新日鉄の橋梁用高降伏点鋼板“SBHS400W”がJIS化後初採用

2012/09/04

新宮川橋 現地施工の様子(2012.8.20)

 新日鉄製造の橋梁用高降伏点鋼板SBHS400W(Steels for Bridge High Performance Structure)が、三重県多気郡宮川に架かる“新宮川橋”(三重県多気郡大台町発注、橋梁重量約180トン)に採用されています。 SBHS400Wは降伏強度400N/mm2 (引張強度5 0キロ鋼相当)でかつ耐候性鋼仕様で、JIS規格材として制定されて以降、50キロ鋼及び耐候性仕様として初めての適用物件となります。

○SBHSの特徴
 SBHSは従来の橋梁用として一般的に使用されている溶接構造用圧延鋼材と比較して、高強度・高靭性で、溶接性、冷間加工性にも優れた橋梁用の高性能鋼材です。構造設計上の基準強度である降伏強度が従来鋼より10~20%高く、軽量化など経済的な設計が可能となります。また、降伏強度の向上を、溶接性や加工性を阻害する合金類の添加ではなく制御冷却プロセスを駆使した鋼材組織の造り込み技術で実現しているため、溶接性(溶接時の予熱作業の省略や低減が可能)、冷間加工性にも優れています。

○東京ゲートブリッジへの採用実績を踏まえSBHSがJIS規格化
 SBHSの前身で日本鉄鋼連盟製品規定(MDCR0014-2004)にあるBHS (Bridge High Performance Steel)は、東京都港湾局発注の“臨海中央橋”及び、2012年2月供用開始された国土交通省関東地方整備局発注の“東京ゲートブリッジ”に約17千㌧採用されています。
 この製造実績を踏まえ鋼材のJIS規格化が検討され、日本工業標準調査会の審議を経て、平成20年11月20日に(財)日本規格協会からJIS G3140“橋梁用高降伏点鋼板“として4規格(SBHS500, SBHS500W, SBHS700, SBHS700W(Wは耐候性仕様))が制定されました。橋梁用厚板に関するJIS規格鋼材としては、実に40年振り*1)となる新規格制定です。その後、平成23年11月に降伏強度400 N/mm2 であるSBHS400及びSBHS400Wが同規格に追加されました。その結果、SBHSには、降伏強度400、500、700N/mm2の3種類、各強度に対して耐候性仕様を加えた計6種類の鋼材規格で構成され、当初提案された全種類が揃いました。新日鉄はこれまで東京ゲートブリッジを始めとして、橋梁用高降伏点鋼板を累計約18千トン製造・出荷しています。(SBHS500としては、永田橋等で実績あり)

*1)1968年制定 JIS G3114 溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材 以来

○新宮川橋への採用
 現在架設中の“新宮川橋”は、宮川の渓谷を跨ぐ全長76mの上路トラス橋です。 最近では、橋梁の維持管理費低減や初期コスト抑制の観点から、鋼橋の約30%に耐候性鋼が採用されています。本橋は太平洋岸熊野灘から約15km内陸に位置し、離岸距離が十分確保できることから無塗装耐候性鋼の適用が可能であるため、耐候性仕様が選定されました。また、支点付近は、橋梁に作用する荷重を下部工に伝達する重要な部位で、補強部材等が取り付く狭隘なスペースでの溶接作業となるため、品質確保と現場作業性の向上を目的に、降伏強度が高く、溶接性が良好なSBHS400Wが初採用されました。本橋は、現在川田工業㈱により工事が進められ、平成24年12月供用開始予定です。


(お問い合わせ先) 総務部広報センター TEL:03-6867-2135


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