3.外面腐食 - 土壌腐食

土壌中の腐食作用は、一般的には大気中や水溶液中の腐食作用と同じで、水と酸素の挙動が重要な因子となります。
土壌中の水分は、鉱物質や有機物を溶解して、酸、塩、アルカリの水溶液として作用しますが、この水溶液の成分濃度や酸素濃度は土質によって違いがあり、それぞれに接する金属の表面状況などによって、金属表面に陽極部と陰極部を形成し、陽極→電解質(土壌)→陰極という電気回路ができ、陽極となった部分で金属(鉄)が、(鉄)イオンとなって溶出します。
以下に土壌中の腐食要因について述べます。

a. 比抵抗

比抵抗は、土壌中の電流の流れやすさを表す指標であり(比抵抗が小さければ小さいほど電流が流れやすい)、土壌の腐食性を示す一つの目安になります。
比抵抗は、土壌中の水分含有量と塩類濃度に左右されます。

土壌の腐食性と比抵抗の関係
腐食性 提唱者
程度 穿孔までの
年数(年)
腐食速度
(mm/year)
F.O.Waters L.M.Applegate V.A.Pritula
比抵抗(Ω・cm)
激しい 1-3 >0.125 0-900 0-1000 0-500
やや激しい 3-5 0.04-0.125 900-2300 1000-5000 500-1000
5-10 0.01-0.04 2300-5000 5000-10000 1000-2000
10-25 0.0025-0.01 5000-10000 10000-10000 2000-10000
きわめて小 >25 <0.0025 >10000 >100000 <10000

一般に比抵抗1000Ω-cm以下では、腐食は激しいとされています。

b. pH

pHが鉄鋼材料に与える腐食の影響は、概ね次図のとおりです。

  • pH<4(活性溶解)Fe→Fe2++2e-
  • 6<pH<13(被膜による防食状態)
  • 13<pH(アルカリ腐食の発生)
    Fe+4OH-→FeO22++2H2O+2e-(鉄酸イオン)

ただし中性環境付近といえども全く腐食が発生しない訳ではなく、腐食は発生します。例えばハロゲンイオン(Cl-、Br-)が存在しますと、鉄鋼材料の表面にある被膜が破壊されますので腐食は著しくなります。
実際は、ハロゲンイオンの存在により環境の電気伝導率が上がります(比抵抗が下がる。)
従って、土壌の腐食に影響を与える因子としては、
酸性土壌-------------------------pH
中性・アルカリ性土壌--------------比抵抗
を目安として考えた方がよいでしょう。

c. 水分

一般的に、水分の含有量が増大すると腐食速度も増大しますが、土壌が水で飽和されていると、酸素不足のために腐食性が減少することがあります。
金属が最も腐食しやすい水分範囲は、20~30%といわれてます。

d. 塩類濃度

土壌中に含まれる塩類のうち、可溶性の塩類(例:NaCl,Na2SO4等)は土壌の電気伝導度を上昇(比抵抗を低下)させ、電流が流れやすくなるので腐食性は増大します。カルシウム塩やマグネシウム塩は中性の条件下では、不溶性の生成物を析出し、金属表面の被膜を破壊するので、腐食を抑制します。

e. 酸素濃度

酸素濃度は土壌中の腐食の重要な因子です。酸素濃度が小さいと金属の初期腐食はかなり抑制されますが、被膜を生成しにくいので長時間になると金属表面に孔食(後述)を生じやすくなります。また、酸素濃度の不一致により、腐食が起こることは、よく知られています。

酸素濃淡電池による腐食

f. バクテリア

バクテリアは土壌中の金属腐食にかなりの影響を与えますが、一般にいわれているのは嫌気性バクテリアのうちの硫酸塩還元バクテリアによる腐食です。
この腐食の形態は、バクテリアの活動によって土壌中のCaSO4が還元され、H2Sや硫化物を生成し、これが金属を腐食すると考えられます。このバクテリアは、pH5.5~8.5の酸素の少ない土壌中で腐食を促進します。
以上の土壌性質による腐食性を要約すると、次表の通りです。

