クロム資源の全量リサイクルなどを可能にする合金鉄溶解炉による資源循環システムの開発で経済産業大臣賞を受賞
2017/10/13
新日鐵住金株式会社
クロム資源の全量リサイクルなどを可能にする合金鉄溶解炉による
資源循環システムの開発で経済産業大臣賞を受賞
新日鐵住金株式会社(以下、当社) が開発した合金鉄溶解炉による資源循環システムが、「平成29年度資源循環技術・システム表彰 経済産業大臣賞」を受賞しました。本賞は先進的で高度な3R 技術・システムを有する事業・取り組みを顕彰するもので、当社は最高賞である経済産業大臣賞を受賞しました。
1.受賞内容
(1) 受賞名 : | 平成29年度資源循環技術・システム表彰 経済産業大臣賞 |
(2) 主催者 : | 一般社団法人 産業環境管理協会 (後援:経済産業省) |
(3) 件 名 : | 合金鉄溶解炉による資源循環システムの構築 |
(4) 事業体 : | 新日鐵住金株式会社 八幡製鐵所 |
2.開発の背景
従来、高炉で製造された溶銑(高炉溶銑)と高炭素フェロクロム合金鉄(FeCr)を主原料としてCr系SUSを製造する際には、転炉プロセスで高炉溶銑に対して酸素ガスを用いた脱炭とその反応熱によるFeCrの溶解を同時に実施しておりました。しかしながら、熱裕度が低く製鉄所内で発生したCr含有のスクラップ、スケールのリサイクルが困難でした。
また、酸素ガスを用いた高炉溶銑の脱炭とFeCrの溶解を同時に行うことに起因して多量のCrが酸化し、その還元回収のために脱炭・溶解後に転炉内へ多量のフェロシリコン合金鉄(FeSi)を投入して還元処理を行っておりました。そのため、当該転炉工程において、大量のスラグが発生し、クロムロスが生じておりました。
3.開発の内容
転炉プロセスに合金鉄溶解炉プロセスを組み合わせることで、課題を解決し、クロム(Cr) を主成分とするステンレス鋼(Cr 系SUS)を製造する際に発生するクロム含有のスクラップ、ダスト、スケール、転炉スラグを全量、さらに外部調達のクロム含有のスクラップをリサイクルする資源循環システムを構築いたしました。具体的には、以下の通りです。
(1)副産物全量リサイクル
合金鉄溶解炉での熱エネルギー付与により、合金鉄溶解炉と転炉の複合プロセスでクロム含有スクラップ・ダスト・スケール等副産物の全量リサイクル化を図りました。
(2) 副産物の発生抑制
転炉で生じたクロム酸化物の還元処理を転炉から合金鉄溶解炉プロセスに変更することにより、還元シリコンをフェロシリコン合金鉄からフェロクロム合金鉄含有シリコンに置き換え可能となり、シリコン酸化物生成を抑制した結果、スラグ発生量を大幅に削減しました。
また、還元後、スラグ中のクロム酸化物濃度低減も可能となり、スラグ発生量の削減との相乗効果で、従来逸失していたクロム源のミニマム化(製品クロム源として活用)が可能となりました。更に、還元材としてのフェロシリコン合金鉄を大幅に削減するとともに、貴重な国内資源である生石灰も大幅に削減するなどを、環境負荷物質であるフッ素を使用することなく実現し、環境保全にも繋げました。
<概要図>

4.開発の効果
ステンレス鋼製造時の副産物(クロム含有スクラップ・ダスト・スケール)の全量リサイクル化が可能となるとともに、副産物(スラグ)発生量のミニマム化、大量の電気を消費して製造される合金鉄や生石灰の省資源化が可能となりました。

(左から)本社技術総括部資源化推進室 室長 井口雅夫、
八幡製鉄所ステンレス部ステンレス企画室 室長 加藤勝彦、八幡製鉄所 副所長 池上伸介、
技術開発本部プロセス研究所製鋼研究部 主幹研究員 浅原紀史
お問い合わせ先 : 総務部広報センター TEL:03-6867-2146
以 上

