鋼・コンクリート合成構造のトンネル工事用セグメント
「サンドイッチ型合成セグメント」が小田急複々線工事の矩形トンネルに採用

2008/09/12

  • 住友金属工業株式会社

当社独自のトンネル工事用セグメント「サンドイッチ型合成セグメント」が、小田急複々線地下化工事の矩形トンネル(*1)に採用され、今般、セグメントの組立工事が完了しました。セグメントを用いた矩形トンネルとしては、世界最大級です。なお、本セグメントはシールド工事用セグメント(*2)として開発・商品化しましたが、本工事には推進工法(*3)が採用され、本セグメントも推進工法用セグメントとして使用されました。

1.「サンドイッチ型合成セグメント」の特徴
「サンドイッチ型合成セグメント」は、外面を鋼殻で覆い、その内部にコンクリートを充填し、鋼板とコンクリートを一体化した合成構造のセグメントです。本合成セグメントは、RCセグメントよりも、高剛性・高強度で、セグメント厚さを薄肉化(1/2~1/3)することができます。具体的には、


(1)矩形トンネルなど、曲げモーメント(曲げようとする力)が大きくなる断面でも、セグメントの厚さを大きくすることなくトンネルを構築することができます。
(2)セグメントの外面はすべて鋼板で覆われているため、セグメントにはクラック・角欠けの心配がなく止水性能に優れています。
(3)合成セグメントは変形時の吸収エネルギーがRCセグメントに比べ非常に大きく、耐震性に優れています。
(4)矩形トンネルの場合には、本体部だけでなく、セグメント同士をつなぐ継手にも大きな曲げモーメントが作用しますが、その継手のボルトに作用する引張力を溶接によってスムーズに本体の鋼殻部へ伝達できるので、高い継手耐力を得ることができます。

2.「サンドイッチ型合成セグメント」採用の背景
本工事では、トンネル幅は10mを超える空間が必要で、かつ周辺環境の制限(トンネルの勾配等)から、トンネル断面は矩形に限定されました。さらに、環状7号線道路直下のため、性能面に優れている「サンドイッチ型合成セグメント」が採用されました。

3.工事概要
(1)工事名:都市高速鉄道第9号線小田急電鉄小田原線(代々木上原駅~梅ヶ丘駅間) 連続立体交差事業および複々線化事業 
(2)工事場所:東京都世田谷区代田3丁目
(3)発注者:小田急電鉄株式会社
(4)施工者:鹿島建設(株)・(株)奥村・(株)フジタ建設共同企業体
(5)トンネル構築工事完了時期:2008年3月
(6)トンネルおよび合成セグメントの概要
トンネル形状:縦外径8,084mm×横外径10,575mm
(トンネル中央部に中柱を有する矩形断面)
セグメント厚:400mm
セグメント幅:1,500mm
セグメント組立延長:45m(30リング)

4.今後の展開
当社では、今後拡大する道路トンネルなどの大断面、矩形トンネル工事向けに「サンドイッチ型合成セグメント」を販売していく予定です。

<用語解説>

*1 矩形トンネル
四角い断面形状のトンネルをいいます。
地下トンネルの断面形状は、真円形のものが一般的です。これは真円形が最も力学的に安定しているためです。しかしながら、地下鉄など断面が大きい場合は、真円形でトンネルを構築するとトンネル上下の利用しない部分も掘削することになり、掘削量が多くなるなどの課題がありました。

*2 シールドトンネル工事用セグメント
地盤を掘削して造るトンネル工事は、現在、シールドマシンと呼ばれる掘削機を使用するシールド工事が主流となっています。セグメントはこのシールド工事に使用されます。シールド工事では、シールドマシンが掘削前進した後にセグメントをボルトで組み立てて(これを覆工といいます)、トンネルを掘り進めます。このようにして完成した後は、セグメントがトンネルの壁となります。従って、セグメントには強度、寸法精度、止水性能が要求されます。
シールドトンネル工事用セグメントとしては構造別に、合成セグメント、鋼製セグメント、コンクリート中詰め鋼製セグメント、RCセグメントがあります。(以下の比較表を参照)

*3 推進工法
トンネルの両端に発進立坑と到達立坑を設け、推進設備を備えた発進立坑から油圧ジャッキにより掘進機を地中に押し出し、掘進機の後続に既製の管(本工事ではセグメント)を順次継ぎ足し、推進することによってトンネルを構築する工法です。

小田急複々線工事の矩形トンネルに採用された「サンドイッチ型合成セグメント」
小田急複々線工事の矩形トンネルに採用された「サンドイッチ型合成セグメント」

以 上


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