2017年度入社式 社長メッセージ(代表取締役社長 進藤 孝生)

2017/04/03

新日鐵住金株式会社

2017年度入社式 社長メッセージ(代表取締役社長 進藤 孝生)


   皆さん、ご安全に! 
 これは当社において全社で共通する挨拶です。是非大きな声で堂々と挨拶するようにしてください。
 さて、改めまして、新入社員の皆さん、入社おめでとうございます。会社を代表して皆さんを心から歓迎します。これから皆さんと一緒に仕事ができることを本当に嬉しく思います。

 皆さんは本日より、新日鐵住金の一員として「“鉄鋼”という窓」を通して世の中を見つめ、実社会の諸課題に対峙していくことになります。新日鐵住金は、前身である新日本製鐵と住友金属工業の時代も含め、我が国鉄鋼業の発展を担い、そして日本経済の成長の礎となってきた会社です。また本年、国内高炉メーカーの日新製鋼株式会社を子会社として新日鐵住金グループに迎え入れ、尚一層の重責を担うこととなりました。
 我々は、こうして先輩方が築き上げてきた歴史や企業文化を受け継ぎ、それらに新たな価値を加えて後世に引き継いでいかねばなりません。皆さんは今後その大事な役割の一翼を担う人材として当社に迎えられたわけです。
   
 さて、世界の政治・経済は今、歴史的に大きな変化のさなかにあります。米国におけるトランプ政権の誕生や英国のEU離脱表明等に象徴されるように、これまでの金融を中心としたグローバリズムの流れや自由貿易の流れが、所得格差の拡大や移民問題等を背景に、大きな曲がり角に来ていると言うことができると思います。また政治的緊張が高まる朝鮮半島の情勢や、加熱気味とも言われる中国経済の行方など、我が国の周囲には多くの政治的・経済的リスクが存在し、先行きが見通しづらい状況となっています。皆さんはこのような歴史の転換点となるかもしれない時期に、社会人としての第一歩を踏み出すわけです。このことは是非頭の中に入れておいてほしいと思います。
 鉄鋼業界においては、中国を中心とした過剰生産能力の存在、世界的な保護主義的政策の拡大、あるいは新鋭大型製鉄所の本格稼働による海外競合他社の競争力向上等、当社を取り巻く環境は楽観できるものではありません。しかし、現下の鉄鋼マーケットは国内外ともに底堅く推移しており、当社にとって追い風となる要素も見えています。こうした中、当社は、経営理念に掲げる「優れた製品・サービスの提供を通じて、社会の発展に貢献する」という軸をぶらすことなく、正々堂々と事業を遂行していくことが重要です。

 具体的に当社が進むべき方向性についてお話します。
 当社の競争優位性の源泉は「技術」「コスト」「グローバル」です。この3つを柱とし、国内事業と海外事業を車の両輪として成長していくことが当社ビジネスの基本戦略です。現在実行中の中期経営計画においては、「設備」と「人」に経営資源を重点的に配分して、国内マザーミルの製造実力の再構築を進めるとともに、ここで培った競争力を武器に海外事業を発展させ、伸びゆく世界の需要を捕捉して収益拡大を図っていこうとしているのです。
 特に今、製造面においては「安全・防災」と安定生産という課題、営業面においては原料市況の高騰への対応と適切なマージンの確保という課題に直面していますが、危機感を持って生産設備の安定稼働と営業力の強化に取り組むことで、経営基盤と収益力を強化していこうとしています。
 皆さんも今後様々な業務に携わることになると思いますが、その一つひとつがこれに資する重要な役割を果たすものです。是非、自分の位置づけ・役割を認識して業務に取り組んで頂きたいと思います。

 次に、これから新日鐵住金の一員となる皆さんへのお願いについてお話しします。
 まず、当社にとって全てに優先する最も大切な価値は「安全」です。とりわけ製造現場に直結する職場では、安全に仕事ができる職場づくりにハード・ソフト両面から取り組んでいますが、欠かすことのできないもう一つの要素が、一人ひとりの「規律ある行動」・「ルールの遵守」です。まずは皆さん自身がこのことをしっかりと心に刻んで下さい。

 その上で、特に新入社員の皆さんにお願いしたいことを3点お話しします。

 1点目は、「なぜこの会社を選んだのか」を各自、今一度再確認して頂きたいということです。経営学の教科書は「企業経営とは事業環境変化への対応である」と教えています。正にその通りであります。10年、20年の単位で事業環境は必ず変わります。事業環境が変われば企業の経営戦略も変えていかなければなりません。これからの長い会社生活において、皆さんにもそういう判断をすべき時が必ず来ます。経営とはそういうものだからです。その時に問われるのが「わが社は何のために存在するのか?」という根源的な問いであります。その際、思考の軸として甦ってくるのが、「なぜ自分はこの会社を選んだのか」という、今、この時点の皆さん一人ひとりの決意です。この決意を各自再確認して、忘れぬよう心に刻んで頂きたいと思います。

 2点目は、「具体的な仕事を通して業務知識・専門知識の習得をして頂きたい」ということです。仕事をしていく上では、まず業務が発生する現場に足を運び素直に事実を見ることが必要です。現場の事象に精通した上で、諸先輩に教えを請い、会社の教育プログラムを受け、そして自分で考え、文献を読み、業務知識・専門知識を身に付けてほしいと思います。また、グローバルに広がる当社のビジネスにおいて、色々な国の人達と仕事をする場面もあると思いますが、相手の思考の背景に横たわる異なる文化・価値観を理解するように努めてほしいと思います。
 その上で、また、そのためにも、皆さん共通に身に付けて頂きたい基本的な能力が「語学力」と、「プレゼンテーション能力」すなわち、分かり易い論理を組み立てて、相手に伝える能力です。いずれもまずは「相手が聞きたいと思う、意味のある内容」を自分が持っていることが前提ですが、仕事を前に進めていく上で、コミュニケーションツールとしての言語能力とプレゼンテーション能力は大切です。

 3点目は、「会社生活を通じて人間的成長を遂げて頂きたい」ということです。私が、約40年前この会社を選んだのは、「鉄という産業の基礎資材を安価に供給して日本経済の役に立ちたい。」ということでした。しかし、もう一つの理由は企業文化に属するものであったと思います。議論を尊び、正論なら上司・部下の隔てなく自由に議論のできる「議論に上下なし」という気風、個別企業益もさることながら常に日本経済全体を考える伝統、そしてそれらを体現する先輩たちの人物の大きさでした。
 この新日鐵住金という人間集団は、皆さんがこの中で人生を送り、人間的に成長する場として決して不足のある場ではありません。どうか当社の多様な人材に接し、又、「鉄鋼」という窓から世の中を洞察する目を養って頂き、一回りも二回りも大きな人間に成長して頂きたいと思います。

 これからの長い会社生活、曇る日も照る日もあります。又、穏やかな凪(なぎ)の日もあれば、激しい嵐の日もあろうかと思います。心身の健康を第一に、上司・先輩の話をよく聞き、同僚と語らいながら、「焦らず、慌てず、しかし、侮らず」、まずは着実に仕事の基礎を身につけて頂き、そして、将来大きな仕事をしていただくこと、これを心から期待して、皆さんへの私からのエールと致します。

以 上






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