「超高強度耐サワー低合金油井管の発明」について全国発明表彰「恩賜発明賞」を受賞

2008/06/17

  • 住友金属工業株式会社

当社は、本日、「超高強度耐サワー低合金油井管の発明」について、社団法人発明協会による全国発明表彰の中で最高位の「恩賜発明賞」を「発明実施功績賞」と併せて受賞しました。「恩賜発明賞」の受賞は当社としては初めて、また鉄鋼業界としても約20年ぶりとなります。本発明品は、 CO2 発生量が少ないクリーンエネルギーである天然ガスの安定供給に寄与することで、気候変動防止に貢献しています。

1.本発明の概要
本発明は、これまでにない強度と耐食性を兼ね備えた、石油・天然ガス採掘用鋼管に関する発明です。

CO2 排出量削減の要請から、世界のエネルギー需要は石油から天然ガスへ移行する傾向にあります。天然ガスは石油に比べて地下数千メートルの高深度で、かつ腐食性の強い硫化水素(H2S)を含んだ非常に厳しい井戸環境(サワー環境)に存在します。そこで使用される油井管には、鋼管の自重と地層の圧力に耐える強度と耐食性の両立が要求されます。

しかしながら、サワー環境では硫化物応力割れ(*1)と呼ばれる腐食に起因した高強度鋼の脆性破壊(*2)が起こるため、従来鋼では高強度と耐食性の両立が困難で、耐サワー油井管の最高強度は110ksi(*3)級(降伏強さ758MPa級)とされてきました。

本発明では、硫化物応力割れが、鋼の中に含まれる不純物(介在物)(*4)を起点に発生することを明らかにし、介在物を微細分散させることで硫化物応力割れを防止することに成功しました。本発明技術を活用した油井管は、BP社(イギリス)、StatoilHydro社(ノルウェー)との共同研究を通じて、両社の認定を取得し、2003年に世界で初めて最高強度125ksi級(降伏強さ862MPa級)の耐サワー油井管として北海油田で実用化しました。これにより従来不可能とされていた4~6千メートル級の高深度・高耐食性の天然ガス井戸開発が可能となりました。

この結果、本発明品は、 CO2 発生量が少ないクリーンエネルギーである天然ガスの安定供給に寄与することで、気候変動防止に貢献しています。

2.受賞者
「恩賜発明賞」   当社 総合技術研究所 主任研究員 大村 朋彦 
「発明実施功績賞」 当社 代表取締役社長 友野 宏 

3.表彰式
(1)日時:2008年6月17日(火)15:00 ~ 16:00
(2)場所:ホテルオークラ 別館2階「オーチャードルーム」

<参考>全国発明表彰について(出所:社団法人発明協会ホームページ)
全国発明表彰は、大正8年の第1回帝国発明表彰開催に始まり、文部科学省、経済産業省、特許庁、日本経済団体連合会、日本商工会議所、日本弁理士会、朝日新聞社の後援により優れた発明を完成した人、実施化に尽力した人、発明の指導・奨励・育成に貢献した人を顕彰することにより発明の奨励・育成を図り、わが国科学技術の向上と産業の振興に寄与することを目的としています。特に、皇室の発明奨励に対する特別の思召により毎年御下賜金を拝受し、最も優れた発明の完成者に「恩賜発明賞」を贈呈しています。

<用語解説>
*1 硫化物応力割れ:
H2Sが鋼中への水素侵入を促進して起こる水素脆性破壊。
*2 脆性破壊:
水素が侵入することによる脆化。
*3 ksi:
kilo pound per square inch (キロポンド パー スクエアインチ)。鋼の強度を示す単位。
1ksi=約0.7kg/mm2
*4 介在物:
製鋼段階で生じる酸化物、窒化物などで、鋼中に残留するもの。鋼の靭性などの性質に大きく影響する。


常陸宮殿下より恩賜発明賞を授与される総合技術研究所 大村主任研究員



左から 高専務 友野社長 大村主任研究員夫妻 今井副社長

以 上


このページの上部へ

ここからフッター情報です