土壌の性質による影響
土壌の性質 腐食性の強弱
水分小、適当に高い電気抵抗、塩類含有少ない 弱い
水分大、塩類含有多い 中程度
水分大、電気抵抗低い 強い

以上、述べてきた腐食は、土壌の性質(土質)による局部的な電池作用によるものですが、これに対して金属の表面の一部が陽極となり、他の部分が陰極となって、一つの巨大な電池を構成するマクロセル腐食があります。
マクロセルの代表的なものには、異種金属接触電池と塩類濃淡電池があります。

g. 異種金属接触電池

金属の対地電位は土壌条件によって異なりますが、同一条件下でも金属の種類によって、それぞれに異なった対地電位を示します。
二種の金属が接触している場合、卑電位の金属は貴電位の金属に対して電気回路の陽極部となって腐食が起こります。
土壌中でこの種の腐食が起こる例は多く、ステンレス鋼と炭素鋼との組み合わせや次図のように、青銅バルブ(貴電位)につながった鋼管(卑電位)が腐食したり、また同種の鋼管であっても、古い管につないだ新しい管に腐食が起きることがあります。この場合、同種の管といっても、古い管の表面には長期間の埋設により安定した酸化被膜が形成されており、電位の点で異種の金属とみなすべきでしょう。

異種金属接触電池

h. 塩類濃淡電池など

土壌の条件が、金属表面に接する位置ごとに異なる場合、それぞれの土壌に接する金属の対地電位は変化し、電位差を生じます。これは土壌中の塩類濃度や酸素濃度(通気性)の差に起因するものであり、この場合、塩類(SO42-,Cl-)の多い土壌や酸素の少ない土壌に接する金属表面が陽極となって腐食が促進され、特に異質土壌の境界付近で腐食は起こりやすくなります。

i. 鋼面のスケール

鋼面のスケールは一般的には腐食を抑制しますが、スケールの部分的な脱落等は、局部腐食を発生させやすくなります。

海水中における表面スケールと局部腐食との関係

J. 迷走電流(電食)

大地は巨大な電導体です。地域によっては地中には電鉄レールからの迷走電流あるいは電気防食設備からの干渉電流のような外部電源による迷走電流が流れています。
迷走電流は当然電気抵抗の小さいコースをえらんで流れますが、鋼管は絶好の電導体であるため電流が流入しやすく、再び土壌中へ流出する地点で著しく腐食し、その腐食速度はきわめて大きくなります。

迷走電流による電食

k. コンクリート

コンクリートに使用されるポルトランドセメントは種々のケイ土質,陶土質等をロータキルンで約1300~1500℃に加熱したときにできる無水物です。これが水と反応してCa(OH)2,カルシウムシリケート水和物を形成します。
こうして形成されるコンクリート内部の電解液は、pH12~13となって本来安定です。(b項参照)
しかし、酸素濃度に差がある場合には、腐食が発生することがあります。

(陽極)
Fe → Fe2++2eまたは
Fe+4OH- → FeO22-+2H2O+2e
(陰極)
1/2O2+H2O+2e → 2OH-
鋼管がコンクリート中で腐食するのは、コンクリートに水や酸素が浸入するためで、管の表面には当然、酸素の供給の良い部分と悪い部分とが生じ、酸素の少ない部分が腐食することになります。(e項参照)
また、コンクリート中の鋼管でコンクリートに密着している部分と浮いている部分があるとき、この浮いている部分には水が溜まりやすいので、そこで腐食しやすいことになります。
また、コンクリート中の塩化物によって腐食することもあります。これは過去における、海砂の使用があげられます。
おすすめコーナー
地中埋設鋼管には、外面防食鋼管(VLP、NS-PEL)と対応する継手(外面被覆された管端防食継手,外面被覆されたメカニカル継手など)のご使用をおすすめします。

おことわり

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