世界初 X100超高強度ラインパイプの高速亀裂伝播停止実験の成功について

2008/04/21

  • 住友金属工業株式会社

当社はこのたび、イタリアのサルディニア島で、X100(*1)超高強度大径溶接鋼管について実スケールでの高速亀裂伝播停止実験を実施し、世界で初めて成功しました。この実験により当社開発の鋼管亀裂伝播シミュレーションモデルの正しさと、当社のラインパイプ用大径溶接鋼管に関する研究レベルの高さが実証されました。天然ガスは二酸化炭素の発生量の少ないクリーンエネルギーですが、当社は次世代の天然ガス高圧輸送用大径溶接鋼管としてX100超高強度ラインパイプの開発を進めています。今回の実験の成功により、当社のX100天然ガス高圧高効率輸送用ラインパイプの信頼性とシミュレーション技術の高さが世界に認められることになりました。

1.従来の高速亀裂伝播停止実験
天然ガスパイプラインは、高圧がかかった状態で亀裂が発生すると、管の長手方向に亀裂が高速で伝播する(伝わり、広がる)性質があります。万が一、亀裂が長距離にわたって広がり、大量の天然ガスが漏れた場合、大きな事故につながる恐れがあります。この高速亀裂伝播を防ぐ性能をもった鋼管(ラインパイプ)を採用することでパイプラインの安全性と信頼性を確保する必要があります。 亀裂の伝播を防ぐには鋼管の靭性(材料のねばり強さ)がポイントです。従来の実験方法は、靭性の低い(亀裂が伝わりやすい)鋼管に、次第に靭性の高い(亀裂が伝わりにくい)鋼管をいくつも繋げ、靭性の低い鋼管から亀裂を伝播させていき、亀裂の停止した鋼管の靭性値から、停止に必要な靭性を求めてきました。この方法ではX100の採用が必要となる20MPa以上の高圧では亀裂の伝播停止が起こらず、必要な靭性を求めることができませんでした。

2.今回開発したシミュレーションモデルと実験方法
当社はこのたび、20MPa以上の高圧下でも亀裂がどこまで広がるかを予測できるシミュレーションモデルを独自開発しました。これをもとに、一定の靭性値を持った鋼管を配列し、停止距離を求める実験方法を初めて採用しました。

3.実験概要
(1)実験日:2008年3月12日
(2)場所:イタリア・サルディニア島 CSM(*2)の実験場  
(3)実験条件
a 試験管製造場所:当社鹿島製鉄所
b 試験管全長:約300m
c 外径/板厚:914mm(36インチ)/19.05mm
d ガス温度:10℃
e ガス圧:22MPa
(4)実験結果
亀裂を発生させた箇所から左右に約8~10mで亀裂は停止し、シミュレーションモデルによる予測値と極めて高い精度で一致しました。(図参照)

4.実験成功の成果
X100超高強度ラインパイプは、20MPa以上の超高圧天然ガスパイプラインに使用した場合、万が一、何らかの原因で亀裂が発生しても伝播を停止できることが実証されました。有力なお客様が実験に立会い、結果を現地で確認しました。天然ガス利用の拡大に大きく寄与するものと期待されます。また、停止距離が予測値と極めて高い精度で一致したことは、当社独自のシミュレーションモデルの高い予測性を示しており、当社の研究の独自性と対応力が世界にあらためて認められる機会となりました。

5.今後の展開
当社は、さらに異なる外径や板厚、ガス条件についての実験を行い、X100超高強度ラインパイプの適用可能範囲を拡大できるように、お客様に対して実証データの提供に努めていきます。

<用語注釈>
*1 X100:降伏強度が平方インチ当り100キロポンド以上の鋼管
*2 CSM :イタリアの第三者研究機関。Centro Sviluppo Materiali S.p.A.の略称。

図 今回の実験での亀裂伝播停止結果とシミュレーションモデル予測値


以 上


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