耐疲労特性に優れた高張力厚鋼板の橋梁への初適用について

2006/11/10

  • 高田機工株式会社
    住友金属工業株式会社

高田機工株式会社(社長:西前博一、本社:大阪市、以下 高田機工)と住友金属工業株式会社(社長:友野 宏、本社:大阪市、以下 住友金属)は、この程、耐疲労特性に優れた高張力厚鋼板(以下FCA鋼(*1):Fatigue Crack Arrester)を、両社の共同研究の結果、世界で初めて橋梁(入野橋(仮称):和歌山県日高振興局殿発注)に適用した。

1.経緯
FCA鋼は、住友金属が平成13年に開発した、母材部の疲労き裂進展抑制効果を有する高張力厚鋼板である。既に造船分野では、日本を始め、世界を代表する4カ国の船級協会から鋼種認定を取得し、40隻を超える船舶で採用されている。住友金属では、その後の研究により、FCA鋼に溶接部の疲労強度を向上させる機能も付加することに成功し、大型構造モデル試験(*2)でその効果を明らかにした。
FCA鋼の橋梁分野への適用にあたり、高田機工と住友金属は共同研究を行い、橋梁の疲労寿命について大幅な改善が期待できることを確認した。さらに、橋梁のライフサイクルコスト低減や今後アセットマネジメントへの考慮が増大することを見据え、耐候性仕様のFCA鋼を開発し、橋梁への初適用に至った。
なお、本研究成果については、11月13~14日に大阪大学で開催される「溶接構造シンポジウム」において発表する予定である。

2.適用橋梁および部位
(1) 適用橋梁
和歌山県日高振興局殿発注の入野橋(仮称)-平成19年3月完成予定
鋼材規格:溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材
SMA490CW(最大板厚 36㎜)、SMA570W(最大板厚 49㎜)
(2) 適用部位
I形2主桁のうち片側1主桁の1径間分 約50トン

3.今後の展開
近年、鋼橋における疲労損傷の発生は大きな問題となっている。平成14年には道路橋示方書が改訂され、疲労設計を全面的に採用することとなり、その中で、疲労耐久性に劣る溶接部に対しては、細部構造の変更、溶接止端部仕上げの追加などの処置が必要となっている。
FCA鋼を鋼橋に適用することにより、鋼材自体の機能で鋼橋の疲労寿命について大きな余寿命が確保でき、さらに溶接止端部仕上げの省略などの効果も期待できる。
高田機工と住友金属は、今回の橋桁に加え橋脚部へのFCA鋼の適用効果についても大阪大学を交えた共同研究で既に検証済であり、橋梁各部位へのFCA鋼の適用拡大により、鋼橋の信頼性向上とライフサイクルコスト低減に貢献していく。

<用語解説>
(*1)FCA鋼:Fatigue Crack Arrester
FCA鋼の開発は、1990年代初頭の大型タンカーにおける疲労き裂問題への取り組みをきっかけとし、疲労き裂の進展抑制効果を金属組織制御により実現、近年の船舶の長期耐用および疲労性能向上の要求に応える画期的材料として、平成13年に住友金属が世界で初めて開発・実用化した。現在ではさらに同鋼の溶接部の疲労強度も大幅に高めた、引張強さ500,600MPa級の溶接構造用厚鋼板(耐疲労鋼)として、橋梁を始め船舶、建設機械等疲労損傷の防止が重要視されるあらゆる鋼構造物への適用が期待されている。
取得特許:国内11件

(*2)大型構造モデル試験:
橋梁I桁を模擬した大型構造モデル試験体(関西大学坂野教授との共同研究)により、日本道路協会疲労設計曲線において一等級分以上の疲労強度改善効果が確認された。これにより、耐疲労鋼適用によるライフサイクルコスト低減などの長期的な経済性・安全性向上ついても反映可能なことが示唆された。

以 上


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