2016年度入社式 社長メッセージ (代表取締役社長 進藤 孝生)

2016/04/01


新日鐵住金株式会社

2016年度入社式 社長メッセージ (代表取締役社長 進藤 孝生)


 皆さん、ご安全に! 
 これは当社において全社で共通する挨拶であります。今後、様々な場面で使うことになると思います。是非大きな声で挨拶してください。
 さて、改めまして、新入社員の皆さん、入社おめでとうございます。皆さんは本日より、新日鐵住金の一員として共に「“鉄鋼”という窓」を通して世の中を見つめ、実社会における様々な課題に対峙していくことになります。これから皆さんと一緒に仕事ができることを本当に嬉しく思います。会社を代表して皆さんを心から歓迎します。

 新日鐵住金は、前身である新日本製鐵と住友金属工業の時代も含めて顧みると、戦後の高度成長期における「設備能力の拡張」、日本経済の成熟期における「厳しい合理化」を経て、現在のグローバル化の時代に至るまで、我が国鉄鋼業の発展を担い、そして日本経済の成長の礎となってきた会社であります。
 我々は、先輩方が築き上げてきた歴史や企業文化を受け継ぎ、それらに新たな価値を加えて後世に引き継いでいかねばなりません。皆さんはこのような歴史的流れの中で仕事をするということをまずもって認識し、そして是非これを誇りに思って頂きたいと思います。

 さて、本年2016年、世界の政治・経済は大きなうねりの真っ只中にあります。日本経済は、年初より株価の急落、円高の進行、マイナス金利の導入等、大きな変化に見舞われています。世界に目を向けると、中国やASEAN等をはじめとする新興国経済の成長鈍化や原油価格の低迷が景気に影を落としています。政治的にも、混乱の続く中東、難民問題に揺れる欧州、周辺諸国との緊張が高まる北朝鮮等、世界各地で先行きが見通しにくい状況となっています。
 こうした中、当社が対峙する鉄鋼マーケットも大変厳しい環境にあります。近年、着実に拡大してきた世界の鉄鋼需要は、新興国経済の減速や原油価格低迷の長期化等を背景に伸びが鈍化しており、現在では供給過剰が鮮明となっています。この結果、鋼材市況は大きく崩れ、世界中の鉄鋼メーカーが苦境に陥っています。世界で約7億トンにも上る需給ギャップの過半を占める中国では、今年に入ると政府が過剰能力削減に向けた動きを具体化させる等、少しずつ改善の兆しも見え始めてきたところではありますが、皆さんは総じてこの厳しい環境の中で、当社における第一歩を踏み出すこととなります。
 しかし、当社は、現下の環境においても、これに堂々と対峙し、他社に先駆けて果敢に課題に挑み続けて行きます。
 当社の基本戦略は、「技術」「コスト」「グローバル」を競争優位性の柱とし、国内事業と海外事業を車の両輪として成長していくことであります。特に当面は、「設備」と「人」に経営資源を重点的に配分して国内マザーミルの製造実力・技術開発力を高めると共に、そこで培った競争力を武器に伸びゆく世界のマーケットにおいて海外事業を深化させていくこととしています。
 本年2016年は「忍耐・我慢」の年となるかと思いますが、この基本戦略は変わるものではありません。そしてその先の未来には、世界中どこにいても「新日鐵住金」の名前が聞かれるような圧倒的なプレゼンスをもった会社を築いていくことが、当社、ひいては日本の鉄鋼業を更に発展させていくことにつながるわけであります。皆さんも今後様々な業務に携わることになると思いますが、その一つひとつがこれに資する重要な役割を果たすものであります。是非やりがいを感じて業務に取り組んで頂きたいと思います。

 さて、これから新日鐵住金の一員となるにあたり、皆さんへのお願いをお話しします。
 まず、全社員に共通することですが、当社にとって全てに優先する最も大切な価値は「安全」です。とりわけ製造現場に直結する職場では、安全な職場・仕事の仕方に向けて日々懸命な努力を重ねております。その根幹にあるのは「規律ある行動」・「ルールの遵守」であります。これは当然のことながら広く社員全員に当てはまることであります。皆さんもまずはこのことをしっかりと心に刻んで下さい。

 その上で、特に新入社員の皆さんには、次の3点をお願いしたいと思います。

 1点目は、「なぜこの会社を選んだのか」を各自、今一度再確認して頂きたいということです。経営学の教科書は「企業経営とは事業環境変化への対応である」と教えています。正にその通りであります。10年、20年の単位で事業環境は必ず変わります。事業環境が変われば企業の経営戦略も変えていかなければなりません。これからの長い会社生活において、皆さんにもそういう判断をすべき時が必ず来ます。経営とはそういうものだからです。その時に問われるのが「わが社は何のために存在するのか?」という根源的な問いであります。その際、思考の軸として甦ってくるのが、「なぜ自分はこの会社を選んだのか」という、今、この時点の皆さん一人ひとりの決意であります。この決意を各自再確認して、忘れないよう心に刻んで頂きたいと思います。これが1点目です。

 2点目は、「具体的な仕事を通して基本的な業務知識と能力を習得して頂きたい」ということです。仕事をしていく上では、まず業務が発生する現場に足を運び、素直に事実を見ることが必要です。現場の事象に精通した上で、諸先輩に教えを請い、会社の教育プログラムを受け、そして自分で考え、また、文献を読み、業務知識・専門知識を身に付けてほしいと思います。また、グローバルに広がる当社のビジネスにおいて、色々な国の人たちと仕事をする場面もあると思いますが、相手の思考の背景に横たわる異なる文化・価値観を理解するように努めてほしいと思います。
 その上で、また、そのためにも、皆さん共通に身に付けて頂きたい基本的な能力が「語学力」と、「プレゼンテーション能力」すなわち、判り易い論理を組み立てて、相手に伝える能力です。いずれもまずは「相手が聞きたいと思う、意味のある内容」を自分が持っていることが前提ですが、仕事を前に進めていく上で、コミュニケーションツールとしての言語能力とプレゼンテーション能力は大切です。これが2点目です。

 3点目は、「会社生活を通じて人間的成長を遂げて頂きたい」ということです。私がこの会社を選んだのは、「鉄という産業の基礎素材を安価に提供して日本経済の役に立ちたい。」ということでありました。しかし、本当の理由は企業文化に属するものであったと思います。議論を尊び、正論なら上司・部下の隔てなく自由に議論のできる「議論に上下なし」という気風、個別企業益もさることながら常に日本経済全体を考える伝統、そしてそれらを体現する先輩たちの人物の大きさでありました。
 この新日鐵住金という人間集団は、皆さんがこの中で人生を送り、人間的に成長する場として決して不足のある場ではありません。どうか当社の多様な人材に接し、また、「鉄鋼」という窓から世の中を洞察する目を養って頂き、一回りも二回りも大きな人間に成長して頂きたいと思います。

 これからの長い会社生活、曇る日も照る日もあります。又、穏やかな凪の日もあれば、激しい嵐の日もあろうかと思います。心身の健康を第一に、上司・先輩の話をよく聞き、同僚と語らいながら、「焦らず、慌てず、しかし、侮らず」、まずは着実に仕事の基礎を身につけて頂き、そして、将来大きな仕事をしていただくこと、これを心から期待して、皆さんへの私からのエールと致します。

以 上





ツイート Facebookでシェア


このページの上部へ

ここからフッター情報です