2018年 年頭にあたって(社員向けトップメッセージ:代表取締役社長 進藤 孝生)

2018/01/04

新日鐵住金株式会社

2018年 年頭にあたって(社員向けトップメッセージ:代表取締役社長 進藤 孝生)


 年頭にあたり、本年の重点課題とその対応の方向性について、所信を述べたいと思います。

  昨年2017年は、多くの政治的・地政学的リスクを抱えて幕を開けた年でありましたが、鉄鋼マーケットは、好調な世界経済を背景に堅調に推移しました。特に中国においては、いわゆる「地条鋼」の全廃措置を含め、過剰生産能力の削減が進展したこと、また、この間、中国の内需も堅調であったことから、世界鉄鋼マーケットの需給は概ね安定的に推移しました。
 しかし、原料価格は、原料マーケットの構造変化とともに乱高下の様相が顕著となってきました。また、原油価格も低迷を続ける中、エネルギー関連の鋼材需要の回復には今しばらく時間がかかる見込みです。中国の過剰生産能力問題も、解消に向け進捗はしているもののまだ途上であり、今後ともその動向を注視していく必要があります。
 本年2018年も、事業環境は概ね良好でありますが、これら不透明な要素も抱えながらのスタートとなります。

 さて、世界の産業の潮流は大きな変化の局面を迎えています。
 鉄鋼業界においては、中長期的に、鋼材需要は新興国のインフラ需要を中心にゆるやかに伸びていくと想定されます。しかしながら、世界各国で保護主義化や自国産化を目指す動きが鮮明となってきました。また競合者は、会社の統合・再編や、一定レベルの操業ノウハウが搭載された最新鋭の製造装置の導入等を背景に、一層激しく追い上げてきており、当社の競争環境はますます厳しさを増しています。将来的には、地球温暖化問題への取り組みの強化や、世界的なスクラップの蓄積進展を背景とした一層のリサイクル推進等、社会からの要請もますます強まってまいります。
 また、自動車業界においてはEV(電気自動車)化の方針が、中国や欧州等の国々で大々的に打ち出されました。こうした中で、軽量化要請の高まりとともに求められる素材が変化していく可能性も含めて、将来的には鋼材の需要構造への影響が生じることも想定されます。
 このように鉄鋼業界やお客様業界においても、参画するプレーヤーやビジネスモデル自体が、速いスピードで、大きな変化を迎えようとしている中、当社自身がこれにどのように対応していくべきか、当社の経営方針と事業戦略について深く考えていかなければなりません。
 本年2018年は、当社にとっては現行中期経営計画の区切りとなり、また次なるスタートを切る節目の年ともなります。グローバルに広がる当社マーケットにおいて、成長していく需要を捕捉し、収益を上げていくために、今後10年・20年先を見渡した上で、「この3年で遂行すべきこと」と、「完遂には時間はかかるがこの3年の間に着手していくべきこと」という2つの観点から中長期的な事業戦略を描き、スピード感をもって実行していかなければなりません。そのために、本年、当社が重点的に取り組んでいかなければならないことを4点お話しします。

 1点目は安全と品質の重視、即ち当社のものづくりにおける価値観の再徹底であります。
このことを当社グループの社員・関係者一人ひとりが肝に銘じ、優先順位を間違うことなく日々の業務に正々堂々と取り組んでください。

 2点目は「設備と人の再構築」により国内マザーミルの「つくる力」をしっかりと立て直すことです。
 製造品種の高度化・複雑化によって設備への負荷や操業・保全面での難度が増す中、設備のインフラも含めて修繕の手を入れるべきところは増えています。また人材面でも世代交代の大きな波の中で、多くの製造拠点で社員の若返りが顕著となっています。こうした現状も踏まえ、これまで通り「設備と人の再構築」には長期的な視点をもって、継続的に取り組み、将来にわたる「安定生産」を確立したいと思います。

 3点目は品種事業戦略の深化です。
 当社の海外事業は着実にその成果を発揮し始め、多くの事業が収益的にも貢献するようになってきました。合弁事業のパートナーとなっている海外ミルの動向も注視しながら、今後も個々の事業ごとの課題に応じた取り組みを進め、海外事業の一層の収益基盤強化を図ってまいります。
 また国内マザーミルの安定生産に向けた努力の成果を確実に収益の改善につなげていくために、マージンの回復とグローバルマーケットにおけるシェアの確保に努めます。中長期的には、当社製品のブランド化とそのブランドを活かした営業展開を検討していくとともに、サプライチェーンやバリューチェーンの中で当社が提供する価値や機能を拡大した製品・サービスやソリューションの提供を検討する等、様々な視点から営業力の再構築に取り組み、持続的な収益改善を実現したいと思います。
 当社の事業戦略において国内事業と海外事業は一体不可分の車の両輪です。国内と海外を品種事業の目で一貫して眺めた総合的な品種事業戦略を構築し、深化させていきたいと思います。

 4点目は標準化と業務改革の取り組みです。
 取り巻く環境の変化とともに業務も複雑化していく中、業務遂行の基盤をしっかりと整え、全社最適を実現する仕事の仕方へ変えていくことが、当社の生産性を向上させていくことにつながります。
 先行して取り組んできた「ものづくり標準化推進」活動に加え、昨年は標準化の推進とITの活用によるスタッフ業務の改革にも着手しました。現場の第一線から経営幹部までが、課題意識とゴールのイメージを明確に共有し、改善策をできることから一つずつ着実に実行していきます。そしてこの基盤に、日進月歩で進化する高度ITを可能な分野から順次融合させていくことで、抜本的な業務運営の改善につなげていきたいと思います。こうした活動は、結果として働き方の改革につながり、活力ある職場環境を整えることにもなると考えており、前向きに取り組んでいきます。

 昨年10月、当社は経営統合から5年を迎えました。この間、着実に統合効果を発揮してきました。昨年には日新製鋼㈱もグループに加わり、当社グループが競争を優位に進めていく基盤は一層整ってきました。徹底的に足腰を鍛え、またやりぬく力を磨き、次の5年、そしてその先の未来も、世界に誇れる会社であり続けることができるよう、本年1年もしっかりと頑張ってまいりたいと思います。


以 上


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