「高効率モータ用無方向性電磁鋼板の開発」について文部科学大臣表彰 科学技術賞を受賞

2008/04/15

  • 住友金属工業株式会社

当社は、4月15日に「高効率モータ用無方向性電磁鋼板(*1)の開発」について、文部科学省から、平成20年度科学技術分野の文部科学大臣表彰(*2) 科学技術賞開発部門を受賞しました。

1.受賞対象
「省エネルギー」「トルクの強化」「モータの小型化」など、要求の厳しい高効率モータの鉄心材料として開発した、優れた磁気特性を有する無方向性電磁鋼板に対するものです。

2.開発内容
(1)背景と評価されたポイント
近年、気候変動が進む中、ハイブリッド車の駆動モータやエアコンの圧縮機モータ(*3)は、省エネルギーを実現する高いモータ効率と、よりコンパクトに搭載できるよう小型でかつ十分なトルクを出すことが強く要求されています。 当社の開発した無方向性電磁鋼板は、モータ設計において「省エネルギー」「トルクの強化」「モータの小型化」を高いレベルで実現させることが可能であり、その点が高く評価されました。

(2)開発に当たっての課題
高効率モータを開発するに当たって、省エネルギーを達成するには、鉄心材料である電磁鋼板に磁気が流れる際に発生するロス(鉄損)を低くする必要があります。 一方、トルクを強くし、モータを小型化するには、電磁鋼板の磁力(磁束密度)を高める必要があります。従って、高効率モータを開発するには、低鉄損と高磁束密度を高いレベルで両立させることが課題になります。

(3)低鉄損と高磁束密度の両立
鉄損とは、モータが電気エネルギーを動力に変える際に発生するロスを指します。このロスは熱として消費され、モータの駆動効率を低下させる原因になります。この鉄損を低くするには板厚を薄くすることが有効です。 一方、磁束密度とは磁力の強さを指します。トルクを強めるには磁束密度を高める必要があり、鋼板の結晶の配列を制御することが有効です。しかし、鉄損を低くするために板厚を薄くすると結晶の配列の制御が困難になり磁束密度が低下し、モータの小型化は難しくなります。 そこで当社は、相反する条件である低鉄損と高磁束密度を高いレベルで両立させるために、鋼板のリンの量を増やし、当社独自の焼鈍設備を活用することにより、鋼板の結晶の配列を制御し、板厚を薄くしても磁束密度の低下を抑制できる技術を世界で初めて確立しました。 その結果、低鉄損と高磁束密度を高次元で両立した、従来にない無方向性電磁鋼板の開発に成功しました。

3.今後の展開
モータに対する要求が年々厳しくなる中、当社の開発した無方向性電磁鋼板の適用は拡大しており、一昨年には社団法人日本金属学会から技術開発賞を、昨年には財団法人新技術開発財団から市村産業賞貢献賞を受賞するなど、各方面から高く評価されています。引き続き、この技術を広く展開し、製品のラインナップを強化することで、様々なお客様ニーズにお応えするとともに、気候変動の抑制にも貢献します。

<用語解説>

*1 電磁鋼板:
電磁石の鉄心の材料となる鋼板のことで、方向性と無方向性の2種類があります。
方向性電磁鋼板は、特定の方向の磁気特性に優れていますが、他の方向の磁気特性は劣っています。そのため磁気の方向が特定されている変圧器の鉄心の使用に適しています。
一方、無方向性電磁鋼板は、特定の方向の磁気特性は方向性電磁鋼板に比べて劣りますが、方向に関係なく全方位的な磁気特性に優れています。このため、モータの鉄心材料のように磁気の方向が一定でない場合の使用に適しています。今回当社が開発した電磁鋼板はこの無方向性電磁鋼板です。

*2 文部科学大臣表彰:
文部科学省のホームページに掲載された科学技術分野の文部科学大臣表彰の趣旨と科学技術賞開発部門の説明を下記に引用します。
[表彰の趣旨]
文部科学省では、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者について、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、もって我が国の科学技術水準の向上に寄与することを目的とする科学技術分野の文部科学大臣表彰を定めている。
[科学技術賞 開発部門の説明]
本部門は、我が国の社会経済、国民生活の発展向上に寄与し、実際に利活用されている画期的な研究開発若しくは発明を行った者を対象とする。

*3 圧縮機モータ:
圧縮機は、圧力容器の中にモータが組み込まれた構造をしており、エアコンの中を流れる冷媒を圧縮して循環させる重要部品です。エアコンの消費電力の大半は圧縮機モータが占めており、このモータの省エネルギーは重要な課題となっています。

左から、
和歌山製鉄所 薄板生産技術部 中山参事
総合技術研究所 薄板研究開発部 田中副主任研究員
総合技術研究所 薄板研究開発部 屋敷部長研究員

以 上


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