新世代鋼矢板『ハット形鋼矢板900』の開発について

2004/10/14

 新日本製鐵株式会社、JFEスチール株式会社、住友金属工業株式会社の3社は、これまで培ってきた技術を活かし、新世代鋼矢板『ハット形鋼矢板900』を開発しました。
 『ハット形鋼矢板900』は、①ハット形状(図)の採用、②有効幅900mmの薄肉大断面形状の採用、③継手位置の壁体最外縁配置、により、大断面でありながら施工性に優れ、構造信頼性が高く、かつ経済的な壁体が構築出来る画期的な鋼矢板です。
 製品として、「SP-10H」と「SP-25H」の2種類を開発いたしました。

 今回3社は共同で、これまで主に護岸・岸壁や仮設土留め等に使用されてきた従来のU形鋼矢板を性能で上回り、本設構造物として幅広く新規用途に適用出来る鋼矢板を目指し、構造・施工・圧延技術面から研究を行い、その結果ハット形状で、単一圧延材として世界最大幅(900mm)の鋼矢板の開発に至りました。そしてこの度、試圧延に成功し、施工性能および構造性能を確認したことから、今後各社で製品化を図ることになりました。

 『ハット形鋼矢板900』の特長は、以下のとおりです。

(1)優れた施工性 ~形状特性により、優れた施工性を実現~

本製品では、ハット形状を採用し、
①有効幅を900mmとし、部材一枚あたりの剛性を高く設定したこと、
②部材両端部に平坦部を設け、土中での部材変形を小さく抑えたこと、
③一方向打設とすることで施工時の部材変形モードを一致させると共に、継手の競り 
 合いによる貫入抵抗を小さく抑えたこと、
等によって、大断面でありながら極めて高い施工性を実現致しました。これにより長尺施工を必要とする調整池・河川護岸・止水壁等の工事に幅広く適用出来ます。
 また、一方向打設であることから、バイブロハンマ施工(注1)の場合、従来の鋼矢板に比べ省スペースでの施工が可能となり、都市部河川改修・既設護岸リニューアル等、幅広い分野・箇所への適用可能性が広がります。

(2)高い構造信頼性 ~断面性能低減が不要で構造性能を確実に発揮~

継手位置を壁体の最外縁に配置することにより、従来の鋼矢板の設計において必要に応じて行っていた、継手効率(注2)による断面性能の低減を不要としました。断面各部の寸法は薄肉大断面でありながら、局部座屈を起こさずに終局耐力を発揮できるように設定しており、断面効率に優れると共に、どのような設計条件下においても、確実に構造性能を発揮できる信頼性の高い鋼矢板です。
設計段階での断面性能の低減は不要で、継手効率を向上させるためのコンクリートコーピング(注3)が不要となるため、自立式河川護岸・道路擁壁等で、優れた経済効果と共に高い構造信頼性を発揮します。

(3)優れた経済性 ~低コストでの壁体構築が可能となり、鋼矢板の適用範囲が拡大~

① 鋼材重量の低減
継手位置の壁体最外縁配置で、従来の鋼矢板で課題であった継手効率による断面性能低減が不要となり、かつ、薄肉大断面形状としたことにより、単位壁面積あたりの鋼材重量を低く抑えることができ、経済性の向上が可能になりました。広幅型(600mm)鋼矢板と比較した場合、単位壁面積あたりの鋼材重量を7~29%程度低減できます。

② 工事費縮減・工期短縮
有効幅900mmの大断面ハット形状の採用により、施工延長あたりの施工枚数を少なく抑えることができ、工事費縮減と工期短縮が可能となりました。例えば広幅型(600mm)鋼矢板と比較した場合、所定の施工延長あたりの施工枚数を2/3に低減できます。



『ハット形鋼矢板900』は、「長尺及び近接での優れた施工性」、「高い構造信頼性」、「優れた経済性」を生かし、護岸・岸壁はもとより、道路擁壁・調整池・下水道・建築等幅広い用途に鋼矢板の適用範囲が広がることが期待出来ます。

以 上


本件に関するお問合せは、下記にお願いいたします。

新日本製鐵株式会社    広報センター     Tel 03-3275-5022
JFEスチール株式会社  総務部広報室     Tel 03-3597-3166
住友金属工業株式会社   広報グループ      Tel 03-4416-6115



注1)バイブロハンマ施工
鋼矢板を土中に打設する一般的な施工方法。起振機により振動力を発生させ、この振動力により鋼矢板を土中に打ち込むことによって、振動力により土粒子間の結合を失わせ、その間に鋼矢板を打ち込む工法。

注2)継手効率
U形鋼矢板が曲げ荷重を受けると、壁体の中心に位置する継手は縦方向にズレようとし、隣り合ったU形鋼矢板は一体として働きにくくなる。この継手のズレの影響を評価する方法として、係数を乗じて断面性能を低減する方法があり、この時の係数が継手効率と呼ばれるもの。
継手効率の値は基準により異なるが、断面二次モーメント(I)に対して0.45~0.8、断面係数(Z)に対して0.6~1.0程度の値が用いられる。

注3)コンクリートコーピング
   鋼矢板を打ち並べて作る護岸、岸壁、堤防において、鋼矢板の頭部を包み込んで打設したコンクリート。鋼矢板頭部を拘束するため、継手効率を向上させる効果もある。

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