技術開発
素材としての可能性を極限まで引き出すこと、
すなわち「鉄を極める」という目標に向け、私たちは挑戦し続けています
当社は、これまで長年にわたり、製銑プロセスでの省エネルギー・環境対策のための技術開発に取り組んできましたが、その歩みを止めることはありません。ここでは、その一例として数値シミュレーションを用いた、省エネへの取り組みについて説明します。
鉄は高炉で生みだされますが、その仕組みは、高炉頂部から鉄鉱石とコークスを装入し、下部より高温空気(熱風)を吹き込んでコークスによる鉄鉱石の還元反応を引き起こすことにより、鉄を取り出すというものです。その熱風をつくりだすのが、熱風炉と呼ばれる巨大な熱交換装置です。熱風炉は、高温燃焼ガスにより蓄熱レンガを加熱する燃焼モードと、高温となった蓄熱レンガ内に送風して1,200℃を超える熱風を作り出す送風モードが交互に切替わります。通常熱風炉は高炉1炉に対して3~4基設置され、連続的な熱風の供給を可能としています。
これに対して、送風能力に及ぼす炉体構造(炉サイズ、蓄熱レンガ量)及び操業条件の影響を評価できる非定常熱流動解析モデルを構築し、これにより構造設計、操業条件設計を適正化することにより省エネに貢献しています。
当社が製造するシームレスパイプは、その品質の高さから、過酷な環境下での耐久性が要求される石油・ガス採掘用途や、火力発電などのボイラー用途に使用されています。
石油の採掘では、浅い井戸の枯渇が進んだことから、近年、採掘深度が深くなる傾向にあり、また、クリーンエネルギーとして注目される天然ガスの採掘は、石油に比べて地下深い場合が多く、いずれもより過酷な環境に耐えることができる鋼管が求められています。また、火力発電のボイラーでは、より高温・高圧の状況にも耐えられる鋼管が求められています。発電効率を上げて環境負荷を減らすためには、ボイラーで発生させる蒸気をより高温・高圧にすることが決め手となるからです。
このようにますます高まる高級鋼管のニーズに応えるには、そうした材料を開発するだけでは実用化につながりません。耐久性に優れた素材は加工性に劣ることが多いため、これを設計通りにシームレシスパイプに仕上げる高度な製造技術が必要になります。この製造技術の開発に、数値シミュレーション技術が大きく寄与しています。
シームレスパイプの製造工程の一つであるマンドレルミルでは、管を圧延して長く薄く伸ばし、管の厚みを製品近くにまで仕上げていきます。
マンドレルミル
合金成分の多い高級鋼管では、熱間加工性が劣るために、マンドレルミルで長く薄く伸ばす過程において、様々な欠陥が生じやすくなります。当社では、蓄積されたノウハウと、数値シミュレーション技術の両方を駆使して、最適な金型(ロール孔型)の組み合わせを設計、適用することにより、他社では真似できない高級鋼管のマンドレルミルによる安定製管を実現しています。
次に示します例は、厚さが進行方向に不均一となるような欠陥の生じやすさを、当社の数値シミュレーションを用いて、当社の製造条件と他社の製造条件とを比較したものです。色が赤に近いほど、欠陥が生じやすいことを示しています。数値シミュレーションによって、鋼管の形状を整えるための金型(ロール孔型)の配列を最適化した当社条件では、他社条件に比べ、均一な厚さで製造できることを確認しています。
当社条件
他社条件