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2013年 年頭にあたって(社員向けトップメッセージ:会長兼CEO 宗岡 正二)

2013/01/04


新日鐵住金株式会社

2013年  年頭にあたって
(社員向けトップメッセージ:会長兼CEO 宗岡 正二)


 統合会社にとって初めての新年になりますが、昨年10月の統合以降、各部門で順調なスタートを切ってくれており、これまで統合に関わった皆さんの努力にあらためて感謝したいと思います。
 また、10月以降、友野社長兼COOと共に、製鉄所、事業所を12箇所回り、現場を見て、所員の皆さんと対話してきました。各所で、今回の統合を前向きに捉えて、近隣の、あるいは品種の重なる事業所間でのシナジー発揮を含めて、自ら明確な課題を設定し、積極果敢に、かつ一致団結して課題解決に取り組んでいる姿を目の当たりにし、大変嬉しく、かつ頼もしく感じています。

 さて、足元と今後の経営環境ですが、2年前の統合検討開始の公表時点に比べて、残念ながら、はるかに深刻な、かつ容易ならざる状況にあると認識しています。
 世界及び日本経済の構造変化と、鉄鋼業の構造変化という、2つの大きな構造変化に、当社は直面しているのです。
 世界経済の構造変化は、先進国の財政リスクに起因したものです。これは、個々の企業レベルの問題ではなく、国家財政あるいは国家そのものへの信認の問題であるため、根が深く、また国民の大きな痛みを伴うものだけに、解決に相当の時間を要するものであります。現に、EUの金融危機は長期化する見通しであり、米国の財政問題も先行きは不透明なものとなっています。
 加えて、これまで世界経済を牽引してきた中国、ブラジル、インド等の新興国でも、成長が鈍化しています。特に中国は、成長の鈍化に加えて、経済成長に対する鉄鋼消費の弾性値が大幅に低下し、経済の鉄離れも加速しています。
 このように、世界経済はいわゆるデカップリングではなく、まさにカップリングしており、相互に連関し合いながら、激しく構造変化しつつあるわけですが、日本経済は、更に輪をかけて厳しい状況にあります。
 長引くデフレ不況からの脱却や、東日本大震災からの復旧・復興、という国家的課題に加えて、産業界には、いわゆる6重苦が重くのしかかってきています。特に足元では、円高やエネルギーコスト問題によって、製造業の海外移転が加速しています。貿易赤字が定着しつつあり、経常収支も赤字化が予想されるなど、このままでは、日本が世界経済のなかで取り残され、地盤沈下していきかねない状況にあります。
 こうした経済の大きな構造変化に加えて、鉄鋼業自体の構造も大きく変化しています。2007年頃までの中国の鉄鋼バブルを背景として、世界各地で能力拡張が進み、今や15億トンの需要に対して、世界の生産能力は20億トンにも達しており、大きな需給ギャップが発生します。
 その結果、欧州では、アルセロールミッタルがいくつかの製鉄所の閉鎖を発表し、米州大陸では、ドイツのティッセンクルップがブラジル及び米国の1兆円規模の製鉄所設備の売却を進めているところです。
 また、今や世界一の鉄鋼生産国となった中国では大半の鉄鋼会社が赤字に転落し、これまで好調であった韓国POSCOも資産圧縮を進めざるを得ない等、名だたる世界の鉄鋼メーカーが事業構造の抜本的見直しを余儀なくされています。 
 国内でも、これまでの建設需要の減少に加えて、ものづくり企業の海外移転が加速するとともに、現地調達化が大幅に進展するなど、国内需要は6千万トンレベルから従来の8千万トンレベルに回復するとは考えづらく、市場構造は大きく変化しています。
 輸出マーケットの構造も大きく変化しています。これまで日本ミルが市場の中心的地位を占めていたアセアンマーケットにおいて、中国を中心とした新興ミルがミドルグレードでの存在感を増し、激しい競争となっています。また、これまで日本ミルの独壇場であった亜鉛メッキやブリキ、電磁、シームレスといった高級品市場においてさえ、韓国、中国等の競合ミルの新規参入により価格が大幅に低落し、収益確保が困難な状況となっています。
 鉄鋼業のこうした構造変化の中で、当社は、競争が最も激しいこの東アジア地域で勝ち残っていかねばならない、という極めて厳しい現実に直面しているのです。

