橋梁向けに高強度制震ブレース「SUB-X」を初受注

2005/04/25

  • 住友金属工業株式会社

当社が開発した超高層ビルや橋梁などの大規模構造物用の高強度制震ブレース「製品名:SUB-X」が、このたび、名古屋高速道路の東山2号線の高架橋耐震補強工事に初めて採用され、その取付けが完了した。制震ブレースは、大地震のエネルギーを効果的に吸収する制震構造として用いられ、これまで主に建築の分野で幅広く採用されてきた。当社は、一般建築物向けの制震ブレースに加え、超高層ビルや橋梁など大規模構造物を想定し、大荷重まで対応可能な高強度の座屈拘束ブレース「SUB-X(Steel-Unbuckling-Brace Cross-Type)」を開発し、昨年に財団法人日本建築センターの一般評定を取得している。当社は今後、従来からの建築分野に加え、橋梁などの大規模土木構造物の耐震工事向けに更なる拡販を目指していく。

1.「SUB-X」の特徴(図-1)
「SUB-X」は、鋼材を軸降伏させてエネルギーを吸収する座屈拘束型のブレースで、鋼板の溶接により十字型を形成する芯材(エネルギー吸収材)を四方より山形鋼で抑え、スペーサーを介して山形鋼同士を高力ボルトで締め付けて、芯材が座屈しないよう補剛している。「SUB-X」の特徴は、以下の通りである。

(1)安定した復元力特性とエネルギー吸収能力を有している。

  大変形の状態でも、引張側と圧縮側の耐力上昇率の差は少なく、安定したエネルギー吸収性能を示す。
(2)基本部材が全て鋼製であるため、(拘束材に鉄筋コンクリートを用いたタイプより)軽量である。
(3)芯材(エネルギー吸収部材)を十字断面としているため、大荷重まで対応可能である。
(4)防錆対策として、溶融亜鉛めっき仕様に対応可能である。
(5)芯材材質(低降伏点鋼、普通鋼)が豊富である。

2.採用状況
(1)物件名 :上部工耐震補強工事15-6
(2)施主  :名古屋高速道路公社
(3)工事位置:名古屋高速道路 東山2号線 白川出入口付近
(4)採用本数:7橋脚、全24本の取付け(写真-1、2)
(5)採用に至った経緯
高荷重における安定したエネルギー吸収能力に加え、他の形式の制震装置(鋼製ブラケット(*1)、超高減衰ゴムバッファー(*2)など)に比べ、施工性や経済性に優れていることが評価された。本工事では、阪神・淡路大震災級の直下型大地震に耐える構造として、制震ブレースには、降伏荷重(200~500t)と高荷重の状態で、さらに、大変形した状態(芯材軸ひずみ3%以上)においても安定したエネルギー吸収を発揮することが要求された。これに対して、以下を確認し、受注に結びつけた。

 ・「SUB-X」に対し、取付け部を含めた全体構造システムを模擬した模型載荷試験や、実物大での製品性能確認試験を実施し、これらの要求に対し十分な制震性能があることを確認した。
・また、実物大の試験により、「SUBーX」は、想定した大地震(阪神・淡路大震災などに匹敵するレベル2の直下型地震)に耐えることを確認した.さらに、大地震が発生した後にも、「SUBーX」のエネルギー吸収能力には十分な余力があることを確認した.
・また、大変形(芯材ひずみ3%)に達しても、引張と圧縮側の耐力上昇率の差は8%程度と小さく、安定したエネルギー吸収能力を有することを確認した。

3.今後の取り組み
制震ブレースは、橋梁の耐震補強工事を中心に、大規模構造物への需要拡大が予想される。当社は、これらのニーズに応えられる製品として、「SUB-X」の拡販に注力したい。


図-1「SUB-X」 構造概要図


 

写真-1「SUB-X」取付け状況(1)                                 

写真-2「SUB-X」取付け状況(2)

(*1) 鋼製ブラケット:

上部工に鋼製のブラケットを取り付け、さらに、橋脚周りにストッパーを設けることで、地震時の変位を、剛構造により制限するタイプ.
(*2) 超高減衰ゴムバッファー:

ゴム製の緩衝材により、地震の揺れを減衰し、エネルギーを吸収するタイプ

以 上


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