技術開発
素材としての可能性を極限まで引き出すこと、
すなわち「鉄を極める」という目標に向け、私たちは挑戦し続けています
油田・ガス田の掘削に使用される油井管は、井戸の深さに応じて何本もの鋼管を連結して使用します。継手箇所は、気密性等を確保するために、通常グリスが塗布されます。しかし、グリスに含まれる重金属が海中や地中に溶けだすことによる環境汚染が大きな問題になっています。
そこで当社は、仏バローレック社と共同で、グリスを使用せずに鋼管の連結が可能な画期的な特殊継手CLEANWELL®DRYを開発しました。環境負荷物質を一切排出せず、環境にやさしい製品です。
油田・ガス田の掘削深度は、2,000~3,000m級の浅い井戸の枯渇が進み、近年、深くなる傾向にあり、8,000~10,000mに達することもあります。深い井戸では、熱や圧力も高くなり、過酷な環境下でも破損せず気密性を保持する継手が必要です。また、掘削・生産過程で、一度締めた継手を緩め、締め直すことがありますが、締め直しを行っても継手に焼付き(※)が発生せず、気密性を保持することが重要になります。
従来は、グリスを塗布することによって、気密性、耐焼付き性を確保していましたが、継手を締める際に、グリスが流出し、グリスに含まれる鉛や亜鉛などの重金属による海洋生物や人体への悪影響が指摘されていました。また、油井管の内側にはみ出したグリスの井戸内への落下・堆積による作業トラブル、継手締め直しの際のグリス洗浄・再塗布作業負担など、掘削効率の低下要因にもなっていました。
CLEANWELL®DRYは、継手の内面およびパイプ管端ねじ部に固体被膜を形成することにより、グリスを一切使用せず、気密性と耐焼付き性を確保します。すでに、環境規制の最も厳しい北海地域の海洋掘削現場で採用されており、オイルメジャーをはじめとする世界中のお客さまから高い評価を得ています。
※焼付き
接触する物体の接触面が摩擦摺動する際に、潤滑不足などにより金属の一部が相手の表面に溶着する現象です。継手のねじ部で焼付きが起こると、所定の性能を発揮できなくなります。