(社)日本金属学会技術開発賞のダブル受賞について

2007/09/19

  • 住友金属工業株式会社
  • 株式会社住友金属小倉

住友金属工業株式会社(以下 住友金属)および株式会社住友金属小倉(以下 住金小倉)は、本日、社団法人日本金属学会より、「高効率火力発電伝熱管用高強度ステンレス鋼管SUPER304H(火SUS304J1HTB(*1))の開発」(住友金属)、「高強度熱間鍛造クラッキングコンロッド用鋼の開発」(住友金属および住金小倉)について、住友金属グループとして、第30回技術開発賞(*2)をダブル受賞しました。なお、後者については、株式会社本田技術研究所殿との共同受賞です。

1. 受賞内容
(1)「高効率火力発電伝熱管*3用高強度ステンレス鋼管SUPER304H(火SUS304J1HTB)の開発」
1) 開発の背景
急激に電力需要が増えている中国では、都市部で環境汚染が深刻化し、また、欧米では、大容量発電とCO2排出削減を両立できる経済性の高い発電プラントが求められ、両地域とも高効率の石炭焚き超々臨界圧発電ボイラ(*4)(以下 USCボイラ)の建設が急務となっています。また、それに使用される高強度ボイラ用鋼管の需要も急激に増えています。
2) 開発の特長および効果
高強度ボイラ用鋼管として開発されたSUPER304Hは、モリブデンなどと比べて安価な銅(Cu)をニオブ(Nb)や窒素(N)と最適量で添加することにより、経済性を考慮しながら18-8系ステンレス鋼として世界最高のクリープ強度(*5)と、靭性などの良好な機械的特性を達成しました。
現在、国内外の規格化が完了し、国内の大半のUSCボイラに使用されています。また、今後一層の増加が見込まれている世界のUSCボイラにも広く採用されることが決まっており、環境対策としての CO2 排出削減と世界の電力需要増大への対応に大きく貢献をしています。

(2)「高強度熱間鍛造クラッキングコンロッド(*6)用鋼の開発」
1) 開発の背景
これまで欧米などで実用化されていた粉末焼結材や高炭素鋼のクラッキングコンロッドは、疲労強度や加工性などに問題があるため国内では余り普及しておらず、これらの問題を克服できる高疲労強度の熱間鍛造クラッキングコンロッド用材料の開発が期待されていました。
2) 開発の特長および効果
開発された材料は、炭素の含有量を調節するとともに、バナジウム(V)やチタン(Ti)といった特殊元素を複合添加し、「析出」という強化手法を活用することで、高い疲労強度が得られるようになりました。これにより、本材料を使用したクラッキングコンロッドは、従来鋼と比べて30%の疲労強度向上、13%の軽量化を図ることができ、既に2004年から「レジェンド」「シビック」などの市販車に搭載されています。また鉛を全く使用していない面からも、環境負荷低減に貢献をしています。

住友金属と住金小倉は、地球環境に配慮をしながら、強いところをより強く、技術の開発と実用化研究を進めていきます。

<注釈>
*1 火SUS304J1HTB
SUPER304Hの日本の火力技術基準による規格名。

*2 (社)日本金属学会技術開発賞
(社)日本金属学会の会報誌より以下の通り抜粋。
[本賞の趣旨]
本会は、創意あふれる開発研究を推奨する目的で、金属工業ならびにこれに関連する新技術・新製品などの独創的な技術開発に携わった技術者に対し、本賞を授賞するものである。

*3 伝熱管
熱交換を行う鋼管のこと。発電プラントではボイラで石炭等の燃料を燃焼させて、伝熱管内の水を高温・高圧の蒸気に変換し、この蒸気のエネルギーで発電機のタービンを回転させて発電を行います。

*4 超々臨界圧発電ボイラ
蒸気温度538~566℃かつ蒸気圧力24MPa程度という超臨界をさらに上回る蒸気条件下で発電するボイラ。

*5 クリープ強度
クリープとは、室温下では通常塑性変形が生じないような低荷重(応力)でも、高温で時間の進行とともに徐々に塑性変形が生じる現象です。クリープ強度が高いほど高温で長時間使用しても塑性変形や破壊が起こりにくくなります。クリープ強度は、ボイラ用鋼管など高温で使用される構造部材にとって、プラントの設計を支配する重要な特性です。

*6 クラッキングコンロッド
コンロッドとは、自動車エンジン内部でピストンとクランクシャフトを連結する部品であり、ロッドとキャップから構成されます。 クラッキングとは、コンロッド全体を製造した後で、ロッドとキャップに破断分割する製造方法のことで、 従来のロッドとキャップを別々に製造する方法と比較すると、クラッキング採用により、熱間鍛造・機械加工等で大幅なコストダウンを達成することができます。

火力発電ボイラ用の伝熱管

従来コンロッドと開発クラッキングコンロッド

贈呈式後の受賞関係者

以 上


このページの上部へ

ここからフッター情報です