エス・エス・シー九州に最新鋭テーラードブランク設備を導入
― 車体軽量化のための鋼板供給体制を加速 ―

2009/11/16

  • 住友金属工業株式会社

住友金属工業株式会社(以下 住友金属)が関包スチール株式会社(以下 関包スチール)と住友商事株式会社(以下 住友商事)、住金物産株式会社(以下 住金物産)と協力して運営する九州地区拠点コイルセンターであるエス・エス・シー九州株式会社(所在地:福岡県糟屋郡、以下KSSC)は、このたび最新鋭のテーラードブランク設備を導入し、10月1日より稼働を開始しました。テーラードブランク(*1)(Tailor Welded Blank 以下TWB)は、板厚や強度の異なる鋼板を溶接後プレス成形することにより、部位によって板厚や強度が異なる部材を製造して、軽量化やコスト削減を図る技術です。自動車の衝突安全性と車体の軽量化を両立させるためのキーテクノロジーの一つで、自動車各メーカーの、環境にやさしい自動車の開発のお役にたつ技術です。
今回、九州地区のKSSCで稼働開始したTWB設備は最新鋭のファイバーレーザー方式です。これで、住友金属と住友商事が運営するコイルセンターのTWB供給拠点は6ケ所となり、TWB供給能力は国内最大になりました。

1.住友金属のTWB技術

住友金属の溶接技術研究には長い伝統がありますが、TWB技術についても、国内では最も早く、1980年頃からトヨタ自動車株式会社殿と CO2 レーザー溶接(*2)に関する共同研究を開始し、研究所でも、マッシュシーム溶接、プラズマ溶接、各種レーザー溶接機を導入して研究を始めました。2000年にはグループ会社の住金プラント株式会社でTWB設備の製作・販売を始め、現在までに、11社向けに15機を納入しました。
溶接部近傍部位の微小引張・疲労試験による評価方式を開発し、得られたデータを用いた溶接継手のCAE(*3)を確立し、これをもとに、TWB製品に適する材料の組み合せや最適な溶接位置などの技術情報をお客様に提供しています。このように、住友金属はTWBに関して、お客様の製品設計段階から、材料選択、溶接条件を提案し、量産設備の提供とその操業品質(溶接、プレス)の確立まで、材料販売にとどまらず、ソリューションをもって総合的にお役にたてる体制を築いてきました。

2.KSSCの最新鋭TWB設備

これまで国内で導入された住友金属グループのTWB設備は、YAGレーザー溶接が主体でしたが、今回、初めてファイバーレーザー溶接機(発振機:出力4kw、IPG社製、設備:住金プラント株式会社)を導入しました。ファイバーレーザー溶接機は、光ファイバーからレーザーを発振させるタイプの最新式のレーザー溶接機です。住友金属は、2007年9月に鹿島製鉄所第二薄板工場で国内最大出力(10kw)でのファイバーレーザー溶接機を導入しており、実機でのノウハウを積み重ねています。今回、このノウハウに基づき、性能と品質の安定と、安価なランニングコストの実現を目指して、ファイバーレーザー溶接のTWB設備を導入しました。
KSSCのTWB材料は、主要なお客様であるトヨテツ福岡株式会社殿でプレス、組み立てられた後に、トヨタ自動車九州株式会社殿に順調に納入されております。

3.住友金属と住友商事のTWB供給体制

住友金属の薄板事業は、住友商事と協力して、「お客様評価No.1」を目指して、国内外各所にコイルセンター拠点を設け、きめ細かいデリバリーサービスに努めてきました。薄板事業最大の需要業界である自動車の車体軽量化と衝突安全性というご要望に応えるためには、ハイテンと普通鋼など、異なる鋼板を適材適所にオーダーメイドで組み合せることが可能なTWB技術が、今後ますます重要になると予想されます。
住友金属と住友商事は、国内の主要地域のコイルセンターにブランキング設備、TWB設備を配備してきました。現在国内では、KSSCを含めて6ヶ所になっています。九州地区では、2008年6月からTWB部品を生産開始した株式会社サミットスチール大分に続き、今回KSSCでも導入し、トヨタ自動車九州株式会社殿向け等、新たに九州地区でのTWB部品の量産体制が構築できました。

以 上

<KSSCの概要>
社名  : エス・エス・シー九州株式会社
加工能力: 10,000トン/月
売上高 : 21億円(09年3月期)
代表者 : 西野 隆夫 住友金属常務執行役員名古屋支社長
主要顧客: トヨテツ福岡株式会社殿、九州シロキ株式会社殿、株式会社フタバ伊万里殿 他
株主  : 株式会社エス・エス・シー70%、関包スチール25%、阪和興業株式会社5%
(※株式会社エス・エス・シーの株主:関包スチール51%、住友金属19%、住友商事15%、住金物産15%)

<用語解説>

*1 テーラードブランク・・・Tailor Welded Blank
板厚や強度の異なる材料を溶接した鋼板を、溶接後プレス成形することにより、部位によって板厚や強度が異なる部材を製造して、軽量化やコスト削減を図る技術です。

*2 レーザー溶接・・・Laser Welding
レーザー溶接は、集光された高エネルギー密度熱源のレーザービームを当ててその光エネルギーにより溶接部を加熱して行う溶接のことです。レーザー光源の種別によって、 CO2 レーザー溶接や、YAGレーザー溶接、ファイバーレーザー溶接などのレーザー溶接があります。(YAGは、Yttrium(イットリウム)、Aluminum(アルミニウム)、Garnet(ガーネット)の頭文字。)レーザー溶接は、a.必要な部位だけを加熱できるので、入熱量が少ない、b.高速で非常に深い溶け込み深さが得られる、c.溶接熱影響が非常に少ない、d.溶接変形が少ない、などの特徴があります。

*3 CAE・・・ Computer Aided Engineering
計算機を用いたシミュレーションにより、製品の設計などを支援する技術です。
数値解析とも呼ばれ、住友金属の最も得意とする要素技術の一つです。


<エス・エス・シー九州(福岡)のファイバーレーザーを用いた最新TWB設備>


<住友金属と住友商事の国内TWB供給体制>


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