2024/01/05
日本製鉄株式会社
代表取締役社長
橋本 英二
令和6年能登半島地震で被災された方へのお見舞いを申し上げるとともに、一日も早い復旧をお祈りいたします。
2023年は、世界の製造業、建設業の長引く低迷に加え、中国経済失速の影響を最も大きく受けたのが鉄鋼業でした。製品市況が大きく下落する一方で、中国の過剰生産、あるいは需要拡大を背景としたインドの生産拡大により、原料価格は高止まりし、製品と原料の価格ディカップリングが定着するという過去に例のない大変厳しい一年となりました。そして、これらの環境悪化要因は今後も続く構造的なものであると考えざるを得ません。
今後の経営戦略の大きな柱である海外戦略を考えていく上で、もう1つの大きな要素は、経済安全保障という大義を背景に「分断と対立による市場のブロック化」を伴った新たなサプライチェーンが形成されることで、中国から米国・北米へ、鉄鋼需要が戦略的にシフトしていくことです。USスチールの買収も、このような視点からのチャレンジです。
また、これらの動きに脱炭素という引き返すことのないメガトレンドがどのように関わってくるかの見極めも、今後の当社グループの経営戦略を構築する前提となります。
克服すべき課題に対する施策は、①国内製鉄事業において、発生変動費の国際競争力強化とともに、構造改革の完遂とトータルマネジメント力強化により固定費を改善し、人件費等の構造的なコストアップを克服すること、②設備エンジニアリング力および設備管理力の強化、③「本質的営業力の一段の強化」に注力し、「高度注文を新鋭設備で集中生産する」高付加価値戦略を完遂していくこと、 ④原料から製造そして流通までを自らの直接事業領域とし、連結ベースでの付加価値創造力を更に強化すること、⑤脱炭素の研究開発において、フロントランナーであり続けること、⑥業務効率化、生産性向上、競争力向上に資するDXの更なる加速、⑦インドAM/NS Indiaの能力増強を確実に進め、タイを中心とするASEANの事業構造を深化させ、米国・北米市場への本格チャレンジに本腰を入れて取り組むこと、の7点です。
以上の施策により、2025年度に実力損益1兆円以上を確実にたたきだす目途を付け、1億トンビジョンの具体化と、更には「総合力世界No.1の鉄鋼メーカー」への復権に向けた具体策を積み上げていく1年になります。また、採用力強化および活躍推進を目的とした人事・広報施策を各ライン・職場において一つ一つ実践していく年になります。
大変困難な道のりですが、大きな変動をチャンスとして捉え、社長として、今後とも先頭に立って戦っていく決意です。