「鋼の高速連続鋳造用モールドフラックスの発明」について(社)発明協会から全国発明表彰発明賞を受賞

2007/06/16

  • 住友金属工業株式会社

当社は本日、「鋼の高速連続鋳造用モールドフラックスの発明」について、(社)発明協会から、平成19年度全国発明表彰(*1)発明賞を受賞しました。

1.受賞対象
連続鋳造の難度が高い高強度鋼板用母材(スラブ)の、品質及び生産性向上に大きく貢献するモールドフラックスの発明に対するものです。

2.開発の背景
(1)連続鋳造とモールドフラックスの役割
近年、薄板や厚板では、鋼板の高強度化(ハイテン化)ニーズが高まっていますが、スラブの品質は製品の品質に直結するため、スラブの造り込みは非常に重要な工程となります。スラブは、溶鋼を連続鋳造機の鋳型に流し込み、外側から冷却することで固まった凝固部分(凝固殻)を連続的に鋳型の下方向に引き抜くことで製造されます。その際、鋳型と凝固殻との間の潤滑性を維持するために使用するのがモールドフラックスです。鋳型内の溶鋼表面へ散布されたモールドフラックスは、溶鋼の熱によって溶けた後、鋳型と凝固殻との間に入り込み、フィルム(フラックスフィルム)に変化します。このフィルムが引き抜きの摩擦を低減します。


(2)課題
高強度鋼板用の鋼の場合、元々、鋳型内における凝固殻の厚みが不均一になりやすい傾向(不均一凝固)があり、一般鋼と同等の速度で連続鋳造すると、

 凝固殻の薄く弱い部分に割れや疵(品質面での欠陥)が生じます。よって安定した品質を得るためには、一般鋼よりも遅い生産速度にならざるを得ませんでした。

(3)発明品のポイントと成果
1)ポイント:断熱効果の強化
今回、発明したモールドフラックスの最大の特徴は、フラックスの従来の役割である潤滑機能に加えて、フラックスフィルムの結晶化を最大限に促進することで断熱効果(*2)を強化し、凝固殻内外の温度差(温度勾配)を小さくすることで、凝固殻の均一な厚みを得る点にあります。

   2)成果:高強度鋼板用スラブの品質及び生産性の向上
2001年の実用化以降、薄板や厚板の疵等による不良品が減少し、凝固殻の割れに起因するブレイクアウト(*3)は1件も発生していません。
当社総合技術研究所の試験機(中厚スラブ連続鋳造機)において、高強度鋼板用スラブの鋳造速度としては世界最高となる5m/分を記録しました。


3.今後の展開
鋼板のハイテン化ニーズが高まる中、スラブからの造り込みは非常に重要になっています。今回の発明は、当社が得意とするエネルギー・自動車分野において、製品のハイエンド化を進める上で、品質及び生産性の面で大きく貢献しています。当社は今後もお客様へ、より高品質な製品の安定供給に向けて一層努力します。

<用語解説>

*1 全国発明表彰
(社)発明協会の募集要項に掲載された表彰の主旨を下記に引用します。
【表彰の主旨】
皇室より毎年御下賜金を拝受し、我が国における発明、考案又は意匠の創作者並びに発明の実施及び奨励に関し、功績のあった方々を顕彰することにより、科学技術の向上及び産業の発展に寄与することを目的として行っているものです。

*2 断熱効果
今回の発明品は、従来品よりもフラックスフィルムの結晶化が速く、また多量の結晶が晶出します。これによりフィルムが不透明になり輻射(放射)による伝熱が抑制され、またフィルム表面の粗度(粗さ)が増大し、凝固殻表面との間に空間(エアギャップ)が発生することで、凝固殻からの熱放出が緩やかになります。

*3 ブレイクアウト
連続鋳造中、凝固殻の薄い部分の割れが開口し、内部の溶鋼が漏れる操業上の事故です。この事故が発生すると、連続鋳造機の復旧作業に1日かかる場合もありますので、生産性に多大なロスを与えます。

以 上


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