世界最高強度の海洋構造物用鋼の開発について

2001/05/30

新日本製鐵株式会社(社長:千速 晃)は、海洋構造物向けに世界最高の強度・靱性を持つ厚鋼板を開発し、北海油田等寒冷地用を中心に3件の海洋構造物プロジェクト用鋼材を受注致しました。
従来、YP420MPaクラスが限界であった同用途鋼材において、当社はYP500MPaまでを開発し、採用に至ったものです。

  (※) YP420MPa = 引っ張り試験において、420MPa(=N/mm2)(メガパスカル =ニュートン/平方ミリメートル)の荷重で初めて降伏(復元しなくなる)することを表す。

<採用された海洋構造物プロジェクト>
Bayu-Undan (バイユ ウンダン:東チモール):
  YP460MPa 19.2千トン受注 17.2千トン出荷済み
Grane (グラーネ:ノルウェー):
  YP500MPa  4.0千トン受注  4.0千トン出荷済み
Kvietbjorn (クビトビョルン:ノルウェー):
  YP500MPa  3.0千トン受注  1.8千トン出荷済み


<海洋構造物に求められる鋼材特性―低温靱性>
海底油田採掘用のジャケットに代表される海洋構造物は、近年、油田・ガス田の深海化にともなって大型化しており、脚部分への重量負担が大きくなっております。このため、海面上の構造物(プラットフォーム)の軽量化が強く求められており、高強度鋼材の適用による鋼材重量減が課題となって来ました。
また、海洋構造物は北海油田等過酷な低温環境で使用されるケースが多く、こうした環境下でいかに靱性を保ち、また脆性破壊の発生を抑制するかということも大きな課題です。
従来、高強度の鋼ほど、成分の制約等から溶接継手部の靱性と脆性破壊抑制能が低下するため、鋼材の高強度化はYP355MPa~YP420MPaクラスまでが限度でした。


<新技術HTUFFによる克服>
当社の新技術「HTUFF」は、溶接熱影響部でも安定した靱性を確保することに成功しております。(平成13年3月6日プレスリリース)
同技術で製造された新鋼材(YP460MPaおよびYP500MPa)は、高強度でありながら非常に安定した溶接継手部の靱性を持ち、-40℃でのシャルピー衝撃値(靱性試験値)、-10℃でのCTOD値(脆性破壊発生を抑制する能力の指標)を、海洋構造物向けに保証することが可能です。加えて、溶接継手部の靱性が安定している結果、鋼材の成分設計の自由度が増し、溶接性も極めて良好です。
今後、鋼材強度の主流は、現在のYP355MPa~YP420MPaからYP460MPa~YP500MPaへ移行していくことが予想され、さらなる受注が期待されております。

<新技術「HTUFF」について>
溶接部近傍の熱影響部(HAZ:Heat Affected Zone)は、組織が粗大化することで靱性が低下し、脆性破壊の原因となっております。
当社はこれまで、チタン(Ti)の酸化物や窒化物を利用したHAZ靱性改善技術(TiO鋼、TiN鋼)を開発してきましたが、この度新たに開発した「HAZ靱性高靱化技術」(HTUFF; Super High HAZ Toughness Technology with Fine Microstructure imparted by Fine particles)はこれを画期的に改善したもので、より高温まで安定な酸化物・硫化物などの微細粒子を鋼中に多数分散させ、HAZの組織粗大化を強力に制御(抑制)するものです。
さらに、鋼材化学成分の最適化により、局部脆化組織を低減することにも成功しており、組織粗大化制御技術との組み合わせで、より安定したHAZ靱性を実現しています。
以上

連絡先    厚板営業部    今井 03-3275-7811
広報センター   菅家 03-3275-5021


このページの上部へ

ここからフッター情報です