2017年 年頭にあたって (社員向けトップメッセージ:代表取締役社長 進藤 孝生)

2017/01/04

新日鐵住金株式会社

2017年 年頭にあたって
(社員向けトップメッセージ:代表取締役社長 進藤 孝生)


   年頭にあたり、本年の重点課題とその対応の方向性について、所信を述べたいと思います。

 昨年、2016年は想定外のことが色々と起きた1年でした。英国はEU離脱に向けた一歩を踏み出し、米国の大統領選では大方の予想を覆す形でトランプ氏が当選を果たしました。これらの背景には、世界的な所得格差の拡大、中間層の疲弊、移民労働力の問題等があり、東西冷戦終結以降、金融を中心として米国が主導してきたグローバリズムの矛盾が露呈しはじめたと捉えることができると思います。結果として、世界各地で、自国の利益のみを考えるいわゆる“内向き化”とも言うべき孤立主義的・保護主義的な傾向が生じ、世界の政治・経済情勢は先行きの不透明感を増すこととなりました。

 こうした中、昨年は鉄鋼業にとってまさに「忍耐」の年でした。
 年初から、鋼材市況は回復に転じたものの、大幅に円高が進行するとともに、年央からは原料炭の価格が急騰し、マージンが圧縮されることとなりました。また世界各国でアンチダンピングやセーフガード等の保護貿易的措置も急増しました。当社の収益も、上期決算において中間配当を見送ることとなる等、極めて厳しい状況にあります。 
 また、鉄鋼業全体で13件、そのうち当社で7件の重大災害を発生させてしまったことは、痛恨の極みです。経済産業省等、関係省庁のご指導の下、官民による協議会が設置される動きとなりましたが、この協議会への参加を通じて当社の安全実力の現状を改めて客観的に見つめ直し、何としても安全レベルの向上を実現しなければなりません。
 一方、世界鉄鋼業の共通課題となった「中国等の過剰生産能力問題」や、「地球環境問題」は、それぞれグローバル・フォーラムの設置や、パリ協定の発効等の形で、課題解消に向けた世界的な動きが始動した年となりました。
  
 さて、本年、2017年の鉄鋼業を取り巻く環境は、過剰生産能力の存在の下、原料価格が高止まる等、引き続き厳しい状況が見込まれます。一方、足下では、マーケット環境は反転の兆しを見せています。当社が主要マーケットの一つと位置付けるASEAN等の新興国においても、インフラ投資の加速や産業高度化に伴う高機能材需要の高まりを背景に、ミドル・ハイグレードの鋼材需要は着実に増加する等、当社にとって追い風となる要素も見え始めています。
 こうした環境認識も踏まえ、本年、重点的に取り組むべき課題を3点お話します。

 一点目は、安全の再構築です。
 当社はこれまで、全社でハード・ソフト両面から災害の再発防止策を推進するとともに、各製造拠点においても改めてリスク抽出を進め、対策を展開してきたことで、災害度数率は近年着実に改善してきました。それにも関わらず、昨年7件もの重大災害が発生したことは、この成果をいわば帳消しにするものであり、猛省しなければなりません。当社の安全は文字通り「全社非常事態」にあると認識する必要があります。
 こうした認識の下、2017年を当社の「安全体質特別強化年」と位置付け、重大災害ゼロを実現したいと思います。その実現のために、「安全上の課題が多い職場に対する重点支援」、「本質安全化の加速」、「繰り返し災害の撲滅」、「安全に関する業務運営とその体制の整備・強化」、「協力会社の安全レベル向上に資する施策の実行」の5つの柱で対策を講じ、これを徹底していきます。
 
 重点的取り組み課題の二点目は、今次中期施策の完遂です。
 事業環境の激しい変化もあり、現在実行中の2017年中期で掲げたROS/ROE等の財務的な数値目標に対して、現状はまだかなりの乖離があります。しかしながら、ここで大切なことは、当社の基本戦略に基づいて計画で掲げた諸施策を「やり抜くこと」です。これらの施策を完遂し、体質を一層強化していくために、4つのポイントをお話します。

 ポイントの一つ目は、足下実行中の下期予算目標の達成です。操業・設備面では、各製造拠点とも実質フル生産のもと、設備能力を最大限発揮できるよう安定稼働に取り組むとともに、計画した技術諸元をしっかりと達成し、コスト改善に結実させて頂きたい。また営業面では、原料高の中、お客様への理解活動をしっかりと行い、マージンの確保をお願いします。加えて、業務の基盤となる営業系システムの統合も確実に完遂して頂きたい。

