「コンクリート中詰め鋼製セグメント」が上野地下歩道の複合円形トンネル工事に採用

2008/08/25

  • 住友金属工業株式会社

当社製のシールドトンネル工事用セグメント(*1)「コンクリート中詰め鋼製セグメント」が、上野地下歩行者専用道工事の複合円形断面トンネル(*2)工事に採用され、今般、セグメントの組立工事が完了しました。なお、大型の複合円形断面トンネルで「コンクリート中詰め鋼製セグメント」が採用されるのは世界初となります。 

1.「コンクリート中詰め鋼製セグメント」の特徴
「コンクリート中詰め鋼製セグメント」は、二次覆工省略(*3)を目的として開発されました。セグメントの外面5面を鋼殻で形成し、その内部にコンクリートを充填した構造で、トンネル内空側はコンクリートがむきだしとなります。鋼殻とコンクリートの複合構造とすることで、


(1)複合円形トンネルなど、曲げモーメント(曲げようとする力)が大きくなる断面でも鋼材を主構造部材として設計するため、安全なトンネルを構築することができます。
(2)特にトンネルに開口部などを設ける場合には、補強には鋼材を用いることで、容易にできます。
(3)コンクリートがむきだしなのは1面だけで角は鋼材で保護されており、セグメントの角欠けの心配がなく、止水性能に優れます。

2.「コンクリート中詰め鋼製セグメント」採用の背景
本工事は、上野地区の既存地下通路と都営大江戸線のコンコースを結ぶものです。本工事では、トンネルの断面は複合円形で、さらに、エレベーター、エスカレーターなどの開口部が必要であったため、セグメントは、性能面に優れた「コンクリート中詰め鋼製セグメント」が採用されました。

 
3.工事概要
(1)工事名:上野地下歩行者専用道工事(単独部)建設一工区土木工事 
(2)工事場所:東京都台東区上野2丁目
(3)事業者:東京都
(4)発注者:東京地下鉄株式会社
(5)施工者:鹿島・戸田建設工事共同企業体
(6)工期:2009年3月

4.今後の展開
当社では、「コンクリート中詰め鋼製セグメント」を下水道、鉄道、共同溝、道路トンネルなど、幅広い用途で販売していく予定です。

  
<用語解説>

*1 シールドトンネル工事用セグメント
地盤を掘削して造るトンネル工事は、現在、シールドマシンと呼ばれる掘削機を使用するシールド工事が主流となっています。セグメントはこのシールド工事に使用されます。シールド工事では、シールドマシンが掘削前進した後にセグメントをボルトで組み立てて(これを覆工といいます)、トンネルを掘り進めます。このようにして完成した後は、セグメントがトンネルの壁となります。従って、セグメントには強度、寸法精度、止水性能が要求されます。シールドトンネル工事用セグメントとしては構造別に、合成セグメント、鋼製セグメント、コンクリート中詰め鋼製セグメント、RCセグメントがあります。(以下の比較表を参照)

*2 複合円形断面トンネル
複数の曲率を有する、円を上下から押しつぶしたような断面形状のトンネルをいいます。地下トンネルの断面形状は、真円形のものが一般的です。これは真円形が最も力学的に安定しているためです。しかしながら、地下鉄など断面が大きい場合は、真円形でトンネルを構築するとトンネル上下の利用しない部分も掘削することになり、掘削量が多くなるなどの課題がありました。

*3 二次覆工省略  
シールドトンネル工事では、これまでは一次覆工にセグメントを使用し、さらにその内空面に二次覆工(通常は現場打ちコンクリート)を施工していました。最近は建設コストの削減などの理由で、二次覆工を省略する傾向にあり、鋼製セグメントで設計する場合は、工場であらかじめコンクリートを内面に打設した「コンクリート中詰め鋼製セグメント」が多く用いられています。

シールドトンネル工事用セグメントの構造別比較表


上野地下歩道のトンネル工事に採用された「コンクリート中詰め鋼製セグメント」

以 上


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