「超々臨界圧石炭火力発電を実現させたステンレスボイラーチューブの開発」に対して第55回「大河内記念生産特賞」を受賞

2009/03/11

  • 住友金属工業株式会社

当社は、本日、「超々臨界圧石炭火力発電を実現させたステンレスボイラーチューブの開発」について、財団法人大河内記念会より第55回「大河内記念生産特賞」を受賞しました。従来の超臨界圧発電から、超々臨界圧発電への約30年ぶりのブレークスルーを可能にした画期的鋼管を開発・実用化したことに対する受賞です。開発鋼管は世界中で標準的に採用され、火力発電の発電効率を大きく改善し、世界の CO2 排出量・石炭使用量の削減に貢献しています。

「大河内記念生産特賞」は、大河内記念生産賞の中でも、最高の栄誉で、事業体による優れた独創的研究であげられた産業上の特に顕著な業績に対して贈られる賞です。当社の「大河内記念生産特賞」受賞は2年ぶり3回目です。

1.開発の背景
世界の電力需要は中長期的に成長が見込まれますが、石炭火力発電は、電力需要を満たす、重要な手段のひとつです。省エネルギー、 CO2 排出量削減の観点から、石炭火力発電の高効率化は最大の課題です。発電の効率を上げるには、ボイラーで発生させる蒸気をより高温・高圧にすることが決め手になります。従来は蒸気温度566℃、圧力24.1MPaで代表される超臨界と呼ばれる条件で発電効率は41%程度でした。さらに高温高圧の超々臨界(Ultra Super Critical)と呼ばれる条件で、発電効率が約43%の超々臨界圧発電プラントを実現するためには、高温強度に加え、内面の水蒸気酸化および外面の高温腐食に対する耐食性の高いボイラーチューブが必要でした。

2.開発の概要
(1)革新的な鋼管材料のシリーズを開発 
従来の超臨界圧プラントで使用されてきた18%クロム含有鋼において、ニオブ炭化物を微細析出させる独自制御技術で結晶粒を微細化して、高強度・高耐食性を同時に実現しました。さらに、銅を添加する大幅な高強度化技術も開発し、世界最高強度の「新18%クロム含有鋼」の開発に成功しました。

また、硫黄分が多く腐食性が高い石炭でも使用できるようにするため、耐高温腐食性に優れる25%クロム含有鋼において、窒素・ニオブ活用による大幅な高強度化技術で、世界で初めてボイラーチューブとして使用できる「新25%クロム含有鋼」の開発に成功しました。 

こうしてシリーズ開発した鋼管材料は、長期にわたる実証試験で性能が確認された後、世界の規格に登録され、世界標準化を実現しました。

(2)量産技術の開発
製造技術面では、本鋼管材料はこれまでにない高温熱処理と高加工度冷間引抜き加工を必要とします。量産を可能にするために、熱処理炉の高性能化技術に加え、高能率高精度の熱処理技術を開発し、また、高品質高加工度の冷間引抜き加工技術も開発しました。

 これらの量産技術を導入したステンレスボイラーチューブ専用の新工場を、2007年、特殊管事業所(尼崎)に建設し、現在フル操業しています。 

3.開発の成果
開発されたボイラーチューブにより、超々臨界圧発電プラントが実現しました。開発鋼管の採用が決定した超々臨界圧ボイラーの基数は、日本で22基、世界で191基に達しており、世界の CO2 排出量・石炭使用量の削減に大きく貢献しています。

また、超々臨界圧発電用ステンレスボイラーチューブの需要は、ここ数年で急拡大し、当社の世界シェアは80%となっています。

以 上

 

<参 考>
1.大河内賞について
財団法人大河内記念会は、故大河内 正敏博士の学界、産業界に残された功績を記念して、1954年(昭和29年)に設立され、その後今日まで、博士の遺志となった「生産のための科学技術の振興」を目的として、大河内賞による表彰事業等を実施しています。大河内賞は、毎年、各方面からの推薦に基づき、わが国の生産工学、生産技術の研究開発、および高度生産方式の実施等に関する顕著な功績を表彰するものです。

2.贈賞式について
(1)日   時:2009年3月11日(水)14:30~
(2)場   所:日本工業倶楽部会館 
(3)主な出席者:代表取締役社長 友野  宏
取締役副社長  今井 康夫
  専務執行役員  高  隆夫
  常務執行役員  中西 廉平   


超々臨界圧発電用ステンレスボイラーチューブ


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