技術開発
素材としての可能性を極限まで引き出すこと、
すなわち「鉄を極める」という目標に向け、私たちは挑戦し続けています
純チタンは、特に優れた耐食性を活用し、発電所の復水器、熱交換器、化学プラント、海水淡水化プラントなどに多用されています。当社は、拡大するこれら既存市場へのチタン安定供給の責務を果たすと同時に、土木・建築分野、眼鏡フレーム、携帯家電などの民生品分野における新規市場開拓も行ってきました。
たとえば建築分野では、アルミナブラスト処理など独自の表面仕上げや陽極酸化法で発色させた独特の風合いや色彩のチタンが、文化財やランドマーク的な建築物の屋根や壁に使用されています。浅草寺の宝蔵門(下左写真)や本堂の屋根には、旧来の日本瓦の風合いを有するチタン製瓦が使用され、優れた耐食性と1/5の軽量化により、耐久性や耐震性が高められています。
また、チタン製屋根の大きな課題であった長期使用中の「変色」は、研究開発により原因が突き止められ(チタン表面にTiCやFが付着すると、酸性雨により表面酸化皮膜が成長し、干渉色が発生)、表層Cを十分に除去する製造技術の改良で、変色が防止できるようになっています。
純チタンは、塩化物環境において優れた耐食性を示しますが、高温高濃度塩化物環境下で隙間腐食を起こすことがあります。このような場合、Pdを0.12~0.25%含むTi-Pd合金(JIS11~13種やASTM Gr.7等)の適用が推奨されますが、非常に高価となります。これに対し、ほぼ同等の耐食性を有しながら、Pd量の少ない経済型の材料SMI-ACE(Ti-0.05Pd-0.3Co等)が開発されれています。本材料は、JIS 17やASTM Gr.17としても登録され、苛性ソーダプラントを始め、耐隙間腐食性が特に要求されるいろいろな分野で使われています。
チタン合金は、軽量高強度の特徴を生かし、航空機部品に使用されています。 厳しい品質水準を安定して満足するための製造方法を開発しました。現在は、航空機エンジンのブレード素材としてTi-6Al-4V合金丸棒や、国産ロケットH2A/Bに使われているTi-6Al-4V合金製の分離バネを提供しています。
そのほか民生用途の材料として、Ti-15V-3Cr-3Al-3Sn等、従来のβ型合金に比べ、高温での変形抵抗が小さく、冷間加工性のより良好なβ型合金SSAT-2041CF(Ti-20V-4Al-1Sn)が開発されています。本合金は、溶体化処理ままでは柔らかく、高級自転車の後輪ギア用素材として使用され、好評価を得ています。また、本合金は、日本ステンレス工材でパイプに加工された後スウェージング加工、時効処理を施して、スキーストックが製造販売されています。耐衝撃強度に優れており、振動減衰性が評価され、08年には冬季オリンピックでも使用されました。
また、FeやCuなど安価汎用元素を活用した独自合金Super-TIXシリーズを開発し、さらに、これら独自合金の薄板や棒線の量産製造技術を確立し、排気系・マフラー、エンジンバルブなどの自動車部品、ゴルフクラブなどにも多用されるようになっています。これら合金の開発や製造技術開発、新規用途への適用に際しては、チタン事業開始以来蓄積してきた金属学的知見に基づく組織制御技術、鉄鋼分野で培ってきた分析・解析技術、種々の数値シミュレーション技術が活用されています。
チタンは上述のとおり非常に優れた金属です。しかしその特性は未だ十分に活用されておらず、さらに大きな発展の可能性を秘めています。
魅力溢れるチタンの利点を人類が十分享受できるよう、当社は今後も機能向上や製造コスト低減に関わる革新的研究開発を展開して参ります。