2015年 年頭にあたって (社員向けトップメッセージ:代表取締役社長 進藤 孝生)

2015/01/05

新日鐵住金株式会社

2015年 年頭にあたって (社員向けトップメッセージ:代表取締役社長 進藤 孝生)


 年頭にあたりまして、本年の重点課題とその対応の方向性につきまして述べさせていただきます。

 まず、昨年を振り返って、名古屋製鐵所において発生した5件の事故により、地域の皆様やお客様をはじめとして関係する皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけするとともに、企業として社会からの信用・信頼を大きく損なうこととなってしまいました。この事実を深く受け止めて真摯に反省し、グループ会社も含め全社をあげて再発防止徹底に向けて各種対策を実効あるものにしていかねばなりません。
本年は、原点に立ち返って事故・トラブルの防止に取り組み、引き続き全社一丸となってこの危機を乗り越えていきたいと思います。

 さて、足下の経済環境を見渡しますと、日本経済は、昨年4月の消費税増税に伴う反動減の影響により、昨年の第2四半期までは市場予想を下回るマイナスの経済成長率となりましたが、年末の衆議院総選挙の結果、所謂「アベノミクス」の継続が確認され、今後は反動減影響の解消や、設備投資・輸出の持ち直しなどを背景に、景気は緩やかに回復すると想定しております。
 世界に目を転じますと、米国経済は好調な民間需要を背景に堅調に推移しておりますが、中国・その他新興国経済の成長鈍化や、欧州経済の回復遅れなどにより、世界全体としては緩やかな成長にとどまっており、当面はほぼこの動きが継続するものと認識しております。

 こうした経済環境の下、国内の鉄鋼需要は、一過的な調整の可能性はありますが、住宅投資の底入れや、設備投資の増加を背景とする需要の回復が期待され、今後とも全体として堅調に推移すると想定しております。また、成長が見込まれる世界経済の中で、海外鉄鋼需要も緩やかに拡大していくと見ております。

 一方で、本年以降、東アジアにおいては、相次いで新たな鉄源製鉄所が稼働し、足下年間約5億トンとも言われる世界的需給ギャップは更に拡大する見込みです。また新興国ミルの品質面でのキャッチアップもあり、汎用鋼分野のみならず、当社の得意領域であるミドル・ハイグレード分野においても、競合が激化することが予想されます。従って、技術先進性に一層磨きをかけ、またコスト競争力を向上させるなど、早急に事業体質の強化を進めていかなければ、当社のプレゼンスの低下・喪失は避けられません。

 こうした環境の下、本年の重点課題と、対応の方向性をお話し致します。

 昨年の一連の事故から、「企業は社会からの信用・信頼無くして事業の継続はできない」ということを、我々は改めて痛感致しました。一人ひとりがこのことを再認識し、コンプライアンスの徹底はもとより、安全・環境・防災・品質等における重大リスクの排除と重大事故ゼロの実現に取り組み、地域・お客様・社会からの信用・信頼の回復を実現していくことが必須であります。
その上で、「技術」・「コスト」・「グローバル」をキーワードに、車の両輪である国内事業と海外事業を強化して、世界の競合者との戦いに打ち勝っていきたいと思います。
この方針の下、本年は具体的には次の3点について、新日鐵住金グループの総力をあげ、重点的に取り組んでまいります。

 まず第一に、当社の競争力を真摯に見つめ直し、その源泉である製造実力について、「設備」と「人」に着目して再構築を進めます。
当社グループはこれまでも、製造基盤整備の推進、協力会社を含めた世代交代への対応、協力会社との連携の強化、最適生産体制下での一貫能力フル発揮の追求等により、製造実力の向上に取り組んでまいりました。しかし、当社の製造現場は時代の変遷とともに大きく変化しております。とりわけ「設備」と「人」について、新技術の開発・導入や世代交代などの社内外における様々な変化に伴い、新たな課題が発生しています。これに対応するため、当社の実力を改めて点検し、再構築する時に来ていると私は考えます。
 まず「設備」の面では、設備の保全・更新に関する基本的な考え方とそのフォロー体系・体制について、設備年齢や技術の進化、事業環境の変化等を踏まえて再点検、再構築していきたいと思います。国内の製造拠点が今後も当社グローバル戦略におけるマザー工場であり続けるために、大型修繕や大規模設備の更新等について、長期的な目線で計画化し、一つひとつを的確なタイミングで着実に実行していきます。
 また「人」の面では、スタッフ・製造現場双方において、世代交代やグローバル展開に伴う人員所要増大へのタイムリーな対応の強化とともに、業務上のニーズやリスクを従来にも増してきめ細かく想定した上での採用・配置・育成に注力してまいります。同時に、この人的基盤を強固なものとする為にも、業務の効率化とともに、社員一人ひとりの能力の開発・向上、組織としてのトータルアウトプット最大化を引き続き追求致します。

