社長年頭あいさつ

2005/01/04

                             2005年1月4日
                         新日本製鐵株式会社
社長年頭あいさつ

 皆さん、あけましておめでとうございます。
 今年度の当社グループの連結経常利益は過去最高の3,200億円となる見通しであり、金融を除く全国上場企業のなかでも第10位と、日本経済のなかでようやく新日鉄らしいポジションが確保できるまでに復活いたしました。今回、我が国経済が回復する過程で、製造業がその牽引力としての役割を担い、なかでも素材産業の重要性が再認識されたことも、大変喜ばしいことでありました。その中で、私としては、次の2点を強調したいと思います。一つは、グループ各社の収益が、3,200億円のうちの900億円、約3割を占めるに至り、連結利益の拡大に大きく貢献したことです。もう一つは、数々の困難に直面しコスト増を余儀なくされながらも史上最高利益を計上出来る見通しであることです。昨年は数度の台風や名古屋の停電、大分の高炉改修の影響等により、大幅な減産を余儀なくされ、多大なコスト負担、機会損失を強いられました。加えて、災害の多発に対し、安全・防災対策費を緊急投入し、その撲滅に取り組みました。にもかかわらず、史上最高の利益が確保できることは、言うまでもなく、この十数年間にわたる皆さん一人ひとりの懸命な合理化努力の成果であります。

 一方、我が国景気の先行きは、需要面で当面引き続き堅調に推移すると思われ、また米国や中国の経済動向にも大きな不安はありません。ただし、円高の進展や更なる資源価格の高騰、および世界各地で計画されている大規模な設備投資プロジェクトによる需給悪化等の懸念、あるいは我々の気づかぬところでマイナスのエネルギーがどこかで蓄積され、それが思わぬ形で噴出する可能性もあります。私は、鉄鋼業では「大きな危機は5年に1度は必ずくる」と考えており、これを常に念頭に置き経営を進めていく所存です。

 本年は、当社グループの平成15~17年度中期連結経営計画の最終年度です。平成17年度については、平成16年度をはるかに上回る連結収益を目標とする考えですが、そのためには、特に原材料価格の一層の高騰を克服するための新たな技術対策に取り組む所存です。また、当社グループの一層の飛躍に向けて、平成18年度以降の新しい中期経営計画の検討にも着手いたします。

 当社がわが国鉄鋼業界のナンバーワン企業として、確固たる地位を堅持するためには、鉄事業においては以下の3つの課題に取り組んでもらいたいと思います。
 第1の課題は、ボトルネックの解消 および 設備能力のフル発揮 により、供給対応力を強化することです。昨年、国内外の鉄鋼需給が急激に逼迫するなかで、お客様からの増量要請に対して十分に対応出来なかったことは、素材メーカーとして真摯に受け止めなければなりません。本年、ハード・ソフト両面における対策の効果を確実に取り込み、当社の供給対応力を強化したいと思います。
 ハード面では、400億円をかけたボトルネック解消による一貫工程能力の向上対策が夏にかけてようやく完了します。また、設備トラブルの最小化を目的として、修繕費・設備費を重点投入し、各生産設備の作業率の向上を図っております。
 第2の課題は、製造実力向上のための 人材総合力の強化 および ものづくり活性化です。協力会社を含めた新日鉄グループ全体として人材育成の強化等に早急に着手し、ねばり強く実行していく所存です。また、中長期的な対策として、技術・技能を高め、かつ伝承を確実に行うための採用・配置・育成を行っていきます。
 第3の課題は、世界をリードする先進的な高付加価値商品の開発・拡販を通じて、持続的な収益体質の確立を目指すことです。中国の鉄鋼生産が急増するなかで、供給可能なメーカーが限定され中長期的にも安定した需要規模が期待できる高付加価値商品を開発し、その製造対応力をさらに強化して、圧倒的な競争力を確保しなければなりません。しかし、残念ながら、高付加価値商品は必ずしも収益商品となっていません。商品の価値に見合った価格体系の実現を含め、製販一体となって全力で収益向上に取り組んでください。
 また、アライアンスパートナーとの資源・頭脳の共同活用、およびグローバルな供給体制の構築等を総動員して、商品・技術の差別化による拡販を一層進めていただきたい。

 次に、鉄事業以外のセグメントについて、申し述べたいと思います。
 エンジニアリング事業については、ますます厳しさを増す事業環境のなかで、すでに着手した事業構造強化対策を完遂し、競合メーカーを凌駕する競争力をつけていただきたい。PFI等の提案型事業展開や、国内外の大型プロジェクト等への積極的対応、および海外調達拡大によるコストダウンの実行等により、事業規模に相応しい収益力の回復・強化を期待します。
 化学事業については、事業基盤の再構築により、財務体質の改善を確実に進めていただきたい。引き続き事業の選択と集中を進め、有機・芳香族化学技術力を存分に活かし、目標とするグランドデザインの実現に向け力強く前進していただきたい。
 システムソリューション事業については、顧客毎の営業力の強化と、システムライフサイクルコストを重視したソリューションの提供、および開発技術力・コスト競争力の強化により、変化に対応した事業基盤を確立し、新たな成長を目指していただきたい。

 都市開発事業については、新日鐵グループの総合力を活かした社有地開発事業や、社会から求められている都市再開発事業の積極推進、および不動産の証券化等による新しいビジネスモデルの構築等を通じ、より高い収益効率の事業構造を確立するよう期待します。
 新素材事業については、主要マーケットである半導体・電子機器関連産業の需要動向を踏まえ、既存事業のさらなる体質強化に引き続き取り組んでいただきたい。

 以上、主要セグメント別に本年の課題を申し上げましたが、事業環境が大きく変化するなか、こうした課題解決を進めていく上では、当社グループ全体で共通の価値観を共有することが強く求められています。世界の鉄鋼メーカー間の更なる再編・統合、産業社会における鉄鋼業の相対的地位の変化、社員の価値観の多様化などを考えあわせた結果、私は、これまで当然とされてきた当社の「暗黙知」が崩れつつある、との危機感を持つに至りました。このため、経営として議論を重ね、昨年末、新日鉄グループとしての「企業理念」と理念実現のため社員に求められる「行動指針」を新たに制定しました。この「企業理念」と「行動指針」は、単なる「心地よい言葉の飾り」ではなく、経営にとっては従業員に対するコミットメントであり、同時に社会に対するコミットメントでもあります。
 「社会と共生し、社会から信頼される」ことを徹底するためには、かけるべき費用は投入し、見直すべき業務は見直さなければなりません。我々は、場合によっては短期的な利益や売上を犠牲にしても、新日鉄グループとしての長期的な発展を選択することで、社会からの信頼に応えていく考えです。その際、言うまでもありませんが、「社会ルールを守ること」、「環境保全に最善の努力を払うこと」、および「安全な職場をつくること」は、全てに最優先する「経営の大前提」です。
 また、「たゆまず技術の創造と革新に挑戦し、技術で世界をリード」するためには、特に、製造業の原点である現場を重視し、製造実力の向上に努めることが極めて大切です。製造実力向上対策を粘り強く実行し実績に結びつけることが、鉄事業における最も重要な課題の一つと考え、その実現に最大限の努力をする覚悟です。

 本年、こうした基本理念を共有した新しい「新日鉄グループ」がスタートします。私は、皆さんとともに「信頼・技術・変革」を基軸に、活力溢れる新日鉄グループの実現を目指し、諸課題の解決に邁進する決意です。

                                 以 上


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