5.亜鉛めっき鋼管の腐食

A 亜鉛めっきの構造

亜鉛被覆には、溶融めっき,電気メッキ,溶射などの方法があります。水配管用炭素鋼鋼管(JIS G 3442)や配管用炭素鋼鋼管(JIS G 3452)の白ガス管は、溶融めっき法で製造されます。
溶融めっき被覆は、表面「純亜鉛層」と「鉄-亜鉛」の合金層から成っています。純亜鉛層と合金層の腐食速度は概ね同じ程度です。

亜鉛メッキ断面ミクロ
(ノーエッチ、倍率 200)

B 亜鉛めっきの耐食性

a.大気中

亜鉛めっきの大気中における耐用年数は、環境によって違いがあり、一概に何年と言い難いものです。
耐久性を調べるには、塩水噴霧試験,ウェザーメーター等の促進試験によることが多く、実際の環境には腐食要因が多岐複雑に作用しますので促進試験と実際とはそぐわないことが多く、判定することは困難なことが多いのです。
亜鉛を大気中に曝露すると、表面に腐食生成物の皮膜が形成されますが、この皮膜の各要因に対する耐食性、緻密度および皮膜の定着度によって耐用年数が決定されます。
一般に亜鉛は、鉄素地に対して卑電位を示すので犠牲陽極となり、鉄を保護すると思われがちなのですが、環境的に電解質(水膜)が連続していない場合はその範囲がせばめられることや、被膜を形成すると犠牲溶出が抑えられることになるので、犠牲陽極効果はあまり期待できないのです。

b.水中

水中の耐食性は、水のpHと温度が大きな要因となります。
常温の場合、亜鉛は次図に示すとおりpH6~12の範囲で、有効な耐食性を示し、これ以下の酸性環境では、水素発生と共に著しく侵され、またpH12.5以上では亜鉛は、Zn+OH-+H2O → HZnO2-+H2の反応に従って急速に侵され、溶解性の亜鉛酸塩を生成します。

pHと亜鉛の腐食速度との関係
また温水の場合、次図に示すとおり、50℃以下で有効な耐食性を示しますが約60℃付近から急激に腐食されます。
多量の空気を含む温水中(約60℃以上)で、炭酸塩、硝酸塩を含む水質であった場合、亜鉛と鉄は極性の逆転が起こります。即ち、亜鉛は犠牲陽極とならず鉄より貴な電位を持つようになり、亜鉛めっきの素地鉄が孔食を起こす場合がある。

温度と亜鉛の腐食速度との関係

c.土壌中

土壌中の腐食性は電食を除けば、土壌条件で決定されます。土壌の比抵抗、pH、バクテリア、水分、通気性および塩類濃度などが腐食要因となります。さらに土中ではごく短い区間においても、土質の不均一性により腐食電池(マクロセル)を形成します。腐食電流が土壌中に流出する箇所で、亜鉛めっきが溶出します。

C 亜鉛めっき鋼管の使用上の注意

  • 亜鉛は、pH6~12の範囲で安定であり、それ以下では激しく腐食されるので、pH6以下の酸性土壌中での使用は避けるべきです。たとえば石炭がらを含んだ埋立地などで使用すると硫黄分が硫酸となり陽極部を形成、炭素分は金属表面に接して陰極部を形成するので、激しい腐食を起こします。
  • 従って、端的に言えば、亜鉛めっき鋼管をそのまま地中埋設配管をそのまま地中埋設配管として使用するのは避けるべきで、外面樹脂被覆鋼管と外面樹脂被覆継手との組合わせで、土壌環境が完全に遮断して、使用するべきでしょう。日本製鉄では、製品コーナーで示しますように、防食鋼管をとりそろえています。
  • 亜鉛は約60℃以上になると急激に腐食し、水質によっても亜鉛と鉄の極性の逆転が起こります。従って、温水配管に用いるのは好ましくありません。
  • 土中,水中の塩類(塩化物,硫酸塩,硝酸塩)や炭酸の濃度が高い場合、腐食生成物の保護作用が消失するため、腐食速度が大きくなるのでご使用は避けてください。たとえば井戸水には炭酸が多く含まれるものがあり、亜鉛が溶出して水が白く濁ることがあります。
おすすめコーナー
地中埋設配管にはFLP、VLP、およびNS-PELシリーズをおすすめします。
給湯用には、日鉄ステンレス鋼管株式会社のステンレス鋼鋼管をおすすめします。また、白濁赤水対策には、FLP、VLPに管端防食継手(Kコア継手、KWコア継手)をおすすめします。

おことわり

本資料は、一般的な情報の提供を目的とするもので、設計用のマニュアルではありません。本資料の情報は、必ずしも保証を意味するものではありませんので、本資料に掲載されている情報の誤った使用、または不適切な使用法等によって生じた損害につきましては、責任を負いかねます。また、内容は予告無しに変更されることがあります。

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