992年に設立したものです。
  

<授与式後の記念撮影>

(右から3番目 常務執行役員 中西 廉平、4番目 第7代 ISOE議長 水町 渉氏)


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