あるところに、リサイクル工場に
運ばれるプラスチックがいました。
彼は新しいプラスチックに
生まれ変わるのを
とても楽しみにしていました。
運ばれる途中、一緒にいた別のプラスチックが言いました。
「ねえ、知ってる?ぼくたちの体の一部は、リサイクルしても生まれ変われずに、みんなに使われることなく、捨てられてしまうんだって。」
これを聞いたプラスチックはとても悲しくなりました。
彼はここに来る前、自分をきちんと分別してくれた女の子と約束をしていたのです。
「ありがとう!ぼく、きっと無駄なく全部生まれ変わってくるからね!」
「このままじゃ、あのときの女の子に嘘をついたことになっちゃう…」
悩んだ末、彼はトラックから飛びおり、新たなリサイクルの道を探す旅に出ました。
山を超え、谷を超え、プラスチックは進みました。
…けれど、どこにいっても、プラスチックを無駄なくリサイクルする方法は見つかりません。
100%のリサイクルとはそれほど難しいものだったのです。
やがて、疲れ果てたプラスチックは日本製鉄の製鉄所にたどり着きました。
そこには、鉄づくりや発電などの大きな設備がありました。
日本製鉄では、全国の1/3のプラスチックゴミをリサイクルしており、世界最大の処理能力を持っています。
「どうしたんだい、こんなところで」
そう声をかけ、拾い上げてくれたのは、製鉄所のおじさんでした。
「ぼく、ゴミにならずに 100%無駄なく生まれ変わりたい。地球に優しく生まれ変わりたいんです!」
そう言って泣き出したプラスチックを見て、おじさんはあることに気が付きました。
プラスチックの体の中には「コークス」という鉄づくりに欠かせないモノが隠れていたのです。
「その願い、おじさんたちがここで叶えてあげられるかもしれないよ」
プラスチックに優しく笑いかけ、おじさんはこう言いました。
「ここにある製鉄所の設備を使えば、君の中に眠っているコークスを取り出して、鉄づくりの原料に生まれ変わらせることができるんだ」
「ぼくが鉄づくりの原料に!?」
「そうだよ。しかも、それだけじゃない。コークス以外の油とガスも、ここなら全て無駄なく再利用することができるはずだよ」
日本製鉄はプラスチックゴミをコークス炉という1,200度の高温を使う製鉄施設を利用して、燃やさず、熱分解する『ケミカルリサイクル』方法で、プラスチックゴミの40%を新しい製品へと生まれ変わる「油」に、20%を鉄の原料となる「コークス」に、40%を電気をつくる「ガス」へと生まれ変わらせています。
プラスチックは驚きと喜びで、疲れも泣いていたことも忘れて、飛び上がりました。
「ぼく、まるごと全部生まれ変われるんですね!」
「その通り。さあ、一緒にいこう!」
こうして、プラスチックは、新しいプラスチックだけでなく、電子部品や塗料などの様々な素材の原料に生まれ変わり、あの日の女の子との約束を果たしたのです。
日本製鉄では、長年に渡り研究を重ね、『ケミカルリサイクル』方法の高い技術力を確立し、鉄づくりの過程を活かしながら、プラスチックゴミを 100%すべて再利用し、CO2削減や省エネ、省資源に取り組み、循環型社会づくりに貢献しています。