 従って、当社はこの「経済」と「鉄鋼業」の2つの大きな構造変化に対応して、自らの構造改革を一刻も早く成し遂げなければなりません。
 しかしながら、我々は、これまでの欧州や米国の鉄鋼業による、いわば後ろ向きとも言える構造改革ではなく、統合によって、むしろ前向きと言うべき、大変大きなかつ、他の追随を許さない成果を出し得る構造改革の手段を手にすることができているのです。
 統合によって変えるべきものを徹底的に変えていかねばなりません。収益構造改革、財務構造改革、生産構造改革等、いずれも待ったなしです。
 一方で、お客様との信頼関係や地域との信頼関係、労使間の信頼関係等の変えてはならないものは徹底的に守り抜いていく所存です。
 足元の状況は厳しいものの、鉄鋼業の将来を悲観する必要は全くありません。現在でも世界で15億トンの需要があるわけですが、2020年には20億トンに達するという予測もあります。従って、当社が世界の鉄鋼業界のなかで勝ち残れればよいのです。
 そのために当社がなすべきことは、大きくまとめると2点に集約されると考えています。
 まず第1点目は、社内の総力の結集です。あらためてBest for the New Companyの精神のもと、旧両社の強みを徹底的に結集させていかねばなりません。旧両社の壁を打ち破り、心を一つにして前向きに議論し、そして実行していってもらいたいと思っています。
 第2点目は、「競争基盤の確立」です。その実現のためには、10月1日にもお話した4つの施策を中核に据えて、迅速に、かつ全力で取り組む必要があります。
 4つの施策の第1は、「コスト競争力の強化」です。新興ミルとの生き残りをかけた競争を勝ち抜くことのできるコストレベルを早急に実現させなければなりません。個別ラインのコスト削減はもとより、旧両社の壁を超えた、設備の効率的運用や統廃合による全社最適な生産体制の構築についても、グループ会社や協力会社の皆さんとも協力して、聖域を設けずに果断に検討、実行して参ります。
 第2は「技術先進性の発揮」です。競合他社の技術力が向上するなかで、研究開発部門、製造現場、そして営業部門が一体となって、商品開発、製造技術、プロセス開発、省エネ・環境技術等、全ての面で一段と高いレベルを実現し、競合他社との差を再び拡大させなければなりません。
 第3は「鉄鋼事業のグローバル展開」です。経済成長に伴って鉄鋼需要の増加が見込まれる新興国では、競争は激しいものの、お客様とともに成長・発展するチャンスそのものは大きく開けています。他社を圧倒するグローバルな生産・供給拠点の拡充に着実に取り組んで参ります。海外で働く皆さんは大変なご苦労も多いことと思いますが、担当地域の情勢やお客様のニーズを的確に把握し、現地のパートナーやスタッフと協力して事業を拡大することが、当社グループの成長に直結するという気概を持って、業務にあたっていただきたい。
 第4は「製鉄以外の分野での事業基盤の強化」です。各セグメント会社は、事業の選択と集中により、各社の強みを発揮できる体制を整えつつあります。魅力ある商品・サービスの提供を通じて、マーケットにおける存在感を増すと共に、コスト改善や財務体質の強化によって、事業基盤の安定化にも注力してもらいたい。
 以上お話した、第1点目の「旧両社の力の結集」にも、第2点目の「4つの施策による競争基盤の確立」にも、時間をかけている余裕はありません。シナジーを早期に発揮させて、競争基盤をいち早く確立させなければ、厳しい競争には勝ち残れないのです。従って、この2つのなすべきことに足元から全力で、かつ同時並行的に取り組まねばなりません。
 そうした意味からも、新会社の中期計画のスタートの年となる今年は非常に重要な一年となります。今回の中期計画の成否と当社の存亡、即ち「総合力世界ナンバーワンの鉄鋼メーカー」として生き残り、成長していけるかどうかは、今年のスタートダッシュのスピードと到達点にかかっている、といっても、決して過言ではないのです。
 自ら掲げた「総合力世界ナンバーワンの鉄鋼メーカー」という高い目標の実現のために、私自身も友野社長兼COOと共に、先頭に立って努力して参ります。新日鐵住金グループ全員で力をあわせて、今年一年精一杯頑張って参りましょう。

以 上




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