マツダ株式会社並びに英蘭コーラス社との自動車衝突シミュレーション
における新解析技術開発の取り組みについて

2009/06/22

  • 住友金属工業株式会社

当社は、この度、新車開発の車体設計に要する時間を従来に比べ大幅に短縮することが可能な新しい自動車用のシミュレーション技術を、英蘭大手鉄鋼メーカーのコーラス社と共同で開発しました。本技術は、マツダ株式会社(以下、マツダ)殿との効果検証試験により、その有効性が実証され、同社より、設計・開発におけるコストの削減と工程の短縮に大きく貢献する技術であると認めました。                   

1.開発の経緯
安全で経済的な自動車の設計には、数値解析による衝突シミュレーションは、必要不可欠な技術です。材料の持つ特性は、プレスなど加工により変化しますが、従来の一般的な衝突シミュレーションは、加工前の材料特性を元に行われていました。そのため、例えばプレスによる材料の硬化や板厚の減少はシミュレーションに反映されていませんでした。また実際の部材の形状は、スプリングバック(*1)や熱変形によって設計時の理想形状とは完全に一致していないという問題点がありました。

このような理由から、シミュレーションにより得られた結果と実際に製作した部材による衝突試験の結果が異なり、設計や試作を何度もやり直す必要が生じ、結果として設計コストを押し上げる要因となっていました。さらに最近では、燃費向上のニーズから、高張力鋼板を使用し板厚を薄くした車体部材を採用して、車体の軽量化を図ることが一般的です。部材が薄い場合、板厚のわずかな変化も解析結果に大きな影響を与えることから、従来のシミュレーション方法では安定的に精度の高い結果を得ることが難しく、部材の設計や試作の回数は増加傾向にありました。

2.開発の内容
本技術は、加工前の材料特性を元に行っていた従来のシミュレーションに変え、加工に伴う材料特性、板厚、形状の変化も考慮に入れ、材料―加工―部材―衝突の車体製造に係るプロセス全体をシミュレートすることで、解析精度を大きく上げることが可能な画期的な技術です。このように板厚をはじめとする加工による変化がシミュレーションに反映されることで、板厚の薄い部材の解析もより正確に行うことが可能となります。

効果を実証するために、マツダ殿が本技術により設計した部材について、精度の高いシミュレーション実験が可能な落錘型試験装置(*2)を用いた比較検証試験を行い、本技術が有効であることが確認されました。

3.効果
車体設計工程が従来に比べ大幅に短縮可能となり、技術の有効性が認められたことから、本技術は今後、自動車の衝突シミュレーション解析のベース技術として、自動車の安全技術の向上と製造コストの削減に大きく貢献することが期待されます。

以 上

図 本開発技術の効果

<用語解説>
1.スプリングバック
スプリングバックとは、例えば板材をプレス加工した後、部材に残留した力によって弾性的に変形し、加工時の変形がわずかに戻る現象。

2.落錘型試験装置
自由落下により錘(おもり)を落として、供試材を実際に潰し、その衝突エネルギー吸収性能を評価する装置。実車衝突試験とは異なり、対象部材を固定して試験を行うことができるため、衝突特性に関してより詳細なデータを取得することが可能。


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