シームレスパイプを中心とした戦略による当社和歌山の再生について
-第53回大河内記念生産特賞受賞「高品質・高効率・低環境負荷を同時実現する次世代製鋼プロセスの開発」-

2007/03/13

  • 住友金属工業株式会社

当社は、本日、和歌山製鉄所新製鋼工場において実用化した「高品質・高効率・低環境負荷を同時実現する次世代製鋼プロセスの開発」について、財団法人大河内記念会より、第53回大河内記念生産特賞を受賞しました。本日受賞した新製鋼工場の技術は、下工程のシームレスパイプ工場とあわせ、当社和歌山製鉄所の復活再生において、中核的な役割を果たしています。

1.開発の経緯

1990年代には、日本鉄鋼業は数量面、収益面で危機的な状況に陥りました。当社は、すでにエネルギー分野でのシームレスパイプ需要の高度化を予測し、1980年より製鋼、製管両面での技術開発を行ってきました。当社は1990年後半のもっとも厳しい時期に1300億円を投資し、和歌山製鉄所に新シームレスミルと新製鋼工場を建設いたしました。現在、エネルギー需要が増大する中、世界の大規模な石油・天然ガス開発プロジェクトを可能ならしめる高級シームレスパイプを世界トップレベルの生産性で安定的に供給できることになり、世界のエネルギー開発に貢献し、当社の過去最高収益を支え、和歌山製鉄所の再生を果たしました。

2.開発の内容
(1)新シームレスミル/新丸ビレット連続鋳造機(2003年大河内記念生産賞受賞)
従来不可能とされていた連続鋳造、圧延、熱処理の直結と圧延ラインのコンパクト化技術を開発し、世界最大径・高効率のマンドレルミルラインを実現しました。

 一番の特徴は、鋳造された丸棒状の鋼に孔をあけながらパイプに圧延するピアサと呼ばれる穿孔機で、ロール軸に交叉角20°を付けることにより、拡管穿孔すなわち穿孔外径をビレット外径より大きくすることが可能となり、薄肉穿孔技術を確立しました。
(2)新製鋼工場(2006年大河内記念生産特賞受賞)
上記のシームレスパイプの素材の中で、特に高純度、高強度、高耐食性をもつ油井管とラインパイプは、要求される不純物であるリン濃度は100ppm以下、イオウ濃度は8ppm以下であり、銑鉄に含まれる不純物の徹底した除去が必要になります。これに対して、当社は、上底吹転炉を予備的なリンの除去のために使うことを世界で初めて工業的に適用し、成功しました。この反応は低温で起こるため、耐火物のコストもあまりかからず、かつリンの除去が高速度で実行できることが実証できたため、リンの除去専用炉(脱リン炉)を設置し、転炉を炭素の除去専用炉(脱炭炉)としました。脱炭炉においてはリンを除去する必要がないため、超高速処理を可能とする新型酸素吹きランスを開発し、230トンを9分で処理する超高速精錬を行い、非常に高い生産性を達成しました。さらに、最終的に脱炭炉のあとに新設計の多目的真空脱ガス反応装置を設置し、8ppm以下の極低濃度のイオウを完璧に達成することを可能にしました。

3.成果
(1)世界の大規模な石油・天然ガス開発プロジェクトはいずれも深海、深井戸といった過酷な高腐食環境であり、当社の高級シームレスパイプが必要とされています。当社の製品は、世界のエネルギー枯渇問題の解決に貢献しています。
(2)スーパーメジャーオイルを主体とする、高級シームレスパイプのマーケットシェアを大きく増やすことのみならず、現在の当社の過去最高収益を支える事業となり、和歌山製鉄所の再生を果たしました。
(3)上記技術と生産活動および最先端商品の社会貢献は高く評価され、日本の産業において最高レベルの名誉である大河内記念生産特賞を受賞することができました。


大河内記念生産特賞  賞状と盾

以 上


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