入社式社長メッセージ

2006/04/03

 136人の諸君、新日鉄への入社おめでとう。諸君全員を心から歓迎いたします。

 日本経済もようやく新しい成長軌道に乗り、鉄鋼需要も世界全体で拡大を期待出来る今、諸君を迎えることが出来ましたことは、過去の苦しいリストラの記憶を持っているだけに社長として喜びもひとしおであります。
 2005年度の新日鉄グループは経常利益5150億円と、過去最高益を更新する見通しであります。日本の中でも金融機関を除いておそらく昨年に引き続きトップ10の地位を占めることになると思います。今やグループ経営の時代であり、経常利益の70%は新日鉄で本体で、30%はグループ会社或いはセグメント会社で稼ぎ出したものであり、しかも300社近いグループ会社のほとんどが黒字であります。このように新日鉄はグループ全体として力をつけているわけであります。
 会社にとって収益を上げることは、設備投資、従業員の給与、株主配当或いは税金の支払いの原資として重要であることは言うまでもありません。それと同時に新日鉄の社会的地位を高めるものであり、経営が効率的に行われていることの証でもあり、或いは従業員が働くことを誇りに思う大きな要素であると考えます。
 1997年のタイの通貨危機に端を発し、世界鉄鋼業界は大変な危機に直面し、日本も含め世界規模で企業の統合再編が進みました。一方、新日鉄も含め、各社とも血の滲むような合理化努力を行ったものであります。中国を始めとする鉄鋼需要増のフォローの風を、合理化によって出来た大きな帆にいっぱい受けて、我々は今日を迎えているのであります。
悪い時代は永久に続く訳ではありません。また今のような良い時代も永久に続くものではありません。良い時代においてもどこかに負のエネルギーが蓄積されているわけであり、危機は5年に1度は必ず来るものと私は考えております。

 さて、私は諸君に対し、3つのことを申し上げたい。
 第1の点は、新日鉄の存在理由はどこにあるかということであります。私はそれは世界をリードする先進技術を追求し続けることにあると思います。鉄鋼業界に身をおく以上、我々のユーザーが国際競争の場で他国メーカーと伍していけるよう、適切な価格もしくは品質で鋼材を供給出来るよう、国際競争力を持つことが我々にとって絶対に必要な要件であります。しかし同時に、ユーザーの重要な技術要求に応えて、必要な先進的なコア技術を開発し、ユーザーと共に発展することこそ本当の存在理由ではないでしょうか。当社は昨年末に新しい中期経営計画を発表致しましたが、そのベースにあるのは技術の先進性を通じて総合力世界一の会社になるということであります。
 申し上げたい第2の点は、時には大きなバランスをとることを考えて欲しい、ということであります。諸君は会社生活の中で矛盾する2つの必要条件を同時に満足する解を求めるような場に遭遇することも多々あると思いますが、時には妥協せず、矛盾する両方の条件を同時に満足する解を追及し、大きなバランスをとって欲しいと思います。優れた新商品の多くはこのような悩みの中で、2つの矛盾する要件を1つの商品の中に造り込むことによって生まれたものであります。
 私が申し上げたい第3の点は、一昨年制定した企業理念及び社員の行動指針についてであります。当社の企業理念は、社会と共に生きる会社、技術で世界をリードする会社、常に自己変革する会社、人を育て人を活かす会社になることであります。この企業理念はこれからの新日鉄のあるべき姿であり、同時に経営が諸君一人一人に対してコミットメントした内容でもあります。私は重要な決断をする時には必ず企業理念をもとに判断いたします。諸君も会社生活の中で大きな問題に直面し判断に悩む時は、企業理念・行動指針に照らして自らの行動の妥当性を考えていただきたいと思います。

 諸君のこれからの人生が希望に満ちた実りのあるものであることを心から祈念し、私の挨拶と致します。

                             以 上


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