 ポイントの二つ目は、「設備」と「人」に着目したマザーミルの競争力強化です。
「設備」の面では、効率性も意識しながら、計画的なリフレッシュや着実な修繕費投入を進めてきた結果、長時間にわたる設備休止は減少するなど、手応えを感じています。トラブル対策の全社横展開を着実に実施するとともに、網羅的な点検と一歩先をいく保全の実行により、安定生産を支えて頂きたい。
「人」の面では、効率化は引き続き追求する一方で、2016年から採用人数を拡大しました。早期戦力化を進めて人的裕度を確保し、以って円滑な技術・技能伝承を進めて頂きたい。
 
 ポイントの三つ目は、グローバル戦略の深化です。業績指標、即ちKPIの見える化を進め、マネジメントを効率化・高度化したことにより、海外事業の収益は、全体で見れば黒字化を果たしました。蓄えてきたノウハウを大いに活用し、一層の収益拡大に取り組んで頂きたいと思います。

 ポイントの四つ目は、グループ総合力の強化です。本年、公正取引委員会の認可を前提に、高炉一貫メーカーである日新製鋼㈱を新日鉄住金グループに迎え入れる方針です。これが実現した暁には、今まで以上にグループ内の連携を深めるとともに、全社ベストの戦略の下、シナジーの早期最大化を目指したいと思います。また、非鉄セグメントを担う各社におかれても、各分野の変化を機敏に捉えて体質強化に取り組むとともに、同時にグループ各社の強みやノウハウを持ち寄り、結集させることで新商品開発につなげる等、グループ総合力の底上げを図って頂きたいと思います。

 以上、4つのポイントに注力し、今次中期施策を完遂することで、基盤をしっかりと固めていきたいと思います。

 本年の重点的取り組み課題の三点目は、こうして固めた土台を基礎に、現中期の次の中期期間となる2018年度以降を見据え、当社が進むべき方向性について前広に議論し、次中期に向けた検討を行い、その実行の準備を整えることです。

 今、世界の鉄鋼業界の競争環境は猛烈なスピードで変化しようとしています。そのことを念頭に、次世代を見据えて柔軟性と大胆さを持って当社が今後なすべきことを検討していく必要があります。具体的には、以下述べる4つの観点から検討を深めていきたいと思います。

 まず、一つ目は技術開発です。当社の競争力の源泉は技術力です。この強みに一層磨きをかけるため、10年・20年先も見据えた技術開発を進めます。

 二つ目は品種事業戦略です。新日鉄住金グループのブランドを最大限に活かす戦略と施策の検討を進めます。

 三つ目は製鐵所等の国内製造拠点です。これまでと同様、不断に競争力強化に取り組みます。「攻めのIT」の観点から、診断技術の高度化や予知保全の強化等、最適操業条件の変化や設備の高齢化にも確実に対応できる効果的・効率的な設備保全のあり方を更に追求します。

 四つ目は経営のソフト面です。まず、「標準化」の活動に全社をあげて取り組みます。標準化は高度IT技術との融合を経て、次世代のマネジメントのあり方につながる基盤となるものと考えています。これは最適生産体制を下支えするとともに、人材育成や安全・品質管理等の面における抜本的な業務改善に資するものです。そして将来的には、海外も含めた当社グループの総合力の底上げにも寄与する施策と考えています。


 本年2017年も想定外の事象が起こるかもしれません。将来を容易には想定できない不確実な状況に我々はいます。そうした中にあっても、当社は政治や経済、テクノロジーの大きな流れの変化を見据えながら、着実に前に進んでいきたいと思います。今後とも当社は、設備と人の再構築に経営資源を重点的に投入していきます。これは言うまでもなく、当社が今後も日本をベースとしたグローバルカンパニーとして世界の鉄鋼業を主導していく意思を示すものであります。ライフサイクルの長い大型設備もリフレッシュを進め、先達から受け継いだ鉄鋼業を後進につないでいくこの取り組みは、世界鉄鋼業の歴史の中で初めてとも言える挑戦であります。皆さんの一つひとつの仕事は、この歴史的な流れの中で次世代の財産を築きあげる重要な仕事であることを肝に銘じ、誇りを持って日々の業務に取り組んで頂きたいと思います。

以上






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