技術開発
素材としての可能性を極限まで引き出すこと、
すなわち「鉄を極める」という目標に向け、私たちは挑戦し続けています
高温で溶けた鋼(溶鋼)を鋳型で冷やして固め、固まった部分を徐々に引き抜くことで長くつながった鋼材を作り出すのが連続鋳造設備です。この設備に設置されている「電磁コイル」は、様々な操業条件(鋼材の幅や厚み、鋳造速度など)に応じて鋳型内溶鋼の流れを電磁力で制御し、溶鋼中のガスや不純物を浮上させて鋼材のキズや割れを減らします。
当社では、物理法則に基づいたシミュレーション(数値解析)の高度化をはかることで、溶鋼内の電磁力、流速を精度良く求めることを可能としました。その結果、各製鉄所の操業条件に合わせたコイル設計が可能となり、製造条件も最適化できて品質が向上しました。当社の高級鋼材は、自動車や飲料缶など様々な分野で高く評価されています。
(1)極厚鋼板対応PCCS法
当社は、厚みが100mmを超えるような極厚鋼板を連続鋳造法によって製造する際に、鋳片を凝固末期にロールで強圧下することで、内部の品質上問題となる鋳片中央部の気孔を鋳造段階で圧潰し、極厚鋼板の製造を可能にしたPCCS法を開発しました。本技術は、スラブ鋳片の中心部がほぼ完全に凝固する直前でスラブ表面から圧下を加えます。これにより、中央部の気孔は通常鋳造材の約1/3まで低減することができ、通常の連続鋳造機と圧延ラインを用いて、高能率かつ短いリードタイムで極厚鋼板の製造およびエネルギー削減が可能となりました。 本技術は、主に金型用高炭素鋼板や大型産業機械用鋼板などに使用される高品質極厚鋼板への適用が可能です。さらに、近年ますます厳しい内部品質のレベルが要求される橋梁用厚肉材や、海洋石油掘削用ジャッキアップリグのラック部分などのエネルギー分野用厚鋼板への適用も可能となり、試作試験の結果、商品化に成功しました。需要旺盛なエネルギー分野への極厚鋼板への安定供給に大きく貢献するものと考えられます。
(2)表面割れ抑制のSSC法
当社は、横ひび割れ防止対策として、鋳型を出てから早期に鋳片温度を約800℃程度まで急冷却し、その後復熱するSSC法を開発しました。これは鋳片の表層全面に横ひび割れの生じにくい制御組織で被覆することにより、表層の割れを防止する方法です。今回、ナノサイズ微細粒子の析出を利用して、表層の組織制御を行うことにより、この割れを抜本的に解消できることを発見しました。この結果、スラブの検査・手入れといった工程の省略が可能になり、高級厚鋼板の生産効率およびエネルギー効率を高めることができました。