 第二に、グローバル事業推進の深化であります。
 昨年は各品種事業部等において、新たな商品や利用技術、ブランド等を打ち出し、また海外展開も着実に進捗させてまいりました。今後、世界の鉄鋼マーケットはミドル・ハイグレード分野においても、ますます競争が激化することは必至ですが、見方を変えれば、これは当社にとって、強みである技術先進性を発揮し、グローバルマーケットにおいて一層成長していくチャンスでもあります。一人ひとりがグローバルプレーヤーの一員であるとの認識の下、連携・連帯の気持ちを強く持って、グローバルマーケットにおける当社のプレゼンスを確立すべく新日鐵住金グループ全員で戦っていきたいと考えます。
 そのためには、従来から申してきた「国内事業と海外事業を車の両輪とする」考え方を更に深化させて、品種事業戦略に加え、需要分野別・地域別の戦略を立案・実行し、国内・海外の製造拠点をあわせた全社一貫での最適な生産体制やコスト構造の実現、販売戦略の強化、そしてパートナー企業との的確な連携を通じて、他社に対する競争優位性を確保していく必要があります。各海外事業に対し必要な支援を強化すべく、人事・財務・設備面を含め全社的な業務インフラの更なる充実を図るとともに、ベースとなる国内事業の強化も引き続き追求してまいります。
 加えて、競争力の維持・向上のためには、技術開発が不可欠であります。現在進めている「商品・構造・工法のトータルソリューション」の提案強化とともに、革新的製鉄法を含むプロセス開発を不断に追求していくことが、このグローバルマーケットにおいて他社の追随を許さない競争力の確保につながります。技術的優位性を持つことが、全てのグローバル事業の基礎であることを再確認し、技術に磨きをかけていく所存です。

 第三に、経営統合の完遂であります。 
 経営統合して2年3カ月が経過しました。皆さんの努力のおかげで統合は順調に進んでいると認識しています。昨年4月には製鐵所組織の統合・再編成、人事制度を含む主要業務システムの一本化を実現致しました。またグループ会社についても、機能整理や一本化によって競争力強化に資する統合を進めてまいりました。こうした取り組みの結果、中期経営計画で掲げた各指標も目標圏内に入っており、一部では超過達成も見込まれます。しかし、経営統合の効果とは、意識・行動様式や仕事の仕方・考え方が社として一体化することではじめて本当の意味で発揮されるものと私は考えます。そのためには、ベースとなるものの考え方や価値観に至るまで、一人ひとりが納得できるよう、徹底的に議論を尽くすことが重要であります。現場の最前線の皆さんから役員に至るまでが率直で正直な議論を展開し、一丸となって経営統合を完遂させたいと思います。

 最後に、私が昨年より繰り返し述べてきた「Honor is Equal」、即ち役割や貢献の仕方は違っても名誉は平等にわけ与えられる、そして「練習は不可能を可能にする」、この言葉を改めて皆さんと共有したいと思います。我々ものづくりの会社にあって、組織・業務運営の要諦は「チームワーク」と「日々の努力」であると私は考えます。チームプレーの精神の下、一人ひとりがそれぞれの職場で愚直に自らの役割と責任を果たしていくことで、会社は危機を乗り越える力をつけ、着実に成長していきます。本年は「総合力世界No.1鉄鋼メーカー」に向けた地固めを行い、大競争に打ち勝つ力を確固たるものにしていきたいと思います。


以 上




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