超高加工性フェライト系ステンレス鋼板を開発

2001/11/28

プレス成形後の外観写真(左:YUSPDX、右:SUS430)

成形加工例(燃焼機器部品)

新日本製鐵株式会社(社長:千速 晃)は高効率真空精錬技術、鋳造から熱間圧延~冷間圧延までの一貫製造プロセスにおける金属組織制御技術を駆使し、加工性、深絞り性を飛躍的に向上させた超加工性フェライト系ステンレス鋼板「YUSPDX」を開発致しました。「YUSPDX」は、フェライト系でありながら、SUS304に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼にも匹敵する加工性、プレス成形性を具備しており、新日鉄の商品メニューに本商品が加わったことによって、お客様の用途や目的に応じた多様な素材の供給体制が一段と充実することになります。

SUS430に代表される従来のフェライト系ステンレス鋼は、ニッケルを含有するオーステナイト系ステンレス鋼に比べ破断までの伸びが小さく、成形性に劣っていました。 「YUSPDX」は、伸びを低下させる不純物を高効率真空精錬技術により徹底的に低減させ、さらに添加するチタンを必要最小限にすることにより、従来のSUS430鋼に比較し絶対値で10%程度伸びを向上、40%程度にまで達する伸びを実現するとともに、ランクフォード値(※1)も2.0程度まで上昇させ、プレスによる深絞り性を飛躍的に向上させました。
また、フェライト系ステンレス鋼は不純物を低減し、高純度化すると、鋳造した時の金属組織が粗大化し、その影響により製品鋼板をプレス加工するとリジングと称する表面凹凸が大きくなる問題がありました。リジングが生じると美観を害するだけでなく、加工後の表面研磨の負荷が増大します。「YUSPDX」では鋳造時の金属組織粗大化を抑制し、さらに熱間圧延から冷間圧延までの一貫製造プロセスにおいて金属組織を最適に制御することにより、高純度化の悪影響を排除することに成功し、プレス加工後もリジングはほとんど認められません。
一方、オーステナイト系ステンレス鋼との比較においても、「YUSPDX」は軟質で加工時のプレス機械への負荷が小さく、また深絞り加工後に現れる時効割れ現象(※2)も無いため、深絞り用途に最適なステンレス鋼です。
「YUSPDX」は、[1]高価なニッケルを多く含有するオーステナイト系ステンレス鋼を使用せざるを得なかった部材への代用、[2]従来のフェライト系ステンレス鋼に対しては成形性が著しく優れていることによる板厚薄手化あるいはブランクサイズの縮小によって素材費低減に有効です。さらに、[3]従来は複数の部材を溶接等で組み立てていた部品をプレス一体成形化(写真に例示)したり、[4]プレス工程を簡略化したりすることも可能で、部品製造コストの削減にも有効です。
「YUSPDX」は、燃焼器具、電池ケース、自動車部品、厨房機器、建物内装部品等の加工部品用を中心に拡販を目指し、今夏より製造・販売を開始致しました。


(※1)ランクフォード値:ランクフォード値(r値):引張試験において板幅方向ひずみ(対数ひずみ)と板厚方向ひずみの比(下式)。同種の材料ではランクフォード値が大きいほど深絞り性が良い。

    r= ln (w0 / w)/ln(t0 / t)

       w0 :引張試験前の試験片幅
       w :10~20%ひずみを与えたときの試験片幅
       t0 :引張試験前の試験片厚み
       t  :10~20%ひずみを与えたときの試験片厚み

(※2)時効割れ:オーステナイト系ステンレス鋼を強加工すると、時効割れと呼ばれる遅れ破壊が発生する。この割れは絞り加工後数分から長いときは数ヶ月後に発生する。原因として鋼中水素、残留応力、加工時の金属組織変化があげられています。






連絡先
ステンレス事業部 天藤 03-3275-7866
広報センター   菅家 03-3275-